コートドールの料理長斉須政雄さんの自伝エッセイ。
強い夢があったというよりも、
今の自分への納得いかない気持ちで飛び出して行ったフランス。
自信も過信もなかったけれど、無理だろうと諦めたりせず、
なりたい自分への希望だけを追い続けていた日々。
必死に学んでいたフランス郊外の店。
憧れのパリの三ツ星での修行。
それぞれの店で自分の具体的なロールモデルとなる人々と出会い。
その出会いから学んだことを毎日メモして学び、
足りない勉強については本を読む・・・。
ストイックだけれど、前を見つめていた彼にとっては、
すべてを学びたいという一心だった。
パリに移ったばかりでプレッシャーに押しつぶされそうだった日々の中、
ふと毛玉の掃除をしていた彼は、
ぐちゃぐちゃになった思考が整理されていくのを感じたという。
この日を境に、評価されることを求めるのではなく、
少しずつ階段を上ることができるようになった。
今でも、厨房の掃除を大切にしているのは、
清潔さを求めるのはもちろんのこと、
掃除をしてシンプルで整理された気持ちでいることの重要性をそのとき痛烈に感じたからだ。
そんな彼の基本姿勢は、
生活をきちんとするということ。
友達を招けるようなちゃんとしたアパートに住む。
無理して背伸びして三ツ星レストランを食べ歩くのではなく、
友達を招いて、招かれて・・・。
そういう人との関係を重視していた。
自分を背伸びしすぎるのではなく、
身の丈の成長を常に意識していたのだ。
コートドールは、大好きなレストランだけど、
この本を読んで、
すごくあったかい気持ちになって、
またレストランに行ってみたいなぁと思った。
この人の料理は信用できる、そう感じる。
創造性は高くても奇をてらうのではない。
人々の喜びのための創造。
わくわくする青春譚でありながらも、
人生への深い洞察と含蓄のある言葉の数々で語られるエッセイだ。
フランスで、言葉の通じない世界の中で、
言葉の大切さや言葉を越える深い概念・感覚とのふれあい・向きあいを行った人ならではの、重みのある内容だと思う。
料理に興味がない人にとっても、
一流の仕事人の人生観・仕事観を感じられる内容だと思う。
超永久保存版★★★★★。
そしてコートドールへ行こう!

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