京都議定書で温室効果ガスの排出削減目標値となっている6%。
当時、日本での国際会議というプレッシャーから出てきたこの数字は、何かの根拠を元にしたものではない。
こういう場合、だから、温暖化温暖化と騒ぎすぎだ、感情的になりすぎている、科学的でない、と言う批判が出てくるのだけども、じゃあ、無視していいのか、と言うと、どうもそうも行かない状況になっている。
科学者が予測するより、遙かに早く、地球の気候変動が進行している。温暖化は確実で、北極の氷床の減少、南洋諸島の浸水状況、生態系の極端な変化、大型低気圧の多発など、明らかにこれまでにない異常が進行している。
科学的かどうか云々、という段階を頭越しに飛び越して、自然の変化の方が先へ行ってしまっている感じだ。
手遅れの感、なきにしもあらず、である。
それでも、環境対策は、後手後手に回っていて、しかもどこか深刻さがうかがえない。
今年も、政府主導のチームマイナス6%がスタートする。各企業に冷房の温度設定や、クールビズなどを推奨する。
また今年は、バイオ燃料がやたらともてはやされている。政府も本腰を入れてコスト削減目標を打ち出した。
排出権取引も本格化し、欧米の金融証券企業は、日本に排出権の取引市場規模を見いだして躍起になっている。
が、いずれも、どこまで温暖化削減に効果があるのか、はなはだ疑問だ。
冷房の温度設定も、暑さしのぎのクールビズも、結構なことである。ココロガケとしては。だが、実際の効果はいかほどのものであろうか。化石燃料をどれほど「燃やさずに済むか」という論議も聞いたことがない(むしろ原発何基分という方がよく聞くが、そのたとえは変だろう。原発はCO2を出すわけではないのだから)。
バイオ燃料も、正直、どれほどの効果があるのだろう。燃やしても、その燃やす前の植物が吸収した分のCO2がでるだけだから、プラマイゼロ、と言うだけの話で、しかも、そのバイオ燃料のトウモロコシを植えるために森林を切り開いたりしている……。そうでなくとも外国から輸入するというのである。重油で動くタンカーに乗せて運んだら、3%なんてあっという間である。
廃材やゴミ、休耕田の稲や雑草からも抽出出来るが、そのプラントを作るのに何年もかけなければならない。そしてガソリンに混ぜる量は数%である。
やるなとは言わないけど、こればかりに頼ってエコロジーだの、地球に優しいだのは、ちょっと虫がよすぎないか。
風力発電なども同様で、これでもう絶対に正しいかのような話になっているが、巨大風車のために森林を伐採したり、浅瀬を埋め立てたりするなど論外だ。渡り鳥がぶつかる問題も、推進派はヒステリックに否定したりする。
そもそも発電量が小さく、目に見える削減効果を出すには、それこそ何百万基も風力発電所を建てなければならないのなら、他の発電技術で温暖化削減を目指せばよい。なぜそこまで風力にこだわるのか、それが不可思議だ。
排出権取引に至っては、単に数値が右から左へ移動しただけの話で、なんの努力にもなってない。実際には、森林を伐採した横で植樹して排出権の削減分に組み込んでいる例もある。排出権で得た金でさらに開発が進んだら逆効果だ。しかもこれは金融商品として扱われるから、どこで破綻するかわからないし、そうなったときの影響は甚大である。
太陽光発電のように、国産技術で充分まかなえて、気候条件もよく、CO2もそれ自体からは出ないシステムがあるのだから、もっと推進してもよいと思うのだが。
科学者の言う100年後に氷がどれだけ溶けて海面が何十cm上昇するというようなステロタイプな話ではなく、カオティックに連動した気候変動による大災害がもう目の前にあると言うことをもっと認識すべきだ。
たとえば、シベリアの凍土はだいぶ溶けてきているが、その下には膨大なメタンハイドレードが眠っているという。それらが一気に噴出したら、気温の上昇は、1.5度とかそんなレベルの話ではなくなる。その上、酸素濃度の割合にまで影響を及ぼす可能性すらありうる。人類存亡クラスの問題なのだ。
節約と言ったような消極的な政策ではなく、石油文明を終了させて太陽エネルギーと水素による電力文明にシフトするくらいのレベルで、政府も企業も取り組んで欲しい。

0