中原徳子さんの第一句集『不孤』を読む。中原さんは恒信風句会の我らが不孤さん。繊細な感性と図太い諧謔で海外を含む現実世界と舞台や絵画などの芸術世界を自在に駆け巡る。実にタフな精神である。
たましひの跳ねて球体水の秋 中原徳子
灼け砂に書いては消して値切りをり
月の暈死にゆく者の高いびき
黒白を曖昧にして酢牡蠣かな
春めくや歯科の寝椅子にからだの線
巴里と言ふRのかすれ黄落す
炎帝や孔雀の羽根の立ちくらみ
総ルビの背徳童話小鳥来る
どんぐりをあつめてよりの不等式
太箸やずつと不孝者でゐよう
「太箸や」を挙句に持ってくる諧謔、なんとも言いようがないではないか。
ちなみに不孤さんの好まれる傾向の舞台や絵画について、私はほとんど何も知らない。が、不孤さんの句を通じそれらは「総ルビの背徳童話」のように妖しげな魅力を放っている。その世界に踏み込んだらきっと孔雀の羽根の立ちくらみを起こすに違いないのだ。