介護事業所のコムスンが、介護スタッフの数をごまかして虚偽報告していたり、ケアマネージャーに自社の施設を利用させたら報奨金を出す制度を取り入れていたことなど、法律に違反する行為が明らかになって問題になっている。コムスンは活動を大きく禁止されたため、事実上の廃業となるのは確実だが、今度は他の介護企業が、コムスンの事業に殺到して奪い合いみたいな様相になっている。ビジネスとしてのチャンスを狙っているのであって、介護サービスの充実にはいささか疑問を感じざるを得ない。
とはいえ、高齢者の割合が急速に高まっている現状では、昔ながらの家庭や地域で高齢者を支え見守っていくような状態は望めないのも事実である。
また、完全ボランティアでやれるような甘いものでもない。介護には相応にお金がかかる。なにより人材の負担が重すぎる。家族でもない、アカの他人のお年寄りの食事や風呂や下の世話までするようなことは、簡単には出来ない。人件費やその他の様々なお金が必要になってくる。一方、現在の団塊の世代は莫大な資産を持っているから、介護事業はこれから有力なビジネスになると考える企業が出てくるのも当然だろう。今のウチに、手を打っておこうと言ったところだ。
日本の高齢化は急速に進んでいる。
国際連合の定義では、高齢
化社会は老年人口比率が7%、
高齢社会は14%としている。先進諸国はいずれも高齢社会だ。
7%から14%になった年数は、国によってまちまちだが、フランスが115年、スウェーデンが85年、ドイツで40年なのに対して、日本は24年である。「先進国」としては後発の日本は、一気に主要国を追い抜いて高齢社会へ突入したわけである。
出生率が若干持ち直したとは言え、格差の拡大、社会保障制度の不備、そして文化や思想の変化もあいまって、出生数は減るばかり。これにともない、老人と子供を除く生産年齢層も、急速に減少していて、2050年には総人口の半分程度になってしまうと見られる。その頃、子供は今よりもさらに少ないから、2、3人で老人一人を面倒見なければならない状況に追い込まれる。
正直、今問題の年金など、その頃には大増税しても不可能なことは想像に難くない。
さて、政府も学者も、いろんな意見を出して、高齢化問題に取り組んだり、提言したりしているものの、地球温暖化問題と同様、もはや手遅れの感、なきにしもあらず、と言うより、かなり手遅れなんじゃないかと思える。その上、その地球温暖化による異常気象をはじめ、病気の蔓延、株買収騒ぎに見られる経済の安易化、世界中で拡がるテロ、独裁主義の拡大、資源紛争など、ろくでもないことが急速に増えている。
どこかでカタストロフィでも起こり、高齢者が多く犠牲になって、世代別人口比率が正常化し、出生率も回復し、世界をやり直す、というのは、自然的な一つの収拾現象としてあり得るだろうが、それはあまりにも残酷であろう。
そうでない方法で、やっていくとしたら、あとは地道に自分たちの生き方、文明のあり様を検討して、ゆっくりと数世代を重ねて解決を模索するか、そうでなければ、極端な道を進むしかない。
たとえば、より高度なロボット技術を開発して社会に大量に投入し、ロボットによる経済生産体制を確立して人間に休息期間を設けるか、
あるいは、今、盛んに研究が進む不老不死化技術を完成させ、倫理上のコンセンサスも取り付けた上で、老人を含む成人男女を一定の若さに戻して、そこで不老不死化することで(つまり肉体的には老人の全くいない状態になることで)、諸問題を解決すると言うことである。
こうすれば、生産体制や、人口の偏り、出生率の低下は免れるだろう。
ただし、ロボット社会体制の到来で、人間側の根本的解決がなされるかはわからないし、不老不死化すれば、今の文明の重要なところ(たとえば家族制度)などは失わざるを得ない。
人類という生物種が、この惑星上でむなしく老衰して滅びるか、とにもかくにも、方法を得て生き延び、いずれはこの広い宇宙へと拡がっていくのか。それは今の我々の選択によって決定されるのかも知れない。

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