五輪の裏で、変に盛り上がっているニュースがある。
タレントAVだ。
MUTEKIというAV(アダルトビデオ)レーベルがある。去年億単位の投資で設立された会社で、コンセプトはズバリ、芸能人出演。芸能人とはAV女優ではなく、一般の芸能人を出すと言うこと。すでに何人かのイニシャルを公表して期待感を見せる戦略に出ていたが、1日に第一段が発表された。三枝実央だという。バラエティなどにぽつぽつ出ていたタレントでヌードにもなっている。すでに三本撮り終えているとの話もある(DVDの発売日は9月)。この話題でネット上やスポーツ紙などはオリンピックと並ぶ盛り上がりようだったが、第二弾のY.Kが「吉野公佳」だと公式サイトで明らかになった。すでに撮影を終了したので公表に踏み切ったわけである。それでさらに大騒ぎになった。三枝実央とくらべ、吉野公佳はドラマやバラエティの出演度が多いからである。野球選手やお笑い芸人との熱愛も話題になった。一応ヌードにはなっているが、かなり一般芸能人だけに驚きがあったのだろう。
しかし、これでは三枝実央は気の毒である。
AVに転向して、それで作品が出る前に、あとに続く女優にネタを奪われてしまった格好になったのだから。
さらに第七弾までの予定がリスト化されており、何人か確定しているタレントもいて、交渉中の「大物」もいる。実際にそうなのかは不明だが、いずれもやや落ち目になってきているタレントであるが、比較的名前の知られている人ばかりなので、そう言う動きはあるのだろう(ネットを検索すればそのリストも普通に流れてるので興味ある人は確認してください)。
さて、問題は、これが、AVであることだ。
ヌードPVやドラマのベッドシーンと、AVには、共通点もあるが、全く異なる部分がある。それは、AVは基本、本当に「やっている」という点であろう(昔は「疑似」もあったが今は基本「生本番」である)。この境界線はかなり深い。そして公にさらされる芸能人の価値観でみると、この境界線をまたぐ要素は、一方通行でしかない。つまり、AVから一般芸能人へと進む方向では、価値が上がることもあるが、その逆はないと言うこと。
飯島愛のように元アダルトビデオ女優で、その後、一般的に人気を得て、アダルトではない価値を確立したタレントもいる。彼女ほどではないが、ポルノ出身やAV女優には何人か同様の人がいる。
また男性でも、かつて日活ロマンポルノなどに男優として出演し、いまや、アダルトではない一般の芸能人としてベテランの域に達している俳優も何人かいる。
監督なども同様だ。
特に女性タレントで、ボディラインやセクシーさをセールスポイントにしている場合、AV出身では、先にそれを披露しきっているため、才能次第でそれ以外の要素で出世することが可能だ。タレント活動が安定すれば、過去のAV経歴などはあまり問題にされない。
これは非アダルトの女優さんが早々と結婚することで、結婚による価値の低下を避ける場合とも似ている。浅野温子や宮崎あおいなどはその例だろう。むしろ女優としての安定化を獲得出来ている。
ところが、今回のレーベルの場合、先に一般芸能人としての知名度があることが、ウリになっている。「あの女優が、あのタレントが」と言うわけである。男は多かれ少なかれ妄想癖があるわけだから、そこを突くビデオ業界のビジネスとしては、充分想定出来る戦略だ。
だが、この価値は、「見せてしまった」時点で終わる。
さらに言えば、「やってしまった」時点で、消滅する。
芸能人は、たとえばグラビアタレントであっても、映画でヌードを披露する女優であっても、その度合いの違いに差こそあれ、ぎりぎりの「見せない」ことに価値がある。ベッドシーンがあっても、それはあくまで擬似的な演技であるのがわかっていての話だ。
芸能人だって、実生活では恋人とSEXすることは当然だ。本来おめでたい「結婚」がタレントにとって障害になるのは、その現実のリアルさにファンが離れてしまうからでもある。
ファンらの妄想を刺激するのは、「芸能人」としての、「裸」や「行為」が見えないからであるのだ。独占したい欲求を刺激出来るのである。
一時期大騒ぎになったアイコラも、「見せない」タレント、「やらない」タレントをヌードやSEXシーンと合成することで受けたわけである。逆にAV女優のアイコラはほとんど存在しない。
かつて一時期、熟女ヌードというのが流行ったことがある。売れなくなったタレントがヘアヌードを次々と出して話題になった。しかし、いずれも最初の話題性だけで終わり、それらタレントのほとんどが、事実上消滅してしまった。年齢的にも無理があり、「ヌードではなく芸術だ」などというタレントの発言も顰蹙を買い、それになにより「見せた」ことで、「終了」となったのである。
今回、すでに二人、実名が公表された。内容は充分、濃いものだという。話題性が強いから、AV業界では破格の十万本セールスも充分あるだろう。二人のギャラも数千万円単位だと言うが、営業的には元が取れる。
しかし、レーベルとしては、次から次へと新しく、芸能人を説得して出演させればしばらくは持つだろうが、出演した本人らはわかってるのだろうか。あとは、演出を斬新に、過激にしたとしても、後戻りが出来ない。AV女優としてしか活動出来なくなると言うことを。それも徐々に人気が落ちて、やがて飽きられることを。よっぽど例外的に一般的な芸能活動に復帰するにしても、その範囲は非常に限定される。深夜帯の実験的ドラマの役が付くくらいか。
最近、SEXに対する禁忌が世界的に崩壊しているため、あるいは一般芸能界へと華々しく復帰することもあり得る。しかしあくまで一時的なことになるだろう。過去を消滅出来ない。最初からAV出身のタレントのようには行かない。
本人がたとえAVで一時的であっても、大きく取り上げられることの価値を大事にするのであれば、それはそれで構わないことだが、芸能人として起死回生を狙うのなら、やめたほうがいいかも。
こういう時代だからこそ受け入れられるようになったビジネスモデルとなるだろうが、その反動も想像出来る。芸能人の価値が下がり、インパクトも先々弱くならざるを得ない。
また、それがわかっている芸能人は、あえてリスクは冒すまい。
案外、長続きしないビジネスになるかも知れない、と言う気もする。

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