2013/4/15  21:09

イラン人ジャーナリスト、マジエール・バハリの手記を読んでいます(その2)  読書&アート

わー、ジョンは今週末、映画のロケハンのためにヨルダンに行っていたらしい。アンマンで偶然彼に会えた、ファンの女性のブログ。う、うらやましい...
http://noragoesabroad.wordpress.com/

さて、そのジョンの映画の原作本を、引き続き読んでおります。3分の1ぐらいまできました。

ジョンがこの本を映画化することになったのには、いろいろ長い経緯があるのですが...詳しくは(1)左の月別エントリーから、2009年6月のエントリーを読む (2)次に検索のところに「バハリ」と入れて、「このブログを検索」にチェックをいれて検索 してください。(<手抜きですみません 笑)

この手記のタイトルは「Then They Came for Me」(そして彼らは、私のところにやってきた)。ホロコーストに関する有名なニーメラーの詩の一節ですね。

でも...この詩の意味は、「自分以外の人々が迫害されるのを見ながら何もしなかったから、自分が迫害された時だれも助けてくれなかった」ということなんですけど、バハリさんの場合は逆のような。

ジャーナリストとして長年、逮捕されるかされないかギリギリのところでできる限りのことをやり続けていたからこそ、2009年の選挙後の弾圧で、ついに逮捕されてしまったわけで。

バハリさんは現在45歳、イラン革命のときは11歳だったのですが、その歳でシャー(パーレビ国王)に抗議する歴史的デモに参加したときのことはよく憶えているようで、今回(2009年)の選挙後の抗議活動で何百万人もの(主に)若い人々が抗議に立ち上がった様子に、その時のことを思い出したりしています。

バハリさんの家族は親の代から政治活動に熱心で(というか、イランの政治状況からそうならざるを得なかったのだと思いますが)、両親とお姉さん、お姉さんの夫はTudeh党(イランの共産党)のメンバーでした。お父さんはシャーの時代の1950年代に政治犯として投獄され、お母さんは毎週面会に通っていた。何年も後に釈放されたけど、仕事を奪われてしまった。

お姉さんも大学生のときTudeh党員になり、同じ党員の夫と結婚した。イラン革命が起こったとき、党はホメイニ師の革命勢力を支持して一緒に戦ったのだけど、ホメイニ師が最高権力者の座につくと共産党の弾圧を始め、最初はお姉さんの夫、その後お姉さんが投獄された。6年後に二人とも釈放されたけれど、長い収監と拷問が健康に影響したのか、お姉さんは後に若くして亡くなってしまった。同じ頃にお父さん、アメリカに移住していたお兄さんも亡くなって、バハリさんは海外を拠点にジャーナリストとしての活動を始め、バハリさんの80代のお母さんは、ひとりでテヘランに住んでいます。

2009年6月、バハリさんは妊娠中の婚約者をロンドンに残してテヘランに帰り、お母さんの家(実家)に滞在して選挙を取材するのですが...

このお母さん、長い生涯にわたって、最初はパーレビ国王、次は革命政府に家族を奪われ続けて(処刑された人はいないけど、投獄されて健康を害したり、安全のため海外に移住せざるを得なかったり)、残っているのは次男のバハリさんだけなんですけど、それでも彼に「気をつけて、慎重に」とは言っても、「危ないから取材なんてやめてさっさとロンドンの婚約者のもとへお戻り」とは言わないのですよね。

お母さんはずっとテヘランに住んでいるのですが、革命政府の腐敗ぶりと選挙の無力さに嫌気がさしてずっと投票していなかったそうです。でも2009年、最高権力者ハメネイ師べったりのアフマディネジャドに対抗する改革派のムサビ候補を支持する若者たちの「緑の運動」が盛り上がるにつれ希望を持ちはじめ、久しぶりに一票を投じることにします。

イランの中年以上の人々は30年前の革命の記憶が鮮明なので、2009年の若者たちの「緑の運動」のデモがすごい人を集めて熱烈に盛り上がっているにもかかわらず、あくまで平和に、徹底して非暴力で行われているのに感動して、「おれたちの若い頃ならとっくに暴力沙汰が起こっていた、これは本当にこの国は変わるのかもしれん」と楽観的になっているのが印象的でした。

選挙の後、これが暗転するのがわかっているので、切ないですけどね...

2013/4/12  23:57

イラン人ジャーナリスト、マジエール・バハリの手記を読んでいます。  読書&アート

あー、最近あまりツイートしないんで気がつかなかったけど、わたしのブログ、ツイッター連携機能がなくなってしまったようだわ。これからは、ブログのまとめ機能に頼らずに、まとまったことはちゃんとブログに直接書かないと。

というわけで、久々に直ブログ。

イランのジャーナリスト、Maziar Bahariの手記(ジョン・スチュワートが映画化予定)を読んでいるのだけど、面白いです。

http://www.amazon.co.jp/gp/product/1400069467/ref=oh_details_o03_s00_i00?ie=UTF8&psc=1

イラン革命(とその後の30年余)のことは、「ペルセポリス」とか「テヘランでロリータを読む」とかでしか知らなかったけど、バハリさんはジャーナリストなので、自分の経験だけじゃなくて、イランの政治社会状況について初心者向けの背景解説が多くはさまれていてわかりやすいです。

例えば、イランの革命防衛隊(Revolutionary Guard)は、治安維持部隊、あるいは戦前の憲兵みたいなイメージだったのだが…もちろんそういう存在でもあるのだけど、それだけではなく、経済制裁下でのブラックマーケットの輸出入を握り、またイラン・イラク戦争後の復興利権を独占したゼネコンも所有しているという、まあ、日本の「利権団体」を一つに丸めてくっつけたような存在であるということは知らなかった。

権力と暴力の脅迫でもって競争相手を駆逐することができるから、革命防衛隊(または元防衛隊でコネを持っている人々)は、軍事だけじゃなく経済を握っているのです。ある防衛隊の上級将校が1980年代に人々を脅して家を安く売らせ、サラ地にして高層マンションを建てた、という文字通り土建屋と地上げ屋とヤクザを兼ねている話も出てきたし。

まだ4分の1ぐらいしか読んでいないので、引き続きまとまりなく感想を書いてゆきます。

2011/9/12  22:42

【読書感想】In the Belly of the Bloodhound - L.A.Meyer著(Bloody Jackシリーズ4巻)その5  読書&アート

ジャッキー「私たち3人で、権力と責任を分担するのよ。」
クラリッサ「権力ですって?30数人の、無力な女の子たちに対する権力?たいした権力だこと。」
ジャッキー「そうよ、彼女たちが私たちの部下で、私たちは彼女たちを統率するのよ。私たちに与えられた戦力は彼女たちだけだけど、もしかしたらあの娘たち、あなたを驚かせるかもしれないわよ。」

リセット「あなたはカシコイですね、ジャク-ウィー ファ-ベーア。とてもカシコイです。でも、あなたも知らないことあります。特に、私のトモダチのクラリッサのことは、あなた何も知らないですね。」


クラリッサは、奴隷制を推進維持している社会に属する、奴隷制に支えられた産業で得られた富で、贅沢に育てられている娘です。でも、彼女自身が「同罪」かというと、どうしてもそうは思えないのです。
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2011/9/9  23:20

【読書感想】In the Belly of the Bloodhound - L.A.Meyer著(Bloody Jackシリーズ4巻)その4  読書&アート

クラリッサ「ジャッキー、あんたが死ななくて本当によかった。こんなことを言うなんて思ってもみなかったけど、本当よ。」

2巻で登場したクラリッサ・ハウは、お嬢様学校の中でも特に大金持ちの娘、金髪美人で高慢でイジワルで、典型的な敵役キャラでした。でも、ジャッキーと腕ずくの大喧嘩になった時、ロンドンのストリート+軍艦の下層甲板育ちのジャッキー相手に一歩も引かないばかりか、見事に丈夫な歯で噛みついてジャッキーにかなりのダメージを負わせたあたり、タダ者ではない感はあったのでした。

ジャッキーが選んだ(自分含め)3人のリーダーのうち、もちろんジャッキー自身は知識・経験がずば抜けていて、理由があって冷静。また、少女たちを導ける経験知識があるのは自分だけだと分かっているので、重い責任を感じてもいる。

ドリーは、経験知識においては特に他の少女たちと変わりはないはずのに、とにかく最初から非常に冷静で、客観的に状況を把握している。頭が良いのと、生まれつきの性格なんでしょう。それこそ、現代に生まれていたら経営者とか政治家になったタイプかも。

それに比べてクラリッサは、冷静というのではない、怯えて泣いているのでもない。彼女はとにかく、最初から最後まで激怒しているのです。誘拐されたことへの怒り、プライドを傷つけられた怒り、「よくもこの私にこんな失礼な扱いを」という怒り。黒人でありながら奴隷商人の仲間になっている男への怒り、また後には、ジャッキーを船長に密告した裏切り者少女への怒り。並の人間なら、あんまり怒っているとしばらくすると疲れてきて、むしろ落ち込んできたりするのだけど、彼女は違う。燃え上がるような怒りのパワーを最後まで維持しているのがステキです。

ジャッキーがいなければ、彼女は丈夫な歯と爪だけを武器にひとりで船員たちに突進して、あっさり殺されていたかもしれない。でも彼女もジャッキーの前歴は知っているし、馬鹿ではないので、「ジャッキーが何か考えるかもしれない、それに乗れば、こいつらに復讐することも可能かもしれない」と計算し、一応ジャッキーに協力的です。「でも、あんたを認めて信頼したってわけじゃないんだからね!」というツンデレ(?)姿勢は相変わらずですが。

クラリッサですが、奴隷商人に誘拐されるというこのシチュエーションは、彼女には特別の含意があります。と言うのは、彼女はバージニア(南部奴隷州)の大農場主の娘で、マサチューセッツ(北部自由州)にあるローソン・ピーボディの生徒としては、たぶん唯一の大規模奴隷所有者の娘なのです。(南北戦争開戦までは、まだ50年以上ある。)

ジャッキーが最初にローソン・ピーボディ女子学院に来た時、後にジャッキーの親友になるインテリ少女エイミー(彼女は毒を盛られたピム校長の看病のために学校に残ったので、今回は誘拐されていない)は、「奴隷所有者と同じテーブルには座らない」という理由で、ひとりで離れたテーブルで食事していました。

誘拐事件が起こる前、クラリッサは自分付きの奴隷のアンジェリクという少女を学校に連れて来て自分の世話をさせていて、奴隷制絶対反対のエイミーやジャッキーを「ここは自由州なのに!」と激怒させていました。奴隷を所有する立場だったクラリッサが、奴隷として売られてゆくという皮肉。ジャッキーも、「これで彼女も、奴隷の気持ちが少しはわかるだろう」みたいなことを、ちらっと考えたりするのですが...

だがしかし。

彼女たちを誘拐した一味には、ひとり黒人が混じっています。「シン・キー」と呼ばれるこの男は「自由な」黒人で、派手な服で着飾って、黒人を奴隷にしている白人の娘たちを奴隷として売り飛ばすことを、「復讐」だと思って喜びを感じているようなそぶり。クラリッサの激しい怒りは主にこの男に向けられ、ジャッキーがハラハラするほど徹底して、黒人差別用語も投げつけて馬鹿にし、挑発し、逆らい続けるのですが...

でもしかし。

ここでクラリッサが奴隷として売られる立場になったってことは、本当に「因果はめぐる」で、「復讐」で、「皮肉」なことなんでしょうか?私は、そこんとこ、「うーん..」と考え込んでしまったのですよね。

(しつこく続く。)

2011/9/7  22:15

【読書感想】In the Belly of the Bloodhound - L.A.Meyer著(Bloody Jackシリーズ4巻)その3  読書&アート

Amazon: In the Belly of the Bloodhound - Being an Account of a Particularly Peculiar Adventure in the Life of Jacky Faber

「ブラッドハウンドの腹の中〜ジャッキー・ファーバーの生涯においても、とりわけ奇妙な冒険の報告であります」

第1巻「Bloody Jack」感想

第2巻「Curse of the Blue Tatoo」感想

第3巻「Under the Jolly Roger」感想

ケイティ「みんな、あたしたちを『ダイアナたち』って呼ぶけど、訳がわかんないよ。ダイアナって名前の娘はいないのに。クリッシーとミニーとハーマイオニーとローズだよ。」

ジャッキー「ギリシアやローマやエジプトみたいな古い国には、いろんな神様がいたのよ。男の神様、少年の神様、小人の神様...女の神様もいたのよ。女の神様のひとりが、狩りの女神ダイアナで、他にも月と貞節の女神だったりするけど、絵ではいつも弓矢を持った姿で描かれているの。だから、あなたたちを『ダイアナたち』って呼ぶのよ。」

ケイティ「女の神様がいたって?」

ジャッキー「そうよ。それも、すごく強い神様ばかり。アテナは、自分に敬意を払わない男たちに雷を落として回ったし、ジュノーは火山を噴火させたり...そのうちに、神様はひとりってことになって、『父なる神』、つまり男の神様だけになって、そっから私たち女にとっては下り坂になった...私はそう思っているのだけど。」

ケイティ「へえ!」


奴隷商人に誘拐された女の子たちは、ローソン・ピーボディ女子学院の生徒であるお嬢様方だけでなく、彼女たちの世話をするためについてきたメイドが3人含まれていました。うち二人(アニーとシルヴィ)は、2巻でジャッキーがメイドをやっていた時の仲間で、貧しい階級とはいえ普通の家庭の普通の娘ですが、もう一人、ケイティ・ディールは違いました。

彼女はある日、餓死寸前の状態で仕事を求めて学校の勝手口に現れたところを、料理長のペグが受け入れた娘。フロンティアで生まれ育ったことは明らかなのですが、家族のことも、なぜ一人でボストンに戻ってきたのかも語らぬ無口な娘で、謎めいた存在なのでした。

以下ネタバレ
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