北朝鮮の最高指導者、金正日総書記が、昨年10月の核実験実施後間もなく、挑戦労働党指導部に対し、「私は今後も長期間、最高指導者としてやっていける。80歳も90歳も可能だ」と宣言し、今後も長期間にわたって最高指導者として実権を握り続けることを示したという。
金正日は64歳。現代に於いてはさほど年をとっている年齢でもないが、この人、贅沢がたたって、糖尿病に罹っていると言われ、時々重病説も出る。極秘に同じような体格の人間に糖尿病の治療をさせてうまくいくか試しているとも言われる(と言うことは、そのためだけに糖尿病にさせられた人がいるということか?)。
そのため、内部でも、周辺諸国でも、後継者問題が注目されている。
周辺諸国にとっては、政権交代は国防問題に関わる重大なことだ。
一方北朝鮮内部では、独裁体制である以上、後継者が誰になるかによって、重臣らの立場も大きく変わる。それこそ命がけのことであり、後継者と違う人を推してしまったりしたら、よくて追放、下手すれば罪を作られて収容所行きか、死刑だからだ。
後継者の有力候補は、成恵琳との間に生まれた金正男、高英姫との間に生まれた金正哲、金正雲兄弟の3人。金正男は日本に密航して東京ディズニーランドに行こうとして捕まり、強制送還されたり、メール騒動を起こしたりと(これは偽物説もあるが)、お粗末な行動も目立ち、見た目も父親以上にみっともない。数カ国語をしゃべり、コンピュータ関係の仕事をしていると言うが、北朝鮮国内の評判もあまりよろしくないらしい。母親の姉ソン・ヘランの亡命騒ぎもみそをつけたと言われる。
一方、金正哲は見た目は金正男よりはマシで、スポーツや芸術が得意分野というスマートな感じ。が、この人物、性格が弱く、また病気説などの健康面で取りざたされたりする。これは後継者として重要な項目だ。金正日も「あいつは女みたいでだめだ」と言ったとか言わないとか。
弟の金正雲は父親によく似ていると言われるが、全く正体不明の人物。金正日が「明星大将」と呼ぶよう軍に指示したという説もあり、有力候補と見なされている。
そして、金正哲・金正雲兄弟の母親高英姫を称える動きも見られたことから、これまでこの兄弟のどちらかが後継者になるだろう、特に金正雲が有力ではないか、という見方が広がっていた。
ところが、金正日はその動きを牽制した。
天災続きの上に、ミサイルと核兵器の実験によって、金融や贅沢品の取引禁止措置の制裁を受けていることから、都市部も農村部も疲弊していると言われている。そのため、自身の誕生日祝賀祭を取りやめたりしているわけだが、国内の引き締めの一環として、内部分裂にもつながりかねない後継者問題に釘を刺したという見方も出来る。
年末の六カ国協議は何の進展もなく終わり、核実験を実施した北朝鮮に対し、アメリカも、ロシアも、中国も、何の有力な手段も執れずに終わった。
アメリカの新聞が、核実験を再度実施するという情報を記事に載せたりしていて、不穏な動きも見られる。
核も拉致問題も、解決に向けての道筋は全く見えてこない。
最大の問題は、北朝鮮が個人崇拝の独裁国家という体制だからである。
北朝鮮の政治家も官僚も軍人も、金正日の意向に従わなければならない。他国との関係とか、経済がどうとか、そういう問題は二の次なのだ。だから、金正日が納得すれば動きようもあるだろうが、金正日自身は生命の危機を極度におそれていると言われ、ひどく融通が利かない。リビアのように指導者自ら思い切った方針転換を図ったり、キューバのように裏ではアメリカと妥協できるかどうか模索したり、と言うこともほとんどない。
経済支援を求めたり、制裁解除を求めたり、体制の承認を求めたり、そのために核兵器を製造したりするのは、結局、金正日の恐怖から生まれてくる。
逆に言えば、彼がいて、権力を握っている限り、核も拉致も贋ドルも麻薬も解決しないといえるだろう。周辺諸国は振り回されっぱなしとなるのである。
これが6〜70年前なら、あっけなく戦争に突入しているところだが、いまはそうもいかない。特に中国・ロシアの存在が大きい。中ロともに北朝鮮にはうんざりしているだろうが、戦争にでもなれば、経済や難民の影響大だし、戦後の朝鮮半島の勢力図がどうなるかは、地政学上の重要な問題である。それがあるから、アメリカも思い切ったことが出来ない。イラクですら、あのていたらくなのだからなおさらだ。
おそらく、世界の主要国の指導者らは、一人の独裁者の失脚(もしくは
いなくなること)を切に願っているのではなかろうか。

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