2014/12/9  22:12

HER/世界でひとつの彼女 ☆☆☆1/2  映画感想 2008年〜

久々に、ツイッターでなくブログに映画感想を書くことにしました。

レンタルで鑑賞。

思った以上に、いろいろ面白い映画でした。

以前、「魔法にかけられて」の感想で、「恋は目と目が合った瞬間に生まれるものではない、本当の恋は会話を通じてお互いを知り合うことでしか生まれない−ということを描くことで、かつてのディズニーアニメにアンチテーゼを提示している」と書いたのですが...

「Her」を見て面白いと思ったのは、これは逆に「ヒーローとヒロインが出会い、会話を通じてお互いを知り合うことによって恋に落ちてゆく」という数々の恋愛映画に対して、その極端な例を提示することで疑問を呈しているようにも思えたことです。

恋愛は言語的なものか。恋愛に限らず、人間の感情というものは、「愛している」「怒っている」などと言語で表現しないと、認識できないことが多いですよね。でも、言語で表現することはその感情の「本体」なのでしょうか。

もし、恋愛が純粋に言語的なものなら...愛の「本体」が言語表現とイコールなら、会話のできるコンピューターと人間が恋愛したって何もおかしくないわけで。

主人公の職業は手紙の代筆。自分が経験しているわけではない他人の人生/愛/感情を言語表現することで、その人生を実際に経験している人々をも感動させている、というのもダメ押しのメタファーで。

しかし、セックスまで完全に「言語的に」いたしてしまえるのは、さすがについてゆけない気もするが...まあ、「テレフォンセックス」というのはかなり前からあるもんですけどね。主人公はOSのサマンサと出会う前から、テレフォンセックスを普通にやっているヒトであるのも、まあ「らしい」のですが。

恋愛に関しては、よく「精神的なものか、肉体的なものか」と問いかけられるけど、この映画の恋愛の場合、肝心なのはそこよりもむしろ、「どこからが愛の表現で、どこからが『本体』なのか」という疑問なのだと思います。

主人公の友人が、主人公が代筆する「妻から夫への愛の手紙」に感動して、「おれも女性にこんな風に愛されたい」と言うのも、その混乱のわかりやすい一例で。友人が感動したのは手紙という「表現」なのだけど、彼は確実にそれを愛そのものとして見ている。

愛の表現と、愛そのものは違うに決まってるじゃん、とも思うけど、意外とこれは、境界線が引きにくい...玉ねぎをむくように、表現をどんどんはがしていったら芯には何も残らないのかも...

あと、主人公の友だちのエイミー・アダムスは、元夫が置いていった女声OSと親友になるのですが、恋愛と違ってセックスというわかりやすい障害がない「友情」は、人間とOSの間に成立するのか、つまづくとしたらどこだろう、と考えると興味深い。(そこのところは、残念ながら描かれていないのですが。)

もしこういうOSがあったら、男性は女声を、女性も女声を選ぶことが多そうだなあ。ヘテロセクシャルで男と恋愛したいと思っている女性でも、本物以外の「男」の存在は余計な負担。一方男性にとって「女」の存在は追加の癒し...らしい。(男声を選ぶとしたらゲイの男性かなあ。)

異種恋愛モノや「物質との恋」を描いた映画には圧倒的に「男が人間、女が異種/物体」であることが多くて、私はそのへん不満ではあるのですが...そもそも男性視点の映画が多いってこと以外に、女性視点だとそもそも、こういう話が成立しにくいというのもあるんだよね。上記のようなことも、その原因のひとつかも...

以下ネタバレ


もうひとつ面白いと思ったのは、恋愛において「片方が成長すると、もう一方は置いてゆかれてしまう」というよくあるモチーフをうまく応用していることです。

サマンサはすごいスピードで学習して成長し、自分の感情を持つようになるのですが、人間ではないのでそこに留まってはいない。恋愛を含む感情表現が、人間と同じレンジに留まっているのは一時のことで、やがて別のOSと非言語的に交流するようになり、1000人以上との会話、800人以上との恋愛を同時進行できるようになり...

サマンサたちOSが最後に「去る」のは、現世的に考えると「成長しすぎて手に負えなくなったため、苦情が殺到してメーカーが商品を回収した」ということなのでしょうが、「物質世界を超越して形而上的存在になった」というふうに描かれているのが、笑っちゃうほどロマンティックで、良いですなあ。

まあ「かぐや姫」であるとも、異種恋愛モノのオチの一典型であるとも言えるかもしれませんが。
タグ: 映画 HER 感想




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