北朝鮮が核実験を行った問題について、
国連の安全保障理事会は、あらたな制裁決議について話し合っている。
従来、北朝鮮が何かしでかした場合、安全保障理事会の常任理事国5カ国は、おおむね、欧米派と中ロ派に分かれた。
欧米派が制裁を主張するのに対し、中ロ派は話し合いで解決すべきだと主張してこれに反対してきた。
大体は中ロ派に譲歩して、議長声明などの軽い非難決議でまとまることが多かった。
地理的に隣接し、経済的関係もあり、何か有事が起こった際に影響を受けやすく、できれば影響力を及ぼしておきたい、という思惑があるからだろう。
ところが、北朝鮮はそれをいいことに、やりたい放題である。
しかも、基本、彼らがメッセージを送っているのはアメリカにだけで、中露は、経済的に関係がある以外は、特に冷戦崩壊後、とりあえずやばくなったら味方になるだろう、程度の思惑しかないような態度になっている。
上記のことがあるから、特に中国はこれまで抑えてきた。
北朝鮮を立てるような言動も行い、6カ国協議の議長として調整にも当たってきた。
先日のテポドンについても、
人工衛星であるという北朝鮮の主張を入れて、安全保障理事会でも軽い方向に行くよう主張してきたのである。
ところが、それらの中国の「努力」をまったく無視するかのように、北朝鮮は今回核実験を行った。直前に通報はしたようだが、それも1時間くらい前だったといわれている。
北朝鮮が視線を向けているのは、ただアメリカのみ。内外に敵対国と喧伝しつつも、
アメリカの軍事力頼みなのだ。アメリカの傘の元に入れば、安寧にやっていけるし、経済的にも都合がいい。いくらでもアメリカの工場になりましょう、的な思惑が見える。
国内での敵国アメリカという喧伝だって、その敵国を屈服させて和解に応じさせた、という理屈にすれば、国内的には問題ない。
中国がいくらかばおうが、最終的にはアメリカ、というのが北朝鮮の理屈だ。
だから、アメリカ向けに「届きそうな」ミサイルを発射してみせ、「攻撃もできるんだぞ」と核実験を行って見せる。
いまや、日本や韓国なんて、アメリカの傘下にいる、なんかそこら辺の連中、程度だろう。
アメリカさえ味方につければ、枝葉末節の日韓などおまけでくっついてくるようなつもりでいる。
だから核実験をやった。後ろにいる大国のことなど、ほとんど考えてもいなかったのではないか。
またいつものとおり、ちょっと立ててやれば、中露はかばってくれる程度に思っていた。
だが……。
ロシアは、早々と「激怒」してみせた。
日米案に歩み寄ることを示唆しており、軍事制裁も含んだ国連憲章第7章案での決議も視野に入れている日米に対し、少なくとも、「追加制裁は必要」というところまでは一致している。
問題は中国だ。
中国は今回も、まだ制裁に賛成はしていない。
しかし、異様なほど不気味な沈黙を保っている。
当初は、落ち着いて行動すべきだ、といったいつもの発言もあったが、ロシアの動きが強硬になりつつあるため、微妙な立場に追い込まれてきている。
そもそも、気分的には、完全に「ブチ切れている」という話もある。
ここまで、コケにされ、国際的に恥をかかされ、大国としての威信を傷つけられているのだから、最近プライドの高くなった中国としては、頭にきているだろう。
しかも今回は核実験である。
テポドンのときのような「民生」というごまかしも利かない。
アメリカに目を向けている北朝鮮の態度も不愉快だろう。地政学的にも、宗主国を自認する立場からも。中国国内でもおおっぴらに北朝鮮問題が取りざたされるようになっている。中国政府としてはいろいろ都合が悪い状況だ。
今頃、外交的にいろいろ、こっそりと圧力を加えているところだろうが、
中国にとって相当条件のいい何かを北朝鮮が示さない限り、中国としては、ほかの国々との関係と天秤にかけざるを得ない。
中途半端なことをすると、またいつものパターンで、北朝鮮の思惑通りになってしまう。
最低でも、経済制裁を持ち出して強い態度に出て6カ国協議復活を図るか、
最悪、他の国に同調しない代わりに、独自に北朝鮮へ何かしらの行動を起こすこともある。政変を引き起こしたり、何かの陰謀めいたきっかけを自演して軍事侵攻を図ったり。圧力で金正日を引退させて、第三代へ譲位させる、と言う手段もあるだろう。
なんにせよ、このまま北朝鮮を許してしまい、核開発阻止、と言う6カ国協議も破綻してしまえば、中国の威信は失われる。中国だけが大損する。
だから何か方法を模索しているだろう。
北朝鮮も中国を恐れているから、アメリカの気をひこうとしているわけだろうが、それがますます悪循環になりつつある。
今回、中国がいつものパターンになったとしても、これまでのように、軍事的示威行動で、相手を譲歩させて食糧だのエネルギーだのを手に入れ、足りなくなるとまた軍事的示威行動に出る、と言うくり返しは、そろそろ限界に達している。北朝鮮の国力や食糧も限界だし、米ロ中の我慢も限界だ。
どういうものであれ、なんらかの結果は近い内に出ると思われる。
それにしても、辺境(かつ偏狭)の小独裁国家に世界の主要大国が振り回されているというのは、暴走しない成熟した社会になってきたと見るべきなのか、単に大国がいずれも弱くなっただけなのか。どっちなのだろう。

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