前原国土交通大臣は、八ッ場ダムの建設現場を視察し、関係者との会談に臨んだ。
しかし、地元住民は、中止を主張する大臣には会えないとして、意見交換会には代表者だけを送ることにした。
もともと住民はダム建設には反対だったが、国や1都5県の要請に基づき、移転策などを条件に泣く泣く承認した。
平成5年に建設が始まり、3200億円以上がすでに使われて、新たな宅地、温泉街、神社や墓地、道路や線路、駅などの移設も進んでおり、ダム湖を横断する2つの巨大な橋も一つはほぼ完成しており、もう一つも橋脚の工事が進んでいる。
迂回水路用トンネルも完成し、造られていないのは、ダム本体だ。
そして、今になって、中止という話になったのである。
民主党は、無駄な公共工事のシンボルとして、このダムの建設を批判してきた。
だが、実際に現地の状況を視察したのは去年からで、具体的な状況を把握していたというわけでもないらしい。
地元の意見を聞いたわけでもない。
またダム建設着工時には、現鳩山総理や、前原大臣も、新党さきがけの一員として与党であった。地元住民からすれば、今さら何を、と言うところであろう。
確かに、このダムには、疑問もいっぱいある。
事業費は当初予定の計画よりどんどん増えている。ほぼ倍に達している。
計画自体も古く、現状の水事情需要と合致しているのかどうかも怪しい。
著名な渓谷であり、自然豊かな場所が消失するのは確実。
ただ、民主党は、実情を理解した上での中止であったとは到底思えない。中止に伴う地元への代替案もないし、出資している1都5県に対する返金についても、明確ではない。
ここで中止した場合、美しい自然は維持されるが、一方、建設費用以上の莫大なお金が発生する上に、すでに出来上がっている設備は、使い物にならなくなり(無駄になり)、地元の生活環境は崩壊してしまう。
だから推進せよ、と言うわけではない。
が、単なる批判のシンボルとしての問題ではなかった、と言うのが、政権を取ってから判明するようでは、正直、民主党政権の信用度に関わる。
こういう展開は、他の公約にも見られる。
地球温暖化防止の削減案25%も、理想論としては結構だが、具体的にどうやっていくのかの具体案がない。
高速道路無料化も、都合のいい話はするが、それによる負担や、経済への悪影響、温暖化ガスの増加などの問題には、具体策がない。
年金問題の解決案も、少子化対策も、インド洋派遣に代わる貢献案も、いずれも具体策に乏しい。
理想は掲げるべきだけど、具体的に何かを為してはじめて理想は意味を持つ。
今の段階は、机上の空論にすらなってない。
これまでの自民党政権での惰性の様に続いてきた無駄には批判も多い。
だから、選挙で支持を得て、政権を取った以上、可能な限りできることはやって貰わねばならないけど、現実に即した対応も必要だ。
本当に、こんな調子で大丈夫なんだろうか。

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