森ビルは、28日に、上海で建設中だった超高層ビル「上海環球金融中心」を公開した。上海環球金融中心とは上海ワールドフィナンシャルセンター、と言う意味だ。通称は上海ヒルズ。
アンテナなどを除いた建物本体の高さは492メートルで世界一だという。
建設された浦東区陸家嘴は、アジアの金融センターを目指して再開発中の地区である。
このビル、薄く尖った刃のようにも見えるため、「日本刀だろう」と言われたり、最上部に四角い空間が取ってあるが、これは元々計画では円形だったのを日の丸をイメージしたんだろう、と言われて、反日連中に批判された。結局丸い形は四角に変更されたわけだが、日本の会社が建設すると言うだけで、実にくだらないいちゃもん的批判をする中国人もどうかしている(壁に丸い穴を開けるのは元々中国の建築によく見られる意匠なのに)。
高さ世界一、というのは、実はややこしい。
現在世界で一番高いビルは、台湾の台北にある台北101(屋上448m、全高509.2m・101階建て)だが、実はアンテナを含めれば、アメリカシカゴのシアーズタワー(屋上442m、全高529m)がずーっと世界一のままだ。
しかし未完成ながら、すでにUAEドバイに建設中のブルジュ・ドバイは現在675mを突破しているので、世界一としてはもうダントツ抜かれているのである。
ブルジュ・ドバイは818mくらいになる予定で、現時点では世界一になるのは確実の超超高層ビルである。
ところが、これをも上回る計画があるのだ。それも実際に建設予定のもので(空想的な計画なら、バブル期の日本にもとんでもない計画はたくさんあった)。
クウェートでは、マディナ・アル・ハリールという都市を建設中だが、ここのシンボルタワーが、ブルジュ・ムバラク・アルカビルという高さ1001m(250階建て)もあるビルだ。ついにkmの世界に入ってしまった。
ブルジュ・ドバイと同じアラブ首長国連邦にも、アル・ブルジュという超超高層ビルの計画があり、屋上が1250m、塔までの高さ1400mと言うビルになる予定(228階建てらしい)。すでに建設会社の選定が始まっている。
だがこれよりも上がある。サウジアラビアの王族が聖地メッカの表玄関都市ジッダで計画しているのが、高さ1609mの超超高層ビルである。ここまで来るとややネタ先行な状況だが、膨大なオイルマネーを持つ王族や資本家達にはさほど難しくはないだろう。
上海ヒルズごときで自慢している森ビルが、なんだかちっちゃく感じてしまう。
ただ、これらめちゃくちゃな計画。
まさにめちゃくちゃである。
まもなく完成予定のブルジュ・ドバイですら、実は投機マネー目当ての要素が非常に高く、早くも完成していないフロアの売り買いが始まっている(当然、階によっては売れないフロアも出てくるだろう)。しかも、投資している投資家の中には、いずれこういう値動きは破綻するだろう、と考えていて、売り時を見極めようとしているものも多いのだ。
実際、ドバイの様々な不動産は、投機マネーのために、人の住んでいないところも多く、生活感のない都市と化している。そもそもドバイどころか、UAE全体の人口よりも多い人間を入れるキャパシティがあるため、都市計画としては非現実的なのである。
中東各地の、ドバイや、アブダビ、クウェート、リヤド、ジッダなどで進む巨大プロジェクトは、いずれもオイルマネーから生み出されたモノだ。
日本のゼネコン、ディベロッパーは、これら大プロジェクトに関わろうと躍起になっている。不況から脱しきれない上に、大きな計画がなかなか出せない日本では儲けはあまりない。いまや日本の企業は、外国の巨大プロジェクトに参入することで生き残りを図っている状況だ。だがライバルも多い。ブルジュ・ドバイは韓国のサムスンが担当した。日本の技術はもはや世界トップクラスとは言いがたい評価なのだ。
しかも、投機的石油マネーだから、将来どこまで維持されるだろうか。石油枯渇とはまだいかないだろうが、石油が投機対象となるというリスクの高さは今年、世界中の人間、国家が思い知ったため、石油に依存しないエネルギー政策の転換も進められている。また、高騰がひどくなれば、投機に対する規制も出てくるだろう。安定した利益源とは言えない。さらに紛争地帯に近いため、莫大な利益格差がテロや戦争を招き、石油産出に障害を引き起こすことも考えられる。
ところが、オイルマネーで潤う国々は、将来を見越して技術や設備、農業、金などには投資せず、主に不動産売買投機に走り、贅沢を極めた暮らしをしている。そういうものはいずれ破綻し、失われる財産だ。しかも贅沢にどっぷり浸かり、後継者の育成もしないから、次世代の国家・企業の経営者がここまでやれるか疑問である。
プロジェクトそのものも、資材の高騰が拍車をかけているため、かかる費用は増大する一方。建設労働者の奪い合いも起こっているため、人件費も高騰している。受注を確保しておきたいディベロッパーは、それらの負担を計画主には上乗せ出来ない。最初は儲けが大きいと参加した計画が、どんどん負担になっていくこともある。
負担が重くなったところで、オイルマネーが破綻し、プロジェクトが中止になり、莫大な負債だけ抱えて終わる、と言うこともある。プロジェクトが大きいだけにリスクも大きいのだ。会社倒産、崩壊から、あおりを受けて日本の銀行もダメージを受け、その余波は社会にさらなる不況を引き起こす恐れもある。
世界中の新しもの好き、建物好きにとって、非常に魅力的なプロジェクトだらけだが、将来を考えると、懸念や不安も多く存在するのが複雑なところである。

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