鹿児島県出水市の鶴の越冬地で、弱っていた一羽の真鶴を調査したところ、高病原性鳥インフルエンザウイルスH5N8型が見つかった。
1万4千羽も飛来して集団でいる鶴の間でこれが広まれば、周辺の養鶏地帯へ感染が広がる可能性が高まるのでは。そういう懸念が広がっている。
鳥インフルエンザ自体はそれほど珍しい病気でもなく、よく感染例が見つかるが、2つの点で恐れられている。
ひとつは、養鶏業への影響が甚大なこと。特に日本では防疫の観点から、早いうちに殺処分するため、養鶏業者へのダメージが大きい。鶏肉市場への影響もある。
もうひとつは、人間の間で感染発症するインフルエンザウイルスも、元は鳥インフルエンザの変異から来ていると考えられること。
とは言っても、感染した鳥に触ったり食べたからといって、簡単に感染するわけではない。鳥インフルエンザは基本、鳥の病気であって、宿主は人間ではないからだ。熱を通せばほぼウイルスは死滅するので卵以外の生食が殆ど無い鶏肉は、食べるだけでは問題はない。
ただ、極稀に、人に感染する場合がある。多くは感染した鳥に接触する機会の多い人で、大量のウイルスを吸い込むような場合と考えられる。鳥インフルエンザウイルスが独自に変異して人の細胞に感染するようになるか、人インフルエンザウイルスと遺伝子が混ざり合って変化するような場合、人に感染するタイプになると思われる。それでも、ヒトヒト感染はめったにない。
しかし、過去に猛威を振るったスペイン風邪なども、元は鳥インフルエンザウイルスと見られる。
ワクチンは、その都度、対応するものを開発しなければならないので、すぐには普及しない上に、ワクチンを開発しても、完全にウイルスを無効化できるものはない。副作用の問題も完全にはわかっていない。
エボラウイルスにも効果があるとみられる、富山化学工業のファビピラビルは、もともとインフルエンザウイルスが細胞内で増殖するのを阻止する他にないタイプの薬なので期待されている(それ故、構造が似ているエボラやノロ、西ナイル熱にも効くと考えられている)が、催奇性があるため、流行しても即使用が認められるわけではない。
多くの場合、その対策は、うがいと手洗いが基本となる。ウイルスそのものは、その外殻部分であるエンベロープを破壊する石鹸やアルコールで消毒するのが有効なので、地道に防御していくしかない。

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