学校のクラブではサッカークラブを担当しています。先日、6年生の子どもたちのゲームに混ぜてもらいました。子どもたちはみんなうまいです。ボールを持てるし、持ちたがります。僕らの子どもの頃は考えられないほどの小技、テクニックを身につけています。
ただ、全部じゃないけど、けっこうずるいプレーをする子もいます。ボールをキープしていると後ろからうまーく押します。ガツンと押さずに、じわー、ぐいっという感じ。うまいです。また、きわどい交錯プレーから自分でボールを出してしまうと、「マイボール」と言ってボールを抱えてコーナーキックのところに行ってしまいます。
コーチが教えたわけではないでしょうけど、彼らはずるい、巧妙なプレーをおぼえてしまったのですね。サッカーの世界では、こういうずるいプレーのお手本が山ほどあります。テレビ中継でコーナーキックの場面を見ていると、相手を引っ張ったり押さえつけたり抱きついたりこづいたりというのがしょっちゅう見られます。
先日の欧州チャンピオンリーグの試合で、マンチェスターユナイテッドのギッグスが、フリーキックでボールを置くふりをして、すぐに蹴ってしまい、ゴールを決めました。相手の油断をつく、反則でなければ何でもやる、あるいは審判が見ていなければちょっとぐらい汚いことでもやってやろう、こういうずるさを「マリーシア」といって、ある意味、国際舞台で勝つためには必要なこととされています。
海外の一流プレーヤーの試合をいくらでも見ることができる現代の子どもたちは、こういうフェアアンフェアぎりぎりのプレーも学んでしまうのでしょう。
子どものスポーツを指導するのは本当にむずかしいものだと思います。正々堂々、フェアプレー、スポーツマンシップを指導して、勝負に負けることを選択するというのはやっぱりつらいものだと思います。勝ちたいですよ。特に、相手がずるいことをしていても自分たちはフェアプレー精神で・・・なんて言葉でいうのはやさしいですが、相手がシミュレーションで倒れてPK、それで負けなんて、やりきれないものです。
かといっても、あんまりずるさを教えてしまうと、子どもたちは長い目で見て大成しないのではないかなあと思います。相手がタックルをしてきたらしめたとばかりに倒れてPKを取ることを考えているようじゃ、一流にはなれないでしょう。むしろ、シャツ引っ張られても少々なら倒れないでシュートを打つぐらいのハートを持たないと。
やっかいなのは、サッカーの世界では、こういう小ずるさをさんざん身につけて、大成してしまった選手もたくさんいるということですね。南米の貧困層とか、ものすごくハングリーなサッカー少年たちがたくさんいるのです。その子たちは、なりふりかまわず、なにがなんでもという感じでトッププロに這い上がっていくのですよ。国際舞台でそういう選手たちに勝っていくためには、あるていどの抜け目なさ、ずるさもなければだめなのかもしれませんが。
ただ、「マリーシア」でサッカー選手として成功したとしても、その後の人生は「マリーシア」でまっとうに渡っていけるのでしょうか。サッカー選手は引退したあとの人生の方がずっと長いはずです。
サッカーの指導、たいへんです。指導者の方には本当に頭が下がります。
チームによって指導者の意識、どこまで子どもにフェアであることにこだわらせるのか、ずいぶん開きがあるように感じます。
※マリーシアについては、人によって微妙に解釈が違っています。あくまで汚いこと、不正なことは別物であり、ルールの中で、ひたすら抜け目のないプレー、相手をいらだたせるプレーというニュアンスで使う人もいます。また、逆に、勝つためには見えないところでの不正も有りとまで広く解釈する人もいます。