菊田一平さんの第二句集『百物語』(角川書店)を読む。第一句集『どっどどどう』から五年。一平さんとは「豆の木」でご一緒させて頂いているわけだが、末席の私が「十二音技法」がどうのこうのと言を弄している一方で、一平さんはもはや技術論などまったくどうでもいいステージに達しているように見受けられる。目に映るものがすべて俳句なのだから、一句一句を取沙汰するのもなにか筋が違うような気がする。
そんな中から十句ご紹介する。ほんとうはその何倍も何倍も自然体の句が並んでいるのだ。手にとってご覧になってほしい。
冬満月枯野の色をして上がる 菊田一平
塩あまた噴いて大暑の乾電池
酒蔵に大きな時計蝶の昼
銀行の裏に集まる祭髪
もてあます水羊羹の缶の蓋
虱取るさても写楽の眼して
富士の絵の襖外して横抱へ
白煙の空に貼りつく昼花火
落鮎の息を激しく草の上
煉瓦より寒き首出し煉瓦積む
よくもまあ、水羊羹の缶の蓋など句にするものである。