急激な経済状況の悪化で、メーカーを中心に数万人の派遣労働者が職を失っている。
そのうち、地方にある工場で働いている人は、寮や社宅に住んでいる人が多いわけだけど、そのほとんどが住むところを追い出されることになった。この年末に、住むところすらない人が一気に溢れ始めたことになる。
工場の多くは地方にあるため、給与も止まり、住むところもなくなると、新しい職も探せず、故郷に帰ることも出来ず、各地でホームレスが急増することになる。
ハローワークでも住宅の斡旋を始めているが、給与もなくなった段階ではアパートを借りることも出来ない。
こんな状況の中、救済に向けた動きが出始めた。
まず、工場のある自治体が、臨時期間職員の雇用を始めた。数千人単位の失業者を一気に雇うことは無理だが、交代制で公共工事などに雇うことにしたのである。その間に職を探してもらおうというわけだ。路上に放り出されるよりはいい。
公営住宅を割安の価格で貸し出すところも出始めた。古くて空き部屋のあるところなどを5000円程度の家賃で貸すなどして、職探しに必要な「住所」を用意するのだ。
また、民間企業でも、救済に乗り出したところがある。
複数のタクシー会社が運転手の雇用を始めたほか、居酒屋チェーン店なども店舗の従業員を正社員として雇用する動きを見せている。
国政は紛糾し、対策も後手後手に回っている。ついに日銀がCP買い取りという最終手段にまで乗り出したが、リスクも大きい。
一方、大企業は経営者や役員が莫大な給与を得たまま、組合は雇用よりも給与のベースアップ、と、派遣労働者などに非常に冷淡。
その一方で、労働者救済に乗り出す企業も出てくる。もちろん、これがチャンスと考えて雇用する理由もある。だが、何もかも後ろ向きで、労働者切りを簡単にやる企業に比べればマシだろう。
人材はもっとも貴重だ。人権は言うまでもないことだけど、企業にとって様々なノウハウを開発するのは非常にコストがかかる。それを維持するためには、社員を残しておかなければならない。
正社員さえ残しておけばいい、と言う理由で期間労働者をクビにする企業もあるが、そもそも正社員ではなく、期間労働者として大量雇用した時点ですでに人材より金優先になっている。期間労働者をクビにしたために、現場が混乱する事態も起きている。それで一から正社員を雇い直して、教育するため、さらにコストがかかるという呆れた話もある。
人件費は企業にとってもっとも大きな支出だけど、同時に人材があってはじめて企業はやっていける。安易な首切りで二度と立ち上がれなくなる前に、他に手はないのかをもっと考えなければならないと思う。
あらゆる事が雪崩のごとく落ちている世の中だけど、それだけボーダーも下がってきた。企業の中には、これが非常なチャンスだと考えているところも、案外多いのではなかろうか。

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