ソフトバンクからiPhoneが発売されて初めての休日。
といっても、売り上げが一気に変化するというわけでもないが。
初回の生産量が大体決まっていて、この第二四半期で現在40万台程度を確保していると言うが、予約を受け付けず、店頭販売のみにしているので、時間のあるときに買いに来るお客さんも結構いるだろう。
日本と韓国の携帯電話の通信は、世界で一般的な第2世代GSM方式ではなく第三世代のため、GSMだったiPhoneは日本では発売出来なかった。
今回、世界では新しい第三世代3G方式が採用されて、日本での販売が可能になったわけである。その意味では、iPhoneの方がようやく日本に追いついた、と言うことだが、それはあくまで技術的な話で、デザインや操作感などは、むしろ日本にはない携帯電話であった。
これが日本の携帯市場にどれだけインパクトがあるのか、というところである。
iPhoneを巡ってはいくつかの問題もある。
まず、機能が日本の他の携帯に追いついていない。デザインや操作感は新しくても、機能そのものは、遅れているためだ。ワンセグなどは見れない。
ただし、ワンセグがどこまで普及しているか、と言う点で考えると、今のところ、不便、と言うほどでもないが。また、メールなどが打ちにくい、と言う意見もある。
次に、iPhoneは、そのデザイン性で売っているところがあるため、実用品としてよりも、飽きられるのが早い。人より先に購入するのは、人より先に持ち見せびらかして注目を得たいがためであり、皆が持つようになると、もうそれで終わりだ。そう言う意味では、欧米でも爆発的なヒットは半年が限界だった。
ソフトバンクの立場としても、いろいろ問題がある。
端末そのものの値段はさほどではないが、通信契約料やコンテンツ利用に関しては、やや高めである。コンテンツに関しては、ソースフリーの部分があるため、今後ゲームメーカーなどが新しいゲームを作って配信するようになっていくだろうが、負担とのバランスを考えて、勢いで買ったユーザーが離れていく可能性もある。
逆に、iPhoneが流行りすぎると、他のソフトバンク携帯やディズニーモバイルの売り上げにも影響するようになる。話題性を繰り返し出すことで自転車操業しているような会社だから、自社製品との兼ね合いが難しい。
一方、他の携帯キャリアにも影響が出る。
そのうち、auは、微妙に距離を置いており、ジャケット付け替え式や運動に利用出来る携帯を売り始めているので、方向性を変えようとしているようだ。イスラエルのmodu携帯がそんなやり方をしているので、参考にしたのかも知れない。
このmodu、通信機器であるSIM部分と操作部分(ジャケット)が切り離せて、映画鑑賞や音楽プレイヤー、ゲーム、運動用リストバンドなど、用途によってジャケットを付け替えることが出来る着せ替え携帯である。
出来たばかりの会社だが、ネット上ではすでに話題になっている。ただ、個人的に聞いた範囲では、ドコモの社員はほとんど知らなかった。
そのドコモ、iPhone販売権の獲得に失敗したため、iPhoneが話題になるとき、必ず「ソフトバンクに負けた」という冠詞がついて紹介されている。イメージはかなりよくない。
ドコモが、iPhone獲得に失敗した理由は定かではない。いまも未練たっぷりな発言が、新社長から飛び出るくらいだから、相当話は進んでいたのかも知れない。
以前、NHKスペシャルで、携帯デザイン戦争を取り上げたとき、ドコモの社員が、韓国LG社の社員にダメ出しをしているとき、非常に居丈高な態度(というより明らかにLGを見下したようなバカにしたような態度)を見せていた場面が放映された。
これは、日本では、携帯の仕様やコンテンツを考えるのがドコモなどの通信キャリアであり、メーカーに対し強く要求出来るという土壌があるからだろうが、世界ではメーカーもそれなりに発言力が強く、販売規模から言えばLGの方が圧倒的に上なのである(キャリアとメーカーの違いはあるが、ドコモ仕様の携帯は国内のみなのに対し、LGは世界五大メーカーの一つ)。つまりドコモは、井の中の蛙大海を知らず、と言う風になっている。
ドコモは、同じようなキャリア的態度でアップルに対しても、もの申したのではないだろうか。ドコモ的なiPhoneを作るように要求し、アップルはiPhoneは自社のブランドであり、それは出来ない、と突っぱねて、物別れに終わった可能性もある。
あくまで想像だが、ドコモではドコモダケキャラを出してiPhoneを宣伝するような案も進行していただろう。ただ、ソフトバンクのような露骨な店頭イベントや行列戦略は出来なかったに違いない。
ドコモは、元々シェア占有率が高かっただけに、今や一人負けの状態が続いている。製品にも魅力が無く、今夏の主力FOMA906シリーズには何のインパクトもない。やや話題をさらった905のマイナーチェンジであり、デザインも従来からの四角いメタリック風携帯。それを持っていることが自慢になるような要素がないのである。
ドコモにもプラダ携帯というブランド品があるが、中身はほとんどLGの携帯のまんまで、ロゴが付いているくらいだ(そのロゴ使用料が高いのだろう)。主な購入層は水商売だ、と言う話も聞く。商売上、ブランド品が重要だからだ。そのせいか、売れている、と言う話を聞いたことがない。
ドコモも、そろそろ思い切ってデザインもコンテンツも全部替えるくらいでなければならない。imodeを無くし、新しいポータルコンテンツを作ってもいいくらいだ。imode開発の夏野氏もドコモを出ていってニコニコ動画のドワンゴに移ってしまった。有能なコンテンツメーカーを失う、と言うことは、一世を風靡した過去のシステムに、いつまでも頼っているということであり、ドコモが脱皮出来ない社内土壌があるのだろう。
ドコモ仕様で作っているメーカーの中には、高い技術力を持つ会社もある。しかしその技術が活かされていない。それはドコモ側が仕様を決定し、メーカーに命じているからだ。知的財産の確保の問題もあるはず。しかし、メーカーの高い技術を活かして、新しいハード・ソフト連動型のコンテンツを考えてもいいところではないか。
ドコモはCMも下手だ。といっても、これはおそらく電通などが考えているのであろうが、最終的にはドコモが決定するので、影響はなくもない。大手だから、電通などの内部でも専従担当ディレクターなどがいそうである。
ソフトバンクやauに比べ、なにか今時の若者にクールだと思われたいような欲が見え隠れする内容が多い。そのくせ、種類が多すぎて、何の宣伝をしているのかわからない(auも最近その傾向がある)。
たくさんタレントを出さず、もっとシンプルに、かつ、「え? ドコモがこんなCMするんだ」的なインパクトを考えた方がよいのではないか。
なんだかドコモに対する意見ばかりになったが、iPhoneのブームはそんなに長くはないだろう。が、これまで積み上げられてきて、これ以上どうしようもなくなった「バベルの塔」のような日本の携帯電話市場は、この機会に一度、ぶっ壊して大きく変わる時ではないか。ユーザーの多様化が進み、技術が進歩してきた今こそ、キャリアもメーカーも変わるときだと思う。

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