ここは国立JRA高校。
最近ではドラッグ(禁止薬物)もはびこる、とんでもない悪の吹き溜まりである。
私はこのJRA高校で教師をしているが、勿論誰一人として授業や言う事をきくような生徒はいない。
卒業生の中でも名うての悪達は、皆こぞって生涯SEXだけを生業にする竿師として生きていく。
いわゆる、西の言葉で言うところの本職、ヤーコである。
将来は身を切り売りして生計を立てるものや、娼婦として生きるものも多い。
ほんの一握りだけが、生涯にわたり運送業やアスリートとして表の道で生きていくのである。
そんなJRA高校に、やはり悪の代名詞である私立SS中学の卒業生が多いのもうなずける。
SS中学は血筋が良い生徒を集めるが、それだけなのである。アホボンの集まりだ。
噂では自分の名前さえ嘶ければ合格できるのではないか?と言われている。
05年、そんな悪の巣窟を締めている番格はSS中出身で2年生のロブロブ(牡5)だ。
ずっと抗争を続けていた同学年のリンカン(牡5)とも、つい先日手打ちとなり正式に総長となった。
同門のOBであるサンペガ&コイン(共に牡7)の自称最強世代SSブロスに手厚い祝福も受けた。
ちなみに自称最強ブロスは、卒業後プラプラしているが、竿師としての就職が内定しているからだ。
入学当時は一学年下のやはりSS中出身であるハーツやマンボ(共に牡4)も噛み付いてはいたが、今やおとなしい。
ただ、ハーツは前回の抗争内容やロブロブが頭という実情に納得できていないようで
「ロブロブさんはリンカンとのタイマンに全力だったためについ俺に一撃を赦したと言ってるが、俺はそうは思えない。今度機会があれば俺が奴を倒し昇り詰めてやる」
「大体が春の抗争でもスケバンにノされてるし、夏にも俺は海外で武者修行してくるだなんて言って出て行った割にスゴスゴ戻ってきたし、秋にはミスJRAにノされたし」
「俺は女には手を出さないとか、海外は気候が合わないとかいつも言い訳ばかりしてるが、結局のところ器じゃねぇんじゃねぇの?そりゃあ1年の頃の伝説の3番勝負は認めるけどさ。旬じゃねぇよ」
なんてブツブツと陰口を叩いている。
前回の抗争は外人留学生アルカナンタラの殴り込みに始まりJCの乱として今後も語り継がれるであろう大激戦であった。
喧嘩以外で滅多に高校に来ない2ダブ(2回留年)のタップ(牡8)、NRA高校からずっと殴り込みを続けているバルク(牡4)らも助っ人参戦で入り乱れ逮捕者数名のレコードを出した大事件だ。
留学生であるアルカナンタラの剛力は凄まじく、タップもバルクもアッサリのされた。
しかし知将ロブロブはタップやバルクのような真っ向勝負はアホのする事だと嘲笑い、ギリギリまで動かず、校舎の陰でジッと身を潜めて、奴が弱ったところを叩きに出ようとした。
が、一瞬早くアルカを叩きに出たのがライバルのリンカンだった。タイミングは良かったが、その圧倒的な力に押され気味である。
咄嗟にロブロブにある秘策が閃く。
「余計な事をするな!」
なんとアルカではなくリンカンを叩きにいったのだ。そりゃそうだ、誰もアルカのような化け物と闘いたくないし、こうすることで内部序列に示しも付く。
ところが、誤算だったのが
「何やってるんですか!ロブロブさん」
そう心の叫びと共に特攻してきたのがハーツの存在で、まさかこの状況に飛び込んでくる奴がいようとは計算できなかったのだ。
「もう、2人とも内輪揉めはアッチでやってください!」
揉めるロブロブとリンカンの間を割って弾き飛ばすと、その勢いでアルカに浴びせ蹴りを喰らわせる。
不意打ちが頬をかすめ、切れた傷口を拭いながらハーツにイカレたガンをきりつけるアルカ。
だが、教師達が駆けつけてきて、ここでジ・エンド。
『コラっ、君たち何をしているんだ!』
睨み付けたままゆっくり去っていくアルカ、懸命に虚勢を張るも無意識で後退しているJRA高校の3人。
・・・・・。
あの抗争を経て、ロブロブとハーツ以外の関係はグッと結束された。
ロブロブは思っていた。雨降って、地固まるだ。もう卒業まであんな化け物とやりあう機会もないだろう。俺は今年で中退して竿師になるんだ。それまで平穏で安泰な番長生活を送れればいい。
明後日は中山で卒業(中退)パレードだ。ミスJRAのヘヴンリーも、彼女であるハルカもパレードには駆けつける予定だ。JRA高の総番に相応しく華々しい漢の花道となるだろう。
パレードの名前は決めている。『有馬記念』だ。JRA高校を創立した伝説の初代にちなんだ名前で、代々襲名されてきた由緒正しい冠だ。
思えば昨年は先代のヒシミ総長の有馬記念に1年生ながら殴り込み勝利する事で、今の地位を揺るぎなきものにしたのだ。今年も絶対に譲れない。
まぁ大丈夫だ。今の馴れ合いの関係ならば誰も当日俺に牙を剥くまい。例え噛み付いてきても、今まで倒してきた相手じゃないか。
ただし、不安もある。アルカを相手にした心身の傷(特に心の傷)は、思った以上に深く、短い期間では癒えていないのだ。これはロブロブに限った事でなく、リンカンもハーツも同様である。
しかし、有馬記念パレードを前に面白くない連中がいるのは事実だ。
特に2ダブでようやく卒業を決めたタップは、
「本当ならば春の時点では俺様のパレードになる筈だったのに。今度こそブッコロス」
と、息巻いているし、NRA高校のバルクも
「のうのうと王様の椅子に座りやがって許せん。俺には全部お見通しなんだよ、裸の王様が」
と、ここ数戦の抗争の惨敗でなりを潜めてはいるが、密かに復権を誓っている。
また、SS中学の受験に失敗し、SS孫中学出身であるデルタ(牡4)は、中坊の身で1年前の有馬に殴り込んだ経歴を持つ。
「あの抗争で負傷して以来、長期療養からようやく復学したんだ。暴れさせて貰う。昨年は連戦の疲労もあったからな」
と、万全の体制でロブロブのクビを狙いにいく。彼の口癖は
「本当に強い奴なら中坊の頃に頭に立つ筈さ。ロブロブは常に番手野郎だったろ?押し出された王様なのさ」
そして、そんなデルタから今回の抗争で最もキーになりそうな人物について語られた。
「SS中のディープ、見掛け倒しで中身の無い奴らばかりのSS中で、中坊だけどアイツだけは本物だよ。勿論先輩として負けないように闘うけどね。既に竿師確定なくらいモテるのはムカつくし(笑)」
当のディープは一見して非常に利口な青年で、噂で聞くような悪には見えない。
体もどちらかというと華奢で、身のこなしも繊細、これで喧嘩が強かったらそりゃモテモテな筈である。そんな昔の高倉健の映画みたいな話があるだろうか?
それが、実際にあるのである。
ある時、取り巻き連中の中から私の方を向いてディープが言った。
「ねぇ、僕は憎くもない誰かと喧嘩なんてしたくない。誰も傷付けずに、スポーツとしての闘いでケリをつけたい」
『じゃあ何の為に有馬に参戦するんだい?強さへの憧れじゃないのかい?』
「僕は地上最強になんて興味ない。一番強くなんかならなくていいんだ。今は天国にいる親父よりほんの少し強ければ満足だ。親父が地上最弱なら、僕は地上で2番目に最弱で構わない」
『はは、漫画で見たような台詞だな。いいだろう。最高の親子喧嘩(自分自身との喧嘩)、見せてもらおうじゃねぇか』
有馬というお祭の根性試しで、今年最後のチキンレースを制するのは誰だ?