昨日は土用の丑の日。
ウナギの日。
土用は、黄道(見かけ上の太陽の通り道)を分割する方法で、各季節の終わり約18日間を指す。五行思想では様々なものを木火土金水5種類に分けるわけだが、季節は4つしかない。春夏秋冬を、木火金水に割り当て、残った土は、それぞれの季節の境目に分割して当てた。
それが土用と呼ばれる「季節」で、年に少なくとも4回ある。土用に入る日にちによっては、土用の間に丑の日が二回来る場合もある。今年は、7月24日と8月5日。
一般には平賀源内が、ウナギ屋の依頼に応えて、土用の丑の日にウナギを食べよう、というコピーを考えたことから、普及したと言われる。ただ、それ以前から栄養の付くものを食べる習慣はあったらしい。一番猛暑の季節だからである。
ウナギは元々、輪切りにして串刺しにし、それを焼いて、山椒などをふりかけて食べる食べ物だった。いまでもそう言う食べ方が一部で残っている。串に刺した輪切りのウナギの形が、河川敷に生えるガマによく似ていることから、「蒲焼き」と呼ばれるようになった。だから、今の蒲焼きは、形は蒲焼きではない。しかし、今はウナギに限らず、開いてタレを付けて焼く食べ物を蒲焼きという。
輪切り串刺しの頃の蒲焼きは、非常に脂っこい食べ物で、労働者にはウケがよかったが、江戸時代の美食家達には不評だった。そこで、関東では背開きにして蒸し、そのあとタレに付けて焼くようになり、関西では腹開きにして焼くようになった。どちらも脂を落とし食べやすくするためである。
柔らかくて、味が濃いため、ごはんに合い、どの季節に食べても美味しい。
冬の土用の丑の日にも食べよう、と言うキャンペーンも行われている。
しかし、このウナギ。
近年は、非常に高値の食べ物となっている。
理由は他の魚類と同様である。
まず日本の一般所得の向上で消費が伸びたこと。
その日本に輸出するため、台湾、中国で大量に生産するようになったこと。
その生産方法が、稚魚を捕獲して人工的に成長させる養殖方法であること。
特に稚魚を捕らえて育てると、自然界で育ち産卵する成魚が減り、減少に拍車がかかる。
年間10万t以上のウナギがそうやって生産されていくから、近い将来絶滅してしまうだろう。
最近は、地中海や大西洋で獲れるヨーロッパウナギをも養殖して日本に輸出するため、フランスなどでは川でウナギが捕れなくなり、捕獲規制が始まっている。日本はこの点では批判の的になりかねない。
日本では、輸入ウナギを国産と偽って販売していたことが相次いで発覚し、昨日は、「国産」を掲げる店が相次いだ。もっとも、どこまで本当かは誰にもわからない。あれほど沢山のウナギ専門店や、スーパーが「国産」と言ったら、実際の生産量以上になるので、どこかで嘘やごまかしがあるだろう。
逆に「台湾産」というのをきちんと表示することで偽装していないことをアピールする店もあった。表示名に関してはそれで問題ないが、中国や台湾産のウナギには抗菌剤等が大量に含まれているものもあるため、消費に微妙な影を落としている。
日本で売られているのは、
国内の河川で獲れた成魚、
国内で稚魚から養殖した国産養殖、
中国や台湾で稚魚から養殖した輸入ウナギ、
中国や台湾で養殖し蒲焼きにまでした輸入製品、
中国や台湾でヨーロッパウナギを養殖し輸入したもの、
と大まかに分けられる。
これに、今新たに注目されているのが、完全養殖ウナギだ。
今までは、稚魚を成魚まで育てても、その成魚が産んだ卵が葉形幼生に孵るところまでしか続かなかった。孵化した幼生がすぐに全滅するのである。
それを2003年、初めて幼生から稚魚、成魚へと成長させることに成功した。ウナギが日本のはるか南方、スルガ海山付近で生まれることも突き止められ、その環境に合わせて育てたのである。
この完全養殖は、技術的にコストが高く成功率も低いため、市場には出回っていない。
しかし、一度出来れば、方法は拡げていくことが出来る。この技術を発展させることで、近い将来、コストも下がり、市場に出回り、その分、自然からの漁獲を減らすことが出来るようになる。そうすれば、十何年後かには、ウナギも増えることだろう。川で普通に成魚が見られるようになるかも知れない。
これは、他の魚でも言えることだ。
それまで我々は気長に待つしかない。

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