姉歯建築設計事務所の耐震強度偽造問題で、さらに2つのマンションが震度5強程度で倒壊する恐れが出てきたと、不動産会社が発表し、さらに2つの建物についても再調査することになったという。
大震災時の被害想定も、こう言うところまでは考慮していないから、同じような設計問題が他でもあるとしたら、実際の被害は想定よりもずっと大きくなるだろう。見直しも出てくるに違いない。
事件が拡大したのは、仕事が速く安いから、と言う理由でこの建築設計事務所が好評だったからだ。その結果、問題は波及し、その責任のなすり付け合いに発展している。偽造をした当の建築設計士本人よりも委託発注した設計会社や不動産会社、自治体の方がみっともないくらいだ。
このとんでもない事件、単に個人の引き起こした不祥事、と言うのではない。
プロジェクトも、いまや下請け下請けで、企業は自分の所では何もやらない時代だ。
それには、10年以上も続いた大不況で、コストカットのために自社での事業から撤退し、自社で人材を育てることを辞めたからである。
しかもバブルに翻弄し大不況を生み出した団塊の世代が、2007年までは社会を動かしているのだから、これはどうしようもない。同世代の一部のまともな人のみが、将来を見据えた人材育成や技術開発を指示しているだけである。
企業の正社員は、フレキシブル出勤とか、ノー残業デーとかで、家族サービスできるようになりました、なんていうコメントが経済番組で紹介されたりするが、実はそのしわ寄せは、子会社や提携会社の契約社員、パート、アルバイトに押し寄せる。それらの会社で雇われている人たちは、残業に残業、ボーナスも退職金もない。高い賃金の正社員を減らして、安い人件費の人々にやらせているわけ。まあ、そういう人の中から正社員に採用される人もいるので、人材捜しの場でもあるんだろうけど、数は少ない。
失業率の低下とか、株価の値上がりとかの背後には、そういう事情がある。
ところが、そういう職を支えている人たちへの評価は低い。たとえば、携帯電話の評価作業(動作チェック)をするアルバイトがいなければ、携帯は使えなくなり、あのホリエモンでも仕事できなくなるわけだけど、そのアルバイトらを「社会意識が低い」「責任感がない」と、定職に就いていないと言う理由でかけしからんと批判するのが識者らである。評論家よりアルバイトの方が数百万倍も世の中の役に立っているだろうに。
預金横領だの、情報漏洩だのの事件に、契約社員が関わっていることが多いのも、彼らの職場環境が大変で地位が低いからだ。ストレスがたまり、職場への忠誠心、あるいは、役に立ちたいという気持ちが湧かないから、事件も起こしかねない。しかし、そういう問題を指摘した知識人やマスコミってどれだけいるか?
姉歯設計事務所の問題だって、結局はコストダウンを図る企業に原因の一端がある。
最近の企業や省庁の不祥事の多くが同様の背景を持っている。
これらの問題を解決するために、むしろ団塊の世代の総定年退職というのは、人材の入れ替えが起こって、良いきっかけになるのではないかと思ったりもする。
国土交通省サイト姉歯設計事務所問題関連
http://www.mlit.go.jp/aneha/

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