あの花が飾られているカフェが日光の旧市街の一角に
あるという貴重な情報を入手したのが先週の日曜日、
鹿沼市内の路地で月に一度開催される祭りでの事・・・
本当に偶然と言えば偶然ではあったのだが・・・
で、善は急げとばかり僕は早速そのカフェに予約を入れ、
この週末、日光に向かって車を走らせる事にしたのだった
本当なら直ぐにでも訪れたいところだが、地元の足利市から
カフェのある日光市(手前の旧今市であったが・・・)までは
相当の距離があり、平日仕事をしている僕にとって簡単に
行けるような場所では無かった
だからこそ、僕はこの機会の為に仕事の時間をずらし、
カフェにも予約を入れて・・・彼女にも何とか了解を得たのだ
絶対にあの花を僕のこのカメラに収め、ブログに載せ、
あの方に見てもらわない事には僕の目標は・・・
足利から日光に行くには大まかに3つのルートがある
一つは、東北自動車道から日光行きの高速に乗るコース
もう一つは、国道122号線を群馬方面から北上するコース
だが、僕が選んだのは3番目のコース・・・
前方には視界を覆い尽くさんばかりの緑のトンネルが続き、
道幅は無いものの緩やかなカーブとストレートを織り交ぜた
自然の素晴らしさと歴史の重みが同時に感じられる・・・
“日光例幣使街道”
そう、先日訪れた“ネコヤド”がある鹿沼市を通って
足利と日光を繋いでいるコースこそ、僕が選んだ・・・
ネコヤドという素敵な空間を僕に教えてくれ、これからは
そのネコヤドに加えて日光の素晴らしさを伝えてくれる、
饗茶庵のKさんが僕に薦めてくれたコースだったのだ
杉並木を通って・・・ホント、気持ちいいよ♪
車の中にいながらにして、まるで森林浴をしているような
爽やかな気持ちになって・・・Kさん、ホント最高です!!
予約の時間にはまだ大分余裕があった僕は、
車を降りてこの清々しい緑の回廊を散策してみた
“杉並木”の呼称の通り、細い街道の左右に沿って
日光市街まで続く立派な杉の木が植林されたのは、
遥か400年も前の、江戸時代は初期の事であった
道の両端に築かれた石垣は大樹となった杉の木々に
長い年月を経て既に所々押し潰されてしまっていた
自然の力の大きさを、現在も生き続ける歴史の息吹を、
その目に身体に焼き付けた僕は目的の場所へと向かった
この緑の街道は・・・そしてこの街道の先にある街は、
今なお歴史の一場面に生き続けるのだと感じながら・・・
日光例幣使街道の終着地、かつて宿場町であった旧今市、
その駅前の通りから一本奥に入った路地の更に奥まった、
まさに迷宮と呼ぶに相応しい入り組んだ裏通りに佇む・・・
何世代にも渡って時には愛され、時には忘れられてきた、
この街の歴史と共に歩み続けた古びた純和風の長屋こそ
Kさんが3年間もの間情熱を注ぎ込んだ空間でもある・・・
“玉藻小路”
“路”と呼ぶには余りにも狭く細々した家屋と家屋の裏側は、
何かとっても楽しそうな事が此処から始まるのを予感させる
あの“ネコヤドロジ”に似たワクワクした高揚感があった
そして、そのワクワクはこの春の訪れと共に始まっていた
analog books
青パンダ赤パンダ黄パンダ・・・
以前から僕は、カフェでのんびりと読みたい本が
カフェのすぐ近くで購入できないものかと思っていた
この小路には、そんな僕が心に秘めていた微かな望みを
知ってか知らずかこんなにも素敵な形で実現していたのだ
で、その本屋の向かい側の建物こそ僕が今日予約した・・・
日光珈琲
改装こそしているものの、小路の端の、一段高くなった
石垣の、苔生して朽ち掛けた様を眺めているだけでも、
この建物が送ってきた歴史が伝わってくる気がした
しかも小路の至る所から、古めかしさとも畏敬とも異なる、
どこか懐かしくもこれまで経験の無い不思議な気持ちを
肌で感じ取る事ができるのだった・・・
この街や建物の歴史が持つ魅力について語ってきたが、
このカフェは饗茶庵がこれまで培ってきた魅力もあるのだ
玄関の脇には、ほらっ、僕がイメージする饗茶庵の風景が
ちゃんと此処にも再現されているじゃあないか!!
そう、これから此処の歴史を受け継ぐ人たちの・・・
だが、次の瞬間、店内に足を踏み入れようとして
視線を前方へと向けた僕を出迎えたのは・・・
そう、全身を褐色の産毛で覆われ頭上から数本の触手が
うねる様に四方へと伸びて此方の様子を伺っていた
まるで僕が開けた扉は異次元の世界に通じていたのかと
思わず錯覚してしまうこの異様な出で立ちの門番に・・・
異界の生物が、そしてその化物を神と崇める闇の一団が、
人知れず此方側の世界を侵略していく、といった内容の
1920年代のアメリカのホラー小説を連想していた・・・
増改築を繰り返したと思しき柱に入る釘やほぞ穴の跡、
模様入りの硝子がはめ込まれた背の低い引き戸の障子、
入口正面には精緻な細工の施された飾り棚付き食器棚、
そして、その先に見え隠れする空間に至るまで・・・
この建物の其処彼処から感じる事のできるのは、
昭和の・・・いや、大正、明治の、僕にとって全てが
セピア色に映るロマンチックな薫りで満たされた世界
懐かしさを通り越して憧憬の眼差しを送るあの風景
だが、感嘆しきってしまうには、まだ早かった・・・
この数十畳に及ぶ建物を左右に分けている中央の通路
そう、この中央通路自体がまるで“小路”の様ではないか!
所々、心地良い淡い光に廊下が照らされているのは
部屋のランプだけでは無いと思い、見上げてみると・・・
建物の改装にあたって剥がされ剥き出しになった天井の、
縦横に張り巡られた梁と柱の間はにガラスが埋め込まれ、
初夏のやわらかな日差しが褐色の古木を照らしていた
そして、木漏れ日は建物全体へと穏やかに降り注いでいた
UFO?・・・昭和の経済成長を“影”で支えた“明かり”
太陽の日差しとアンティークのランプの光の競演・・・
此処にもまた、自然と人との歴史を垣間見る事ができた
中央通路の一方の奥は、カフェのキッチンになっていた
出番を待つ整然と並んだ食器は僕の好きなカフェの光景だ
大鍋の隣りで白い湯気を吹き上げる更に大きなヤカン
・・・こっちも熱くなってきたじゃあないか!!
その奥では黙々と料理の仕込みに勤しむ職人の姿
決して表に出る事の無い、しかしながら彼ら抜きでは
決して表には出てこない、最高の料理たちなのだ
踵を返すと、一見同じ様でありながらも、反対側には
全く趣きの異なる様々な空間がゆったりと存在していた
来る度ごとに新鮮な雰囲気を肌で感じ取る事ができそうだ
ところで、暫くの間カフェの中を見せてもらったが、
肝心のあの花が何処にも見当たらない事に気づいた
実はこの時Kさんの姿もなく、僕は少し不安になってきた
僕の“例の計画”は、最小限の相談した方を除いて
誰にも知られる事なくこっそり実行するつもりだったし、
何より他のお客さんに迷惑になる様な行為は避けたかった
Openの11時半を回り、ランチ目的のお客さんたちが
やって来たらカメラを向けて写真を撮る事はできないし、
仮に頼み込んで撮影したとしても、きっとあの方には
その写真の状況は全て分かってしまうのだろう・・・
仕事の日をずらして何とか都合をつけた今日を逃すと、
今度は何時この場所に来る事ができるであろうか?
それでは駄目だ!・・・だってあの花はこの日でないと・・・
だから何としてもこの時間の間にあの花を見つけ出し、
必ず僕のこのカメラに収めなければならなかった
そんな不安が僕の頭を過ぎり始めた頃、通路の反対の端、
まさに突き当たりの所に開けた空間を見つけたのだった
まるで中2階のように一段上がった部屋があり、
吹き抜けのように優雅に階下を見下ろす事ができた
きっと、以前此処が遊郭だった頃のなごりなのだろう
恐らくこの手摺りから遊女たちが手招きをして・・・あっ!!
ある事に気付いた僕は、すぐ脇の階段を上がり始めた
此処から先は“華”のある空間・・・
かつての華やか(だった筈)な空間はすっかり鳴りを潜め、
テーブルと椅子の他は簡素極まりない光景が広がっていた
差し当たってインテリアと呼べる物は殆んど無く、
押入れと思しき場所には違い棚が設えてある程だった
唯一、壁紙の市松模様はデフォルメを通り越して
ポップアート的なアバンギャルドさを醸し出しており、
質素な雰囲気の室内に、強烈なインパクトを与えていた
でも、そんな無常感すら漂うこの場所にあったのだ
たった一つの、でもそれだけを追い求めていた“華”が・・・
活け花やフラワーアレンジメントではこの時期には
よく見かける面白い茎の形をしたユリ科の花ではある
赤色では無いが頭のてっぺんにほんのり色付いた薄紫に
あぁ、成る程確かにその名前を冠するのも納得がいく
でも一番大事な事は、この花の希少性でも形状でも無い
そう、あの方が出した条件をまた一つクリアーできる事・・・
このカフェを、この花を、僕のブログ
“Elvis Cafe”に
加える事によってまた一歩、あの方への階段を上るのだ
やっと此処まで来たんだ・・・
それにこの花に対面できたのだから、
此処で僕は、くじける訳にはいかないのだ
先程、手摺りから階下を見下ろしていた際、非常に
気になっていたのがこの窓外を眺めるテーブル席だった
ゆったりとしたハイバックのチェアーも然る事ながら、
外の庭に咲く草花を目の前でゆっくりと眺める事ができた
そう言えば、“例の約束”の事で夢中になっていた僕は、
席に着くまで朝から何も食べていない事に気付かなかった
テーブルには、僕が小学生だった頃、教卓に置かれていた
出席簿と同じあの黒い背表紙で綴られたメニューがあった
手に取った際に伝わってくる、硬くひんやりとしているのに
非常に懐かしくて胸の内が温かくなる感触に少し浸っていた
「さつきポークの具だくさんガレット」
折角此処まで来たのだから地の食材を使った料理が
食べたくなった僕は、迷わずこのガレットをオーダーした
旧今市から日光にかけては知る人ぞ知る蕎麦処であり、
実は此処に来る途中も、街道の杉並木沿いの深い緑に
隠れる様に佇む何軒もの情緒豊かな蕎麦屋を目にした
そんな地元日光の蕎麦の魅力をカフェで伝えようと、
Kさんが作り出したメニューがこの「ガレット」だった
パリパリッとした表面は香ばしさも勿論の事だが、
何と言ってもふわっと薫り立つ蕎麦の爽やかな香り
更に食べ進むにつれてもっちりとした食感へと
変化する生地は、中の具材をふんわりと包み込んで・・・
全ての具材の旨みや持ち味をひとつにまとめながら、
蕎麦の風味や生地の食感も十分に堪能する事ができた
大き目の生地からはみ出さんばかりの、まさに肉の塊に
思わずかぶり付くと、直ぐに押し返してくる様な弾力と、
それに相反するかの様にサクッと切れる心地良い歯応え
と同時に口の中いっぱいにジュワっと溢れ出す肉汁の旨み
程よく焦げた香ばしさには、ほろほろっとしたやさしい卵と
コクのあるクリーミーなベシャメルソースがまろやかに・・・
更には、茄子、蓮根、ブロッコリー、アスパラガス・・・
ソースに絡んだ地元野菜のシャキッとした瑞々しい食感と
野菜の甘さもが加わって一層複雑な味わいを醸していた
それに・・・付け合わせのトマトの甘さと言ったら!!
「アイスオレンジティー」
僕はこの時期、饗茶庵で決まって頼むドリンクがあった
今回は此方でもこの綺麗なオレンジ色を楽しむ事にした
これからの時期にピッタリの陽気で明るいオレンジ色に
スッキリとした元気いっぱいの気分になったかと思うと、
直ぐ下にはまるでルビーの様な鮮やかな赤色の輝き・・・
時間と共にこのオレンジと赤が溶けあっていくのを、
僕は何も考えず唯ぼんやりと眺めているのが好きだった
だから、此処でも・・・
「果実のタルト(ブルーベリー)」
地の物、季節の物、自家製の物に拘ったKさんだから、
スイーツもこの季節のフルーツを使った物が食べたかった
そして、最後にこのプレートが運ばれてきた際・・・
どう、中々良い場所でしょう?
僕の目の前には、優しそうな表情をしたKさんがいた
これまで日の当らなかった、この古い街の歴史と魅力、
それをカフェというこれまでに無かった新しい形態で
蘇えらせ、次の世代に継承していくKさん・・・
どうして貴方の周りには素敵な人たちが集まるのか、
僕はこのしっとりと甘くホロホロとした甘酸っぱいタルトを
貪る様に頬張りながら何となく実感した様な気分になった
実はこの小路にもう一軒、どうしても訪れたかった店が、
そして、どうしても会ってみたかった人物がいたのだ
カフェの向かい側には2軒の個性的な店が入る家屋があり、
カフェと合わせてこの小路沿いに3軒の店が軒を連ねていた
カフェを後にした僕は、早速向かいの小さな店に入った
cocoloya ART&CRAFT
小路に到着した時はまだついていなかった外の電球に
オレンジ色の明かりが灯り、針もopenを指していた
お世辞にも広いとは言い難い、この細い小路において、
広く開け放たれた入口には開放感を感じる事ができた
自然体と言うのだろうか、スッと引き寄せられるように
全く躊躇する事無く、僕は店の中へと入っていった
ずっと思い描いていたあの人に初めて会うと言うのに・・・
壁にはあの人が描いたと思しき作品が納められた
大小様々な大きさの額がゆったりと掛けられていた
更に、ひと部屋程の広さの空間には古今和洋の区別無く、
どこか懐かしい気持ちにさせてくれる品々が置かれていた
まるでこの場所でまどろんでいるかのように・・・
この店の店主であり、画家でもあるaさんとの対面は、
“あの絵”の存在を知ってから切に望んでいた瞬間であり、
今まさに現実となったあの時の僕の胸の鼓動ときたら・・・
aさんは予想していたよりはるかに気さくで親しみ易く、
尽きる事の無い楽しい話に、あっという間に時は過ぎた
だが、もう一つ、cocoloyaでどうしても
見ておかなければならない物があったのだ
壁を見回した僕は、一枚の小さな額に目を止めた
思い描いていたのよりも、ずっと小さな絵だった
くすんだターコイズブルーの夜空に輝く星一つ
手前の山は、まるで氷山の様に白く、鋭い
その尾根へと伸びる二本の道は、とても真っ直ぐだ
そう言えば、僕も山に向かって真っ直ぐな道を上ってきた
そして遂に此処までやって来た・・・その先にあるのは・・・
「大切なものは、目に見えない」
今日、偶然の出会いが必然の運命へと変わる瞬間・・・
新たな僕の誕生日となって飛び立つのだろうか?
心の中でひときわ輝くあの星に向かって・・・
今回この新しいカフェに行ってみようと思ったのは
実はかなり最近の、6月に入ってからの事でした
4月のOpen以来、様々な方のブログでのレポートや
monmiya&栃ナビといった地元メディアでの紹介、
さらにはcafe-sweetsにまで特集される注目ぶりに
当然とは言え、もう少し落ち着いてからと思っていました
そんなCindyが行ってみようと思い始めたのは、
先日のネコヤドでKさんがとても楽しそうに今市の
街の魅力(杉並木も!)について語っていたからでした
Cindyの地元、足利の旧市街についても造詣の深い
Kさんが語る今市の街並みと長い時間をかけ完成した
“玉藻小路”にかける情熱に大いに惹かれたCindyは、
すぐにでも行ってみたい気持ちになったのです!!
さらにもう一つ、twinという地域情報誌の6月号で、
このカフェが紹介されたページの中で見つけた一節・・・
「日光珈琲」は始まりなのではなく、
その歴史の続きなのだ。
Cindyも、この古い路地裏にひっそりと佇む小路と、
そこで輝く人たちの“歴史の続き”を見守りたくなりました
日光珈琲
栃木県日光市今市754 玉藻小路左
0288-22-7242
11:30 - 21:00 (20:30 last order)
定休日 月曜日
http://www.nikko-coffee.com/
cocoloya ART&CRAFT
栃木県日光市今市754 玉藻小路右
090-6655-9757
12:00 - 18:00
定休日 月曜日 ※ 不規則に休む場合があります
http://homepage3.nifty.com/cocoloya/