大都市圏での朝の風物詩と言えば……、
地獄の通勤ラッシュ。
地価の高い都心には住めないけど、その都心にある企業へ向かう多くの郊外居住者が、通勤電車に殺到するからである。
通勤地獄における距離と時間の関係も相対的で、企業はおおむね、9時開始なので、9時に職場に入れることを考慮した逆算で、距離に応じて、混み具合が変わる。たとえば8時頃、20km圏くらいは混み合ってるが、同じ時間、9時には間に合わない30km圏では空いている。7時30分には、25km圏付近で電車は混んでいるが、10km圏ではまだ空いている。だから、同じ電車でも、空いているから最後まで空いているわけではなく、9時からの逆算で混んでいく。
フレックス制・在宅制を取っている企業や、出版社のように午後から本格始動する企業などは、この法則に必ずしも当てはまらない。
そのせいか、東京のある鉄道会社では、ホームに「時間差通勤に努めましょう」という大きなバナーが掲げられているが、「そういうことは、通勤サラリーマンに言うのではなく、会社に直接言え」などという感想を持ってしまう。
これに、乗換駅で大きく乗客が減ったり、逆に増えたりする。そうやっていろんな「理由」「原因」を組み込んでいけば、複雑な、でも理論的な、混み具合の計算が出来る。きっと、鉄道会社はその限界を計算しているだろう。
それが、人事や利益といった要素を組み込んで、そのバランスが崩れると、福知山線事故のような災害になる。JR西日本の幹部は誰一人責任を取ってないが。
東京は放射状に各鉄道会社の路線が延びている。
どの路線もラッシュ時間は地獄の混み具合だが、特に有名なのが、東京急行田園都市線と、JR東日本中央線(中央快速線)である。
この両線は、共通点がいくつかある。
中でも、
1、普段でも人が物理的に入る限界まで混んでいる。
2、遅延は日常。定時運行はあり得ない。
3、速達運行がある。
これらは密接に関係しあっている。
混むのは利用者が多いわりに、車両の輸送量に限界があるからだが、その乗降に時間がかかるため、遅延するようになる。数秒の遅延も、たまれば数分の遅れは当たり前になる。
そこで、遠い人を出来るだけ早く活かせようと、速達運行をする。速達運行とは急行とか快速とか駅を飛ばすタイプの電車があること。
中央線の通勤特快などは、国分寺から新宿までノンストップである。
ところが、この速達電車が、また混雑と遅延の原因にもなる。
早くいける、駅を飛ばす、という要件が、心理的に早いと思わせるために、その電車に殺到する要因となる。しかし実際には、それほど極端に早く到着するわけではない。
なぜなら、いくら駅を飛ばしても、前を走る各駅停車に追いついてしまうからである。
中央線のように島型ホームの左右を使える駅が立川・国分寺・三鷹・中野・新宿とそろっている場合は、ホームの両側交互に入れられるため、電車の間隔を縮められる(山手線よりも間隔が短いと言われる)。それでも限界に達して日々遅延しているから、そういう駅がない場合は、どうやっても無理がある。
田園都市線では、とうとう快速運転をやめ、特に地下を走る旧新玉川線部分を各駅停車にするよう方針を変えた(急行を準急に格下げする)。一見、遅くなるように見えるが、コンパクトに送り出せるため、この方が電車が詰まらずに進むのである。その結果、ピストン輸送のようになって、混雑も解消され、混雑しないから乗降に時間を取られることもなくなる。
東京モノレールのように、昭和島駅に待避ホームを造っただけで、とんでもない数の快速を走らせられるようになった例もあるから、駅の整備も大事だが、実際、お金もかかるし、構造上の問題もある。
快速をやめる、というのは、アイデアだったと言えるかも知れない。
固定観念にとらわれないことは、人間としても企業としても、大事なのだ。

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