その昔、パソコン通信という文化があり、アサヒパソコンネット(のちのASAHIネット)というネット(当時はプロバイダーなんて言葉もなかった)のジャズの会議室で不肖わたくしめがモデレーター(進行役)をやっていた時期があった。その頃オスカー・ピーターソンについて書いた文章をふたつばかり。私が俳句を始めたのはその会議室で出会った村井康司さんの影響で、ふたつの文章のあいだの時期のことなのであった。
●Date: 6 Apr 93 02:42:19 JST
オスカー・ピーターソンの「エクスクルーシヴリー・フォー・マイ・フレンズ」が、CD4枚組として集大成され発売されました。これはドイツの大手電機会社社長の溢れる情熱の下に主催されたプライヴェート・パーティーでのオスカー・ピーターソン・トリオ/ソロの演奏を集めたもので、63年から68年という絶頂期の記録であり、従来LP6枚に分散されていたものです(「アクション」「ガール・トーク」「ザ・ウェイ・アイ・リアリー・プレイ」「マイ・フェイヴァリット・インストゥルメント」「メロー・ムード」「トラヴェリン・オン」うち4枚は初CD化)。
この頃のオスカーは、従来の圧倒的なスピード、ドライヴ感、ブルース・フィーリングに加えて、さらにビル・エヴァンス的なハーモニーの妙味が取り込まれて、大きく演奏の幅が拡がって行った時期であり、少人数の聴衆を前にしたこの録音は、溢れ出てとどまるところを知らぬ音楽的なアイデアを漏れなくとらえております。
この集大成こそは人類の到達点のひとつに数えるべきであり、はじめてジャズ・ピアノを聴こうという人にも無条件に推薦いたします。
●Date: 20 Nov 95 01:54:56 JST
なんと『エクスクルーシヴリィ・フォー・マイ・フレンズ・ザ・ロスト・テイプス』なるアルバムがMPSから発売されました。
オスカー・ピーターソンの『エクスクルーシヴリィ・フォー・マイ・フレンズ』とは、ドイツの会社社長のために個人的に少人数の聴衆の前で演奏された最高の録音による最高の演奏のアルバム群なのですが、それの未発表テイクが本アルバムです。
録音時期は1965年から1968年にかけてで、最初の4曲がレイ・ブラウンとエド・シグペンとのトリオ、残り8曲がサム・ジョーンズとボビー・ダーハムとのトリオです。演奏内容は、お蔵入りしていただけあって荒っぽい面もあるといえばあるのですが、逆にそのワイルドさが僕などには最高のスウィングとして感じられます。また「テンダリー」や「ステラ」では、極上にして強引な、聴覚のよじれるリハーモナイゼイションを堪能できます。
いわゆる名盤本でいまだに『プリーズ・リクエスト』や『シェイクスピア・ホール』が選ばれているのを見るにつけ本当にがっかりします。この時期のピーターソンというのは、真に怪物だというのに。
20世紀最大のピアニストのぎんぎらぎんの名人芸に触れてみたい人にお薦めします。