鳩山首相は、全国知事会を招集開催し、普天間問題に関する要請を行うことにした。普天間基地の移設先は、辺野古とする代わりに、訓練を本土でも行えるようにして、負担を軽減させようという意図の元に、知事らと交渉したいという思惑のようだ。
あるいは、パフォーマンスで、やることやってますよ、と見せているだけなのかも知れない。
自衛隊基地や飛行場を持つ18名の知事は欠席しており、本音として、自分のところに基地や訓練場を持ってこられることを警戒していると見られる。東国原宮崎県知事は口蹄疫の対応でそれどころではないから欠席しているが、宮崎県には米軍移転先の有力候補でもあった航空自衛隊新田原基地があることも理由だろう。ちなみに新田原基地は、口蹄疫の埋設処分地の一つでもある。
移設に前向きなのは、大阪の橋元府知事。関西空港に米軍の訓練施設を移すことに積極的で、沖縄の負担軽減を理由に挙げている。これは彼の考えで、それを大阪府民がどう受け止めているかはわからない。それに伊丹廃止を主張していることや、内際共用空港であることを考えると、関空移転は非現実的だ。
そもそも米軍の基地、あるいは訓練場の移設については、政府や大阪府知事がいくら希望や案を出そうとしても、基本的には、米軍が決定することである。それじゃまるで治外法権だ、情けない、米国追従だ、という意見や批判は出るわけだけども、安全保障を米軍に任せている以上、米軍が軍事的方針・計画を決めるのは当然の話で、米軍が運用や訓練をしやすい場所、設備などがある場所が、基地や訓練場になってしまう。米国は幕末の頃から、沖縄に目を付けており、それはアジア各国へ出動するのに都合が良いからだ。
目を付けられた沖縄こそいい迷惑な話だけど、地政学上、沖縄が有力候補にならざるを得ない。
現状の国際情勢が維持される場合で、それを避けるためには、大きく二つしかない。
ひとつは、日本の安全保障を見直し、日本軍を増強して、米国とは相互軍事同盟を結ぶ代わりに在日米軍を縮小させる。軍事費が増大し、近隣諸国の反発を買うのは言うまでもないが。
もうひとつは、超長距離作戦可能な軍事兵器、システムが開発されることだ。米国も軍事負担は重しになっており、現実に無人の長距離高速兵器の開発を進めている。これによって、沖縄の重要性を減らしていくと言うことで、基地を縮小する。すぐに現実になる方法ではない。
日本が米国と手を切って別の勢力とつながるとか、中立になる、と言うことで米軍を撤退させるという考え方もあるだろうが、社会的経済的にグローバル化した世界では非現実的だ。
周辺国が完全に平和国家となって、それで必要なくなる、と言うのもほぼあり得ない。
ほかに、メガフロートで沖縄陸上部から引き離した基地を作るといった方法になるが、課題もある。技術上の問題、安全の問題、建設受託業界、漁業補償の問題が大きい。
大規模な戦争や大規模な天変地異によって情勢が変わると言うこともあるが、それを期待するのはロクでもない。
なお、至極単純化されているが、基地問題は複雑だ。負担というのは色々あるし、弊害も違う。
騒音問題、米兵のモラルの問題、航空機・車両の事故の危険性、爆発事故などの危険性、交通の遮断、市街地発展の阻害、流れ弾の問題、戦争での直接攻撃やテロに遭う危険性、といったところが負担になるのではないか。
地元の負担軽減を出すならば、まずそれぞれを具体的にどう対応出来るか、その案を出すべきじゃないか。
逆に、基地に土地を持つ地主もいるし、基地に依存した経済、雇用もある。基地跡地の開発も考えねばならず、それらすべてを検討する案も必要だろう。基地はなくなったが、跡地は草ぼうぼう、失業者が増大し、商店街はシャッター化、というのでは困る。
また産業廃棄物の処理場とか、放射性廃棄物の処理場なんかになってはなんのための返還か、と言うことになるだろう(そう言う施設も重要ではあるけど)。
また、同じ沖縄でも、基地が集中している自治体とそうでない自治体があるし、本土でも神奈川県のように米軍基地が集中している県もあり、都市レベルでは米軍基地に依存しているところもある。
海兵隊を受け入れている山口県岩国基地などもあるため、単純に沖縄vs本土という問題でもない。特に今回は、本土は負担していないという論調の中で、岩国基地は全くないがしろにされてしまって気の毒である。あの基地にはさらに厚木などから部隊の移転の話が出ており、地元では大問題になっているのだが。
「我々もいままで沖縄のことを考えてなかった」とわざとらしく反省の弁を口にするジャーナリストや自称知識人もいるが、単にいい子ぶろうとしているようにしか見えない。
社民党は辺野古移設に反対しているが、彼らは一時沖縄県内移設も検討していた。下地島や伊江島に言及したこともあり、内部批判が強く撤回している。政権と歩調を合わさない一方で連立を離脱しないのは、権力は維持しておきたいが、批判はかわして、選挙への悪影響を避けたい思惑があるのだろう。辺野古移設にこだわった国民新党が社民党をかばうのも、同様の思惑があるからに違いない。
民主党の一連の失政をかばい、責任転嫁を図って他の人々を攻撃する人たちも結構いる。政治改革を期待して民主党を支持した、あるいは反自民だった人々にとって、今さら裏切られたと思いたくない心理はわからないでもない。過去にも理想を夢見て左翼運動に参加した挙げ句、内部崩壊して内ゲバによる殺し合いや、荒唐無稽な陰謀説に取り憑かれた人たちは大勢いる。
政治は単純な白と黒のような話ではない。理想を掲げる政治家ほど、裏側はその反動で綺麗事じゃなく、ドロドロとしたものが渦巻いている。
一番重要なのは、より具体的で実現可能な案があるかどうか、そして間違いをきちんと訂正出来る器量では無かろうか。

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