文部科学相の諮問機関である文化審議会の文化財分科会は、世界文化遺産に推薦する国内候補の「暫定リスト」に、6年ぶりに、新たに4件を追加した。
4件は、「富岡製糸場と絹産業遺産群」「富士山」「飛鳥・藤原の宮都とその関連資産群」「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」。
各国の暫定リストから、文化遺産の場合、国際記念物遺跡会議が調査を行い、世界遺産委員会会議で検討されて、決定される。
日本の暫定リストには、すでに「平泉の歴史的建造物群」「鎌倉の社寺」「彦根城」「石見銀山遺跡」が登録されていて、そのうち、石見銀山が今年審議対象となっている。
今回の暫定リスト選定には、国内の各地方から以下の24件の提案が出ていた。
青森県の縄文遺跡群・大湯環状列石・出羽三山と最上川・
旧富岡製糸場を中心とした絹業文化遺産・佐渡金銀山・近世高岡の文化遺産群・城下町金沢の文化的都市景観・霊峰白山と山麓の文化的景観・神仏習合などの聖地若狭小浜・
富士山・松本城・善光寺・妻籠宿と中山道・飛騨高山の町並み・
飛鳥藤原の宮都・三徳山投入堂・錦帯橋と岩国の町割・萩城の城下町および明治維新関連遺跡群・四国八十八カ所霊場と遍路道・九州山口の近代化産業遺産(端島(軍艦島)と仙巌園(磯庭園)を含む)・沖ノ島祭祀遺跡・
長崎の教会群とキリスト教関連遺産・宇佐国東八幡文化遺産・竹富島/波照間島の文化的景観
富士山は、かつて自然遺産に推薦されて、落選した経緯がある。理由は富士山とその周辺がゴミだらけで汚染されているため。つまり、自然遺産として推薦しておきながら、ちっとも富士山を大事にしていないというわけ。富士山そのものの価値よりも、日本人の質を問題にしたのである。
ところが、今回、文化遺産に新たに申請するという。富士山には確かに文化的要素があるのだけど、まず富士山を大事に扱うところからやり直して、それから複合遺産として申請すべきであって、自然遺産でだめだったから、文化遺産でやろう、と言う感じがしてならない。
日本では、世界遺産というと、何か観光の目玉になると言う感じで取り扱われている。白神山地の場合、世界遺産となった途端、自治体名にしようとしたり、知床では決定すると、観光客が増えると大喜びした。だが、本来は自然や遺跡を保護し残していくためのもので、いかに保護し、その教育をいかにしていくかが問われることなのだ。喜ぶべきことではあるが、責任と負担は重くなるのである。
今回暫定リストに登録されたものは、いずれも歴史的価値のあるものばかりだ。だが、その「文化としての価値」を本当にわかって申請したのかどうか、これから試されることになる。
ユネスコ世界遺産
http://www.unesco.jp/contents/isan/

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