一年の最後に読んだ本が、2008年の私の読書の中でのベストの一冊ということになった。
クアトロ・ラガッツィ。4人の遣欧少年使節を巡る物語。
封建制・天皇制を打破し絶対王権を築き上げようとする信長の野望、交易によりアジアでの発展を目指す九州の大名たちの夢、(プロテスタントに対抗し)威信をかけて海外での布教を目指すカトリックの教皇・宣教師・王たちの必死さ、使節を迎えて得意満面なスペイン王フェリペ2世の喜び、シスト5世の即位式典に東方からの3人の王に準えて出席しそのりりしさを発揮した使節の少年(青年)の誇り、既存の文脈との妥協点を図りながら絶対君主を目指す秀吉の劣等感ゆえの尊大さ、少しずつ狂い始める歯車・・・。
大きな時代のうねりの中で描き出される、華やかで哀しい物語だ。
舞台はかけめぐる。安土、九州、スペイン、イタリア、大阪・・・。
そのどこでも、権力者の野心の中で起こる異文化との華々しい出会いと次第に引き起こされる緊張。
同じ宣教師の中でも起こる、日本への適応を目指して慎重だったイエズス会と、配慮なきフランシスコ会の摩擦。
フランシスコ会の強気な態度は、権力者秀吉を疑心暗鬼にしていく。
そしてついに、古代ローマに遡るほどの残酷な殉教が行われる。
華やかな遣欧使節の役割を終えた4人を待ち受けていたのは、変わり果てた日本。
棄教した千々石ミゲルを責めることはできないだろう。あとの3人は、一人は殉教。一人は若くして病死、もう一人はマカオに亡命し日本に戻ることは出来なかった。
西洋美術史家若桑みどりの、ルネサンス期のキリスト教文化への造詣の深さ。彼女でなければ、ここまで調べられず、ここまで洞察できなかっただろう。遣欧使節や宣教師たちの記録を原語であたることができるがゆえに、今までの歴史家にない視点を提供してくれるのである。
若桑本人が、西洋文化に憧れつつも、日本人である自分にどこまで理解できるのかという壁を感じていた。だからこそ、この東西の邂逅の物語を紐解くことが、人生の集大成の仕事となったのだろう。
宗教と国家・王権というものについても考えさせられる、刺激的な本だ。ものすごい分厚さにくじけそうになるかもしれないけれど、読んだだけ読書の喜びを感じられる本である。
★★★★★+★
2008年ベスト3:
1:「クアトロ・ラガッツィ」
2:「背教者ユリアヌス」
3:「食べる西洋美術史」

0