マイクロソフトは、ウィンドウズVistaが出るのにあわせて、ウィンドウズXPのサポート期間をVista発売後2年間としていた。それを急遽、法人サポートに併せて5年間延長し、2014年4月までとした。
サポート延長の決定には、ユーザー、特に日本人ユーザーの反発があったと見られる。
マイクロソフト側は、「ユーザーの声、製品の安全性に配慮している証」としているが、予想外の反発に驚いた、と言うのが本音だろう。
当初、マイクロソフトの担当者は、Vistaを動かすには一定以上のスペックが必要だという指摘に対し、「買い換えてもらうしかない」と言い放っていた。
OSシェアの9割以上を保有するマイクロソフトは、だいぶ消費者の心理というのが理解できなくなっているらしい。いいものを作ってやったんだから、買い換えるよな、と言う感じだ。PCメーカーとの関係もあるだろう。パソコンの売り上げが今ひとつ頭打ちな中、新OSを起爆剤にしたいメーカーの思惑もある。
ところが、消費者の方は、いい迷惑である。
さんざん、セキュリティで苦労させられたあげく、買い換えろ、と言われても、パソコンは簡単に買い換えられるほど安くはないし、せっかく今まで使ってきたものを、あっさり捨てることも出来ない。捨てるにも金がかかるし、情報を移したり、負担とリスクも大きいからだ。
特に負担が大きいのは、企業と学校である。大きいところだと何万台も買い換えなければならなくなる。実際には、いまでも98SEやMe、2000を使っている事業者は多いのだ。しかしこれらのサポートも打ち切られている。
学校も、マイクロソフトが率先して売り歩いた結果、たくさんの学校に、たくさんのマシンが置かれるようになったが、今更になって、買い換えろ、サポートは打ち切る、などというのはひどい話である。
囂々たる批判に対して、やっと、その事実に気が付いたのか、あわててサポート延長を示したわけだが、これとても、ウィルス関連などに限られており、いずれはやめるつもりでいる。
日本のユーザー批判があったことは、マイクロソフトも指摘しているが、これには、マイクロソフトびいきだった日本市場が離れていくことを恐れたという点もあるだろう。日本政府はこれまでアメリカの顔色をうかがってか、国産のOSを自ら潰し、マイクロソフト製品を推奨してきたわけだが、ここにいたって、オープンソースの製品を推奨するようになってきた。
欧米では自治体を中心にオープンソース移行が進んでいる。OSはリナックス、オフィスソフトはOpenOffice.orgと言った具合に導入を進めているのだ。
独禁法違反的なマイクロソフトに対する批判も込めてのことだが、一方で、安全保障にも関わる重大な問題だからである。
特定の国の特定の企業の製品だけに頼るのは、何かあったときに、そのシステムに牛耳られてしまい、極端なことを言えば乗っ取られてしまいかねない。
逆に、そのシステムが何者かに狙われてシステムダウンしたときにも、機能がすべて止まってしまうことになる(今だってウィルス制作者はマイクロソフトを意図的に狙っている)。いずれにせよ、その影響は計り知れない。
携帯や家電、大規模コンピューターには日本独自のシステムも多いが、一般PCはマイクロソフト製品であり、多くの企業で重要な用途に使われており、ウィンドウズに乗せる形で日本独自のシステム(セキュリティソフトも含む)を導入している企業も多い。それらが止まったら経済的にも大打撃である。現時点ですら、不具合が出て企業内で大騒ぎになることもあるのだ。大手であればあるほど、社内サポートという部署が存在する。
日本が離れることを危惧し、あわててサポートを示したマイクロソフトだが、たぶん、中国が国家あげてマイクロソフト製品を支持するようだと、他の国の不満はどうでも良くなるかもしれない。
そうなった場合、あとは、リナックスにどれだけ便利なソフトが出てくるか、それ次第であろう。

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