日本政府は次期主力戦闘機(FX)の候補に、アメリカのロッキード・マーチン社が開発した戦闘機、F−22Aラプターを最有力としていた。
F−22はすでにアメリカ空軍が採用していて、最近も沖縄の嘉手納基地に短期間配備されたことがある。
高度なステルス性能に、自動操縦、ネットワークリンク機能、高度な運動性能、他いろいろ、というなかなか優秀な航空機だが、それ故にアメリカはこの戦闘機の技術が外国に漏洩するのを警戒している。
日本はFX選定のために、F−22の情報を提供するようアメリカに求めたが、米下院歳出委員会は、F−22の海外輸出禁止条項を継続させた。米軍内部でも日本輸出に反対する意見は強いと言われる。また、チャイナロビーが東アジアの軍事バランスを崩しかねない、として反対活動をしていると言われる。なにより、海上自衛隊のイージス艦の機密情報が漏れた事件が大きな影響を与えた。アメリカとしては警戒せざるを得ない。
今、すぐに次期主力機の決定が為されるわけではないが、日本の航空戦力は、主力戦闘機のF−4とF−15はともに優秀な航空機だが、老朽化しつつあり(特にF−4)、一方、支援戦闘機のF−2はほとんど生産されなかった。日本としてはそろそろ新世代機に変えたいところだろう。
F−22の輸出が難しくなったことからか、日本政府は、ステルス有人試験機の自国開発も視野に入れ始めた。完全国産の戦闘機は、F−1があるが、F−2の時はアメリカの圧力もあって出来なかった。そのため、いきなり高度な戦闘機は作れないので、とりあえず有人試験機を開発するのだろう。技術力の高さをアピールして、アメリカからの軍事支援、導入などの弾みにしたい、と言う思惑もあるという。
最近、日本は急に、国産機の開発を推進するようになった。
いずれも民間主導の動きだが、ホンダは小型ビジネスジェットを、三菱重工は中小型旅客機を、川崎重工は海上自衛隊向けの哨戒機と、航空自衛隊向けの輸送機を、それぞれ開発中である。すでに完成に近い段階に来ているものもある。
もちろん、開発はメーカー単独ではなく、複数のメーカーが参加する。川崎・三菱に、富士重工(旧中島飛行機)、新明和(旧川西航空機)、昭和飛行機(旧東京製作所)、日本飛行機などの航空機メーカーが加わる。いずれも、戦前から飛行機を作ってきた企業の後継メーカーだ。さらに言えば、宇宙関係の研究もしている。
戦後生まれのホンダは独自に研究しているが技術力は高い。
さらに、これらのメーカーやジャムコなどの航空機関連企業は、ボーイングやエアバスの開発にも参加しているし、フランスと共同で、極超音速旅客機の研究も始める。極超音速機は、宇宙往還機への転用も可能な技術だ。
開発に熱心なのは、航空・宇宙産業が、これからビジネスで大きな影響を持つことがわかっているからである。
そのため、川崎重工などは、主に軍用中型機の開発を行っているが、技術はそのまま民需転用を視野に入れていると言われている。
また日本政府は、兵器・軍事装備に関しても、徐々に国産へのシフトを強めている。輸入兵器には、ライセンスの問題、技術研究開発・蓄積の問題、部品補充の問題、機密の問題など、課題が多いからだ。軍事としてはこれらは弱点ともなる。中国や、北朝鮮、韓国の軍事力が拡大していく中、外交的には穏和に進めたくても、対抗する軍事力を整えておきたいのは山々であろう。共産・社民のような、理念ばかりで、軍事を否定しながら、自ら外交で動くわけでもない、いい加減なことでは安全保障は守られないのである。
それらが重なって、国産機の開発が急になってきたというわけだ。
一方で、このクラスの技術開発には、ものすごくお金がかかる。
そのせいか、開発は相変わらず民間主導で、政府は声は出すが、金は出し渋っている。開発や市場獲得に失敗したときの責任問題になることを恐れているところも多分にあるだろう。
しかし、技術力が低下する中、すこしでも、なにかを生み出すことに夢を導かなければ、日本に未来はない。
航空市場が花開き、宇宙もフィクションから現実を視野に入れる時代になった今、バスに乗り遅れるわけにはいかないのである。

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