『人のセックスを笑うな』
山崎 ナオコーラ (著)
2006年
河出書房新社
☆☆
河出文庫の「や17-1」。2004年に河出書房新社より刊行された単行本の文庫化されたもの。高橋源一郎による解説がつき、短編『虫歯と優しさ』も収められている。表題作は、第41回文藝賞(2004年)を受賞、第132回芥川賞(2004年)の候補にも挙げられた、著者のデビュー作。
19歳の男子学生と39歳の既婚女性との間の奇妙な恋愛(と別れ)を描いた日本映画『
人のセックスを笑うな』(井口奈己監督 2007年)の原作小説だが、映画のことは取り敢えず忘れて読んだ方が良いと思う(特にユリとして永作博美を思い浮かべながら読むと、かえって小説の世界に入り込むのが困難になってしまうと思う)。物語の基本的な筋立ては同じだが、映画は原作の忠実な映像化というより、原作の筋立てを踏まえた上で新たに構築された世界と言えそうだ。映画と小説とでは、全編を貫く雰囲気が微妙に異なっている。
女性作家による、若い男性を主人公にした一人称小説。1年半ほど続いた自身の恋愛を「オレ」が振り返るという、やや内省的な内容。ストーリー展開でグイグイ読ませるというのでもなく、若い男が年の離れた女との恋愛にのめり込んでいく過程を圧倒的な筆力で描き切るというのでもなく、強いて言えば、小説中に断片化して散りばめられている「オレ」の思考を通して彼の感性・感覚を感じ取り、その「揺らぎ」を楽しむべき作品か。
日記を読み返している自分、を描いたような小説だなぁ、という印象。熱い想いを吐露している自分、妙に醒めた目で自分自身を見ている自分、そんな自分を見てまた熱くなる自分、様々な「オレ」がコラージュされていて、それが面白いと言えば面白い。
ただ、正直に言えば、自分はこの小説を全く楽しめなかった。狙いがサッパリわからなくてむしろイライラした。どうしてここにこんなことを書いているのかなぁ、と思うような一節がときどき挿入されていて、それがこの作品の「センスの良さ」として評価されているのだろうが、それにピタッとはまるセンスを僕はほとんど持ち合わせていないようだ。シビれちゃったのは、タイトルくらいか(本文を読むとわかるが、神様に対して、「人が皆、ベッドの中でありきたりのセックスをし、自分に酔っているのを見ても、それぞれは真剣にやっていることなのだから、どうか笑わないで欲しい」の意)。あと、著者名(笑)。
19歳の男のコ(僕もかつてはそうだった)は女性のそんなとこ見ないし、そんな風には感じないだろ、と思うような箇所は多々あった。ただ、高橋源一郎に言わせれば、それ――女性作家が女性の「感性」のままで男性視点の小説を書く、というところ――こそ、この小説の革新性らしい。その革新性を楽しむことができるほど僕は小説好きではない、ということなのだろう。
本文145ページ程度(『虫歯と優しさ』・解説を含む)。

0