6月22日、南関東地方は、朝のラッシュ時間大混乱した。停電が発生し、突然JRの4路線が運行停止となり、私鉄などにも影響を与える事故が起こったからだ。
原因は、運転手が、前方の赤信号に気を取られて、エアーセクションと呼ばれる区間で停止してしまったことにある。
エアーセクションは、異なる変電所から電気を取るときに、電力供給を継続するため、複数の架線が並行して引かれているような場所のこと。こういうところでは、普通に走行している分には問題ないのだけど、ここで停止してしまうと、異なる架線がパンタグラフでつながって、放電してしまい、高温になって架線があっという間に溶けてしまう。
エアーセクションは、3〜4kmに一カ所くらいの割合で存在するため、停まってはならない場所を示した標識がある。今回は、その標識の手前で停車したため、最後尾車両が、エアーセクションにかかってしまったのだ。
エアーセクションで停まらないよう指導はされているし、今回の運転手はベテランなのだけども、ミスも当然あり得る。特に赤信号による停止なので、ミスをとやかく責めにくいし、こういう事例はあり得ないことではないだろう。
電力供給の構造上、どうしようもないとは言え、システム設計上の対策はもっと採られてもいいかも知れない。
むしろ問題なのは、こういう事例が起こりうることを想定して、停電の時の対応策をきちんと採ることが出来なかったJRの方にあるかも知れない。もちろん、乗客の誘導などのマニュアルはあるだろうが、蒸し暑い車内に長時間乗客を閉じこめていて、何も出来なかったのは、あまりにもお粗末。見直すべき事象だと言える。
同じ6月22日、大阪府立成人病センターが、看護師のミスから、患者の容態急変に気づかず、障害が残る結果を招いた医療事故について発表し、謝罪した。
これは、入院していた患者の容態が急変したとき、その警報がナースステーションに伝わっていたのに、看護師らが巡回で聞き逃してしまい、10分ほどして気づいたときには、心肺停止状態で、脳に重い障害が残ったというもの。
もちろん、重大なミスなのだが、今の医療現場の事情を考えると、安易に批判できないところもある。看護師の数は絶対的に不足している上に、過酷な労働環境になっている。一人一人への負担もさることながら、看護師が患者に対応する状況で、今回のような「空白時間」が生じる危険性が大きい。
鉄道も医療も生活に密接した業種だが、それぞれに問題も抱えている。システムはどんなに発達しても、最終的には人が動かすわけだから、人的ミスが重大な結果を招くことになる。だが、一方で、システムを改善することで避けられる事象もあるわけで、特に少子化で労働人口が減少していくこれからは、いかに、高度なシステムで人間の作業を補わなければならないか、どこもかしこも検討する必要があるのだ。
当然、そう言う対策を請け負う業種も発達することだろう。

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