自民党の大臣は、よく、失言をする。
失言と言っても、間違っている、と言う意味もあれば、あとの反響の大きさを想像出来ないのか不思議になるような発言と言うこともある。
今回はその両方だったろう。
久間防衛相が、「原爆投下容認発言」をしてしまったのだ。
千葉の大学で講演した際に、アメリカの広島と長崎に対する原爆投下について、「ソ連参戦を阻止し、戦争を早く終わらせるために、仕方なかった」と言う主旨のことを言った。日本の敗北が確実の段階で、原爆を使用したことについては、やや疑問も呈したが、同時に戦後の国際情勢を考えると、「あり得る」とも言った。
まさに、失言の原爆投下である。
本人はあとで、当時の日本の判断ミスを指摘したかっただけで、原爆を是認したわけではない、と釈明したが、原爆による市民の被害を考えると、「仕方ない」とか「あり得る」と言う問題ではないだろう。
そもそも原爆による「戦争の早期終結論」は、戦後の1947年に、アメリカの陸軍長官だったスチムソンが言い出したことで、すでに当時あった核兵器への批判に対応するものだった。日米双方の100万人が死なずに済んだ、という意味の発言がされている。しかし、なんの根拠もないし、そう言う目的で原爆を投下したのではないことは、投下前後のアメリカの動きで容易に想像出来る。兵器の威力を確かめる実験の要素が非常に強いからだ。
実際、欧米では、核実験と並んで広島・長崎も併記されることが多い。
ましてや、いくら日米同盟があるからと言って、日本の、それも防衛大臣が言うことではなかろう。
また、こういう発言がもたらす反響を想像出来ないのか、と言う疑問も大いにわいてくる。参議院選挙目前のこのときに。
自民党内部でも困惑が拡がっているそうだが、こうも立て続けに問題が起こるようでは、勝てる選挙も勝てない。元々勝利の見込みも薄い中では、だめ押しのようなものだ。
この種の失言。
ほとんど後先考えずに、ぽろっと言ってしまうパターンが多い。
それは、政治家が、口からどんどん、適当なことをしゃべれる変な能力の持ち主であると言うことだ。
つまり、真剣に物事を考えている訳じゃないと言うこと。話を適当に合わせたり、場を盛り上げたり、その場しのぎで言ったり、口から出任せだったり。
なんでそう言う連中が、選挙に勝つのだろう、と思いたくなるが、意外にこういう人間が人気を得るものだ。
職場や学校でも、かならず口のうまい、要領が良く、調子のいいやつがいる。で、大抵人気者だ。
よ〜くその話を聞いたりしてみると、結構いい加減だったり、中身がなかったりするものだが、人間はまず、表面で判断するのである。
だから無口でも、まじめにやるような人は、どこでも浮かばれない。今の時代は特にそうだ。
学校の人気者くらいなら、それで済むことだが、政治家はそうはいかない。
国民の人生に関わる重大なことをする可能性があるのである。
残念ながら、日本では、選挙に立候補するのは、そう言うお調子者ばかりである。
まともな人間は、政治家にはならない。誰もがそのことはわかってるのに、最終的にはお調子者の度合いで当選してしまう。タレント候補大にぎわいである。
民主主義とは一体何なのか、考えてみたくなる要素の一つに、政治家の失言もあるわけだ。

0