2012年1月16日(月)夜9時過ぎ、いつもの仲間内で飲んでいる時、異常なまでのめまいと強烈な吐き気に襲われ、堪らずF君にタクシーで自宅まで送って貰う。深夜〜未明まで限りないほどの嘔吐に身体のふらつき。これはなにかオカしい。沢山体験してきた酒酔いとは確かに違うものだ。胃も身体も疲れはて昼まで夢うつつ。17日(火)午後三時過ぎ、ずっと頭がふらふらする。船酔いみたいな気分だが、頭痛も手足のしびれもなく高熱もない。兄が心配して唐津の病院に勤務中の、甥(総合医学)に電話し症状を伝えると、念のために救急車を呼ぶことになった。サイレンが近所の人を心配させるかも知れないが、独りでは三歩も歩けないので仕方ない。意識がクリアなだけに、妙な感じで簡易担架に包まれてストレッチャーから救急車へ。平日の午後だというのにMの救急救命室は、まるでテレビドラマの「ER」のよう。目は閉じているが音はよく聞こえ、こんな会話が飛び込んでくる。「○○さん、78歳、女性、頭部ほか打撲、血圧
何々・・・」
「うちゃ帰るばい、どうもなかとに!うちん身体に触りなさんな!」「おばあちゃん、あんた風呂場で倒れとったとよ。ちゃんと診て貰わんと帰られんとよ」「先生、残念ですけどボク今夜の新年会には行けそうもなかです」「ありゃ、今夜は出席の少なかねえ」「あ〜もう、これ以上の受け入れはきついとやなかね?ベッドが空いたらすぐ言うてね」などなど。目まぐるしい動きの中にも、いつもの川が淡々と流れて行くような日常がある。他人事のように聞いていたら、いきなり手首に点滴用の針がぷすりと素早く突き刺され、ベッドに寝たままでCTやMRIにエコーなどあちこちの検査室を走り回る。目は開けなくても闇の中でも目が回る。すっかり夜になってから、ようやくプライマリーケアに移動する。とりあえず検査の為に入院となったが病棟は決まらず。寝返りうてば脳内に、寄せる波のような不快な揺れがおきる。点滴していても喉はからから。胃は空なのに食欲は全くない。何の予兆もなく、こんな症状は今までの記憶にはない。父や祖父の病いだった脳梗塞という、悪夢の名
がふと浮かぶ。 まだ呼ばないでくれ!まだやることがある!
18日(水)朝、一般病棟へ寝たまま移動する。追加料金が要る二人部屋で、まさか眠れない夜を過ごすことになるとは思わなかった。同室のおじさんに挨拶出来る元気もなく、ベッドに横たわっていると彼が突然、部屋中に響きわたる大声で携帯電話を掛けまくるのだ。「あ〜、オレオレ。今ね、入院しとっとよ。いやあ、見舞いとかは要らんよ。元気、元気よ!」
ん?・・・一体どこが悪くて入院しているのか?「え?ちょっと聞こえんよ。片方の耳が全然聞こえんとたい!あっはっは」
・・・あっはっは!ではない。大音量の訳は分かった。自分の声が聞こえないのでコントロール出来ないのだ。病気はお互い様、咳やくしゃみなどは我慢出来るが携帯掛けるならロビーで掛けて欲しい。よほどたれ込みしようかと思ったが、二人だけの部屋で気まずくなるのも困る。イヤホン付けてテレビの音を大きくするしかない。個室が空くなら早く部屋を出たい。または、出ろ!と祈るだけ。
19日(木)やっと20歩ほど先のトイレまで歩いて行けるようになった。が、点滴台を杖にして手すりに掴まりながらのよちよち歩き。真っ直ぐ歩くつもりが左右にふらつきよろめく。飲んで酔っ払った時の千鳥足ってヤツだ。だが、アルコールは一滴も入っていない。摩訶不思議な感覚だ。脳かどこかの問題だろうが、検査結果はまだ。夜、また携帯電話の大音量が眠りを妨げる。
20日(金)とりあえず検査の結果が出た。脳は異常なし。耳から来ているのだろうとの事で耳鼻咽喉科まで車椅子を押して行って貰う。三年前、鼻の手術をして以来の訪問だ。結局は「末梢めまい症」との病名らしいがはっきりした原因は確定出来ないらしい。内耳の血流悪化、睡眠不足、ストレスなど。点滴や内服薬で対処するのみだと。時間がクスリという事か。このクスリは金では買えない。しばらく様子を見るしかない。同室のおじさんが別のおじさんに変わった。これで眠れる・・・筈だった・・・。
21日(土)まだ点滴台ははずれない。今度の同室のおじさんはゼンソクだ。かなり苦しいのは体験したから良く分かる。今にも呼吸が止まりそうで引き込まれそうになる。それは仕方がないが、問題は生体反応装置の電子アラーム音だ。ひっきりなしにセンサーに反応したアラームが室内に鳴り響く。看護師が切りに来るまで大音量で鳴り響く。神経に障る周波数で鳴り響く。他に病室はないのか?睡眠不足の夜がまたくる。
22日(日)点滴台がようやく外れる。自由度が増した嬉しさと杖がなくなった心細さ。まだふらつきはあまり変わらない。
23日(月)外出許可願いを出し、緊急にパソコンでの事務処理の重要性を訴える。
24日(火)久しぶりにカミさんの車に乗って会社へ行くが、定休日の為誰もいない。二時間ほどパソコンを動かし銀行に寄り、昼は寿司定食にする。入院中の胃にはちょっと多すぎたが美味かった。
25日(水)26日(木)27日(金)28日(土)とあっという間に過ぎて、29日(日)本日は退院を明日に控えた最後の日。
本当に、人生は明日・・・と言うより次の一時間後に何がおきるか判らない。還暦を迎えてすぐによろめきを体験し点滴で少しは良くなった。まだふらつくが緊急性のない状態になったということでこの病院には居られない。自宅で療養しながら様子を見ていく。自重しつつ、今の瞬間しかないことも確認しつつ、バランスをとって生きていくしかない。今回、周りの人々に助けられ支えられていることを改めて痛感した。
生きてるだけで丸儲け・・・そんなセリフを思い出した。

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