米国立がん研究所など米・英・独の国際研究チームが、世界中でイエネコやヤマネコ979匹の遺伝情報を採集し、ミトコンドリアを分析した結果、イエネコの先祖は13万1千年前の中東にいたリビヤヤマネコであると明らかになった。
ミトコンドリア遺伝子は、母親の卵細胞からしか受け継がれない。そこでその遺伝子の変化をどんどん追いかけていけば、どこかで一つの個体に行き着く。
人間もこれを調査した結果、15〜20万年前くらいの東アフリカに住んでいた一人の女性に至ったとして、ミトコンドリアイブと言う言葉も生まれ、「パラサイト・イブ」と言うSFまで生まれた。
もちろん、ご先祖様がたった一人の女性だったわけではなく、ご先祖の一人である可能性が高いと言うことだけど、ミトコンドリアはルーツを調べるのに使われやすいのだ。
で、リビヤヤマネコ。
これがイエネコの先祖だという説は、昔から言われてきたことだ。なにしろ、イエネコそっくりである。今はアフリカに普通に住んでいる野生のネコだが、古代メソポタミアや、古代エジプトで大事に扱われてきた記録もあり、まあ、おおむね間違いない、と言う定説化していたものが、今回遺伝子的に証明された、と言うことだ。
13万1千年前頃に、中東の乾燥地帯にいたヤマネコから分化して、今のリビヤヤマネコの先祖が現れ、それが現在のネコへとつながっていったというわけである。
人間とほぼ同じ歴史を持っていることになる。
というより、人間とともに生息域を拡げていったのかも知れない。
もちろん、ずっとリビヤヤマネコだけを飼っていた訳じゃないだろう。飼育している内に、人間によりなつきやすいネコに変化していき、ネコの種類もどんどん増えていったのだと思われる。
たぶん、ネコは、人間に飼われやすいようになっていったのだ。
ネズミの害から守る、と言う野性的な性質、単独性の肉食獣でありながら人間になつきやすい、と言うところ、そして、何より人間にかわいがられやすい身体的特徴がある。やわらかく、丸顔で、目が大きく、正面を向いていて、鼻や口の位置と近い。人間の子供と同じである。
同じネコ科でもトラやライオンとは明らかに異なる。
かわいい、と思わせる要素を備えているのだ。
相手の性質を利用して繁殖する。植物が、花粉を虫に運ばせるように、珊瑚の林の中で小魚が生き延びるように、ネコは人間を利用することで増えていった。13万年も。
イエネコは、飼い主の足にほほや体をこすりつける。
人間は、甘えているんだ、と思い、顔をにやけさせて、「んー? どちたのー?」などと赤ちゃん言葉で声をかけながら、ナデナデとかするわけだが、ネコのこの行為は、所有権の宣言である。つまり、「この人間は私のもの」とアピールしているのである。
彼らにとって人間は、食料を用意し、トイレを掃除し、甘えるときはナデナデしてくれるが、うっとうしいときは相手にしない物体である。
人間は、良くても「仲間」、あるいは「自動餌出し機」くらいのものかも知れない。
そうとわかっていても、人間の何割かは、ネコにめろめろになってしまう。
これはこれで、人間の側の遺伝子がなせる技なのだろう。
ただし、ネコほどに、人間はネコから恩恵を受けているのか、そこはよくわからない。そう言う意味では、ネコの方がすごいのである。

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