『見えてくる数学――受けたかったこんな授業――』
小林 吹代 (著)
2007年
すばる舎
☆☆☆
現役の中高生、あるいは、「大人のための数学再入門」的な本を求めている社会人を対象に書かれた、学校数学の本。取り上げられているのは、「負の数」「文字式」といった中1レベルの数学から、複素数、指数・対数、三角関数、確率といった高校レベルの数学まで(微分・積分、数列、行列、ベクトル、等は扱われていなかった)。
全22章構成。各章10ページ程度で小気味よく進んでいく。著者は高校の数学のベテラン教師で、コツコツと書きためていた原稿を1冊の本にまとめたものが本書なのだとか。そのせいか、基本的には教える側の立場に立ちつつも、教わる側の視点から見た素朴な疑問のようなものが本書の内容に活かされていると思う。本書で何より著者が大切にしているのは「概念のイメージを伝えること」とされているが、むしろ(虚数や対数、三角比など)「こんなものが何の役に立つのだろう?」と思いがちな概念について、その苦い想いを汲み取ってくれた上で教えてくれていることの方が有難い。
ククク、と笑いを押し殺しながら読んだような箇所はたくさんあったのだけど…、「やり直しの数学」みたいな本をわりとよく読んでいる僕としては正直モノ足りなかった。本書では、そのコンセプト上、学校数学の範囲の中で納得できればそれで良しとする雰囲気があって、学校で習う数学の背後に広がっているはずの数学的世界が見えてこないのだ。小学生向けの『
はじめまして数学』シリーズ(吉田武(著) 大高郁子(絵) 2001〜2002年 幻冬社)、中高生向けの『
生き抜くための数学入門』(新井紀子(著) 2007年 理論社)、大人向けの『
数について』『
式について』(「はじめからの数学」シリーズ)(志賀浩二(著) 2000年 朝倉書店)、『
指数・対数のはなし』(森毅(著) 2006年 東京図書)、等が面白かったのは、学校教育のカリキュラムを離れて自由に数学的世界と現実の世界を行き来することで、数学的な「モノの見方」や「考え方」、更には「感じ方」というものまでが見えてくるように思えたからだ。そういう意味では、学校で習う「数学的概念のイメージ」だけが見えてくるだけではダメなのだ、たぶん。
本文205ページ程度。
→ 「
12 さんすう 34 数学 5 Go!」
(本書の母体とも言える著者のWeb Page)

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