NASAが、火星有人探査用の次世代大型ロケットの候補の一つで、開発を進めているSLSの2段エンジンに、三菱重工が開発を進めているH3ロケットを利用する可能性があることが明らかになった。NASAとJAXAが交渉を進めているそうで、アメリカ国内事情もあって、日本からの輸入は難しいから、共同開発を目指すという。NASAはすでにオリオンロケットを欧州宇宙機関と共同開発で合意しているそうだが、今回は日本との共同開発に進んでいる。コストを削減するのがアメリカ側の最大の思惑だ。
日本に目をつけたのは、高い独自技術を持ち、なにより発射時の汚染が非常に少ないことにある。H2ロケットシリーズの後継機種としてH3ロケットの開発は始まったばかりだが、共同開発は技術力を高めるだけでなく、宇宙開発において、商業的にも大きな意味を持つ。
目先の金ばかりにとらわれ先見の能力が皆無だった民主党政権下で無駄扱いされ批判されて影響を受けた国産ロケット開発だが、遅ればせながら、日が当たり始めた。すでに宇宙開発は現実の課題として各国がしのぎを削り始めている。SFの話ではもう無い。
今回は火星探査船用の超大型ロケットだが、見方を変えれば、そのレベルであれば、地球周辺宙域でのステーション建設や、資源採掘地とみなされつつある月の基地開発などの輸送機関としても意味がある。需要は大きく、今後市場は拡大していく。そこに対応出来るだけの技術を持っているのだから、日本にとってこれほど美味しい分野はなく、よくまあ、今まで冷や飯を食わせてきたなと驚くくらい。民主党にかぎらず、自民党ですら、そして、メディアやネットでも、こういうことに批判ばかり主張する連中が大勢いるが、批判は至極簡単な話で、中学生でもできる。なんの自慢にもならない。そういう安易な風潮を生んだのがバブルとバブル崩壊後の停滞した社会だったのだろうけど、日本が今後世界で生き残るためには、批判ではなく、より良くする方法を考えることだろう。
今後は技術力を安定させたままで、如何にコストを下げるか、というところにかかってくる。もともと世界でほぼ唯一、軍事技術ではない所で発達した日本のロケットは、それゆえに安全性や環境対策などのこだわりも多いが、民営化が進めば、競争に晒されて、研究開発の環境が悪化する恐れもある。どこまで民間技術に任せて、どの辺りまでは政府が支援するのか、そういうところも重要になってきそうだ。
また、更なる大型化、高度化、国産有人飛行など、上の輸送レベルも視野に入ってくるだろう。どんなものでも、技術は常に止まらず進むものでなければならない。

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