新宿落合で建設中だったマンションについて、最高裁は、新宿区の建築確認が違法だったと認定し、住民の訴えを認めた。
これにより、7割近くできているこのマンションは解体されることになった。
このマンションの建設地は、ちょうど台地状になっている地形上から開発されず、昔の邸宅などとともに狸の森と呼ばれる自然が残されている場所で、地域住民が反対した曰く付きの物件だ。
建築中の物件で、異例の違法判決が最高裁で下されたことから、当然、区も業者も解体するしかない。
区は判決に従う旨を示している。
業者は区の建築確認に従ったので、区に損害賠償を請求することも考えている、と声明した。
ただ。
こういう不動産会社、ディベロッパーは、無節操にマンション建築を行う例があとを絶たない。
マンションは、完成後に人が住むことを前提にして作られる高額商品である。
マンションの中には、キッチンや換気などのシステムを組み込んだり、防犯対応したり、ネット対応にしたりして価値を上げているところもある。
しかし、戸建て物件と比べ、マンションの不動産価値は劣る。
土地の価値がないし、ベランダなども実は共有物扱いだし、立体駐車場などは10年も経てば劣化し補修費用がかかる。建物自体も30年で大規模修繕は必須だ。積み立てしても足りないのが普通。地震で破損したら、戸建ては解体再建も修繕も売却も対応の幅があるが、マンションは建物自体の規模が大きいため、修繕だけでも莫大なお金がかかる。
ただでさえ価値観で見れば厳しい物件なのに、マンションにはおかしな建て方をする例が多い。建築後の日照権や景観でトラブることはしょっちゅう。立体駐車場の劣化問題など、不動産屋が事前に言わないことも多い。
まして、地域住民の反対や、裁判沙汰になりかねないマンションを建設することは、入居に影響するのが目に見えており、予想が付く問題を抱えて建設すること自体、ビジネスとしてはすでに失敗していると言える。
区の建築確認が問われたと言っても、そもそもこのマンションを造ろうとした業者の経営がマズイのである。
マンションは入居率が悪い。
分譲から賃貸へ変更になる例も多く、1000万円以上も値下げする物件はいくらでもある。
それでも入らないのか、今度は個人宅から職場にまで手当たり次第に電話を掛け、断ろうとすると無理矢理電話を続けたり、何度も掛け直したり、脅迫めいた言動をする例もある。そんなことをして反感を買って、営業が成り立つわけがないのはバカでもわかることなのに、そこまでやるのだから、売れもしないマンションを造ることくらい不動産業界では普通のことなのだろう。あとで売却しようとしたら不動産屋から金を請求されたりするトラブルも多い。分割払いが滞るとヤクザまがいが出てきて追い出したりすると言う。バブル時代の犯罪すれすれの不動産業と中身は変わってないのだ。
不動産不況と簡単にくくられるが、不況以前にそもそも不動産業態に問題があるのであって、一部のまともな企業を残して淘汰されていくだろう。業界の不況が良くなるのはそこからじゃないか。

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