明日10月1日より、日本郵政公社は民営化される。
この時点でも、政界では民営化賛否の動きが盛んだが、現場的には、もはやどうにもならないだろう。むしろ、ここで民営化を辞めると、準備に投じた資金と、経営の混乱によって、大きな損害になると思われる。
すでに看板の付け替えなども行われ、休日にもかかわらず開いている拠点局の窓口には、「研修」の札を下げた人が応対しており、その後ろでは準備で人が右往左往という状態だった。
郵政民営化に伴い、持株会社の「日本郵政株式会社」、郵便事業を担当する「郵便事業株式会社」、郵便局を運営する「郵便局株式会社」、郵貯と簡易保険の契約管理を行う「郵便貯金・簡易生命保険管理機構」、郵便貯金の運営業務を担当する「ゆうちょ銀行」、簡易生命保険の運営業務を担当する「株式会社かんぽ生命保険」からなる半官半民企業グループとなる。
総資産は227兆円、貯金残高は188兆円という巨大金融機関を抱えたグループがいきなり出現するわけである。
郵便局の民営化には賛否両論があった。
膨大な貯金を政界の不透明な部分に利用されていることもあり、いい加減な公共事業政策にも影響していたことから、民営化の動きは昔からあった。少なくとも政治の利権がらみから切り離す必要はあった。国債の無節操な増発も、郵貯などの資産をアテにしたようなところがあったのは事実である。
また、郵便事業にも、民間宅配と比べてサービスでいい加減なところがあった。遅配や人為的郵便事故も比較的多かった。もちろん、きちんとやっているところがほとんどだったが、公的機関としてサービス意識が乏しかった部分はあるだろう。民営化の是非はともかく、当時の郵便局には、改革しなければならないところが多くあった。
そのため、主に政治的な理由から、民営化が推進された。
小泉内閣は、この是非を問うために解散総選挙まで実施し、小泉人気もあって、自民党は圧倒的勝利を収め、それまで民営化に反対だった政治家の多くも賛成に転んだ。反対派は離党し、新党を作ったり、無所属となった(無所属の多くは復党している)。小泉批判に便乗して民営化も批判する意見はいまもあるが、当時、国民の多くが賛成だったのは事実である。
一方で、郵便行政は、地方の隅々にまで行き渡っており、特に過疎化の進む地域では、郵便局に頼るところが大きい。都市部の郵便局は、ただ窓口業務と配達くらいだが、地方では、郵便局がいろんな無償のサービスも行ってきた。配達のついでに、いろいろしてくれる、頼りになる機関であった。一人暮らしのお年寄りの家を訪ねて、無事を確認をするボランティアをやっているところもあった。
しかし、こういうサービスは、民営化に伴って多く廃止される。
経営にとって無駄だと思われているのかよくわからないが、中には法律的に出来なくなるサービスもある。
そう言う点で、地方では民営化に困惑するところも多い。
法律上問題のないサービスについては、今後、民営化された郵便局会社が、どこまでやれるかにもよる。
官僚組織が民営化されると、民間の悪いところばかり見習って、アレも辞める、コレは無駄、と言ったことが頻繁に起こるが、民間では競争があるため、一見無駄のように見えて、実は営業をバックアップするサービスというのは良く行われる。それ自体は利益を上げられなくても、結果的に信用や人気を得て、売り上げが伸びることがあるからだ。
そこを郵便局の現場の人はわかっているだろうが、上層部が理解出来るかどうかにかかっている。
ただ、いまの日本は、バブル崩壊後の長い不況と国際競争のあおりを受けて、民間企業でも視野が狭くなり、無駄は極力排する、と言う考えかたが広まっていて、余計なサービスはしたがらない風潮が強い。また、新しいものを生み出さず、既存のできあがっているものを流用しようと言うところも大きい。つまり、日本経済そのものが弱くなっていて、後ろ向きになっている。
だから、郵便局の民営化は、それを待ち受ける、金融機関、保険会社、配送会社なども、サービスとはなにかを考える良い機会ではないだろうか。それが出来なければ、いずれ国際資本による外資系企業が乗り込んで、日本市場を支配するだけだ。一般ユーザーとしては、きちんとしてくれるところを選ぶだけである。

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