東欧のコソボがセルビアからの独立を宣言をしたことについて、国際司法裁判所は、国際法上は合法という判断を下した。
コソボでは政府関係者や市民が歓迎している。
一方、セルビアは反発。
セルビアをはじめ多くの国は、コソボの独立を承認していないが、日本やアメリカ、西欧諸国など69カ国が承認している。
実は、セルビア国は、現在のコソボ付近に発祥したとされている。ネマニッチ王朝セルビア王国を建国したステファン1世は、コソボとセルビア南部を領土として国家を統一した。そしてセルビア王国がオスマン帝国に敗れ、国家を失ったのもコソボでの戦いの時。
そのため、セルビアにとってコソボは歴史的に関係が深く、自国と不可分と考えているのだ。
セルビア王国が失われたのち、この一帯にアルバニア人が移住してきた。これが現在のコソボ人の先祖になる。住民のほとんどはこのアルバニア系になったため、20世紀初頭にアルバニア人はアルバニア人の住む地域をひとまとめにして国家を興す大アルバニア主義に基づいて独立運動を起こすが失敗し、コソボはセルビアに併合された。
そのため、コソボ人にとっては、自分たちは独立した民族であり、セルビアから独立する正当な理由があると考える。
ユーゴスラビア崩壊以降の戦乱で、コソボでも戦争になった。
一連のセルビアのコソボ人に対する武力攻撃は国際的非難を浴びた。一方、コソボ側のコソボ解放軍も暴力・非人道行為を繰り返している。
どちらも問題が多い。
しかし国際的に承認するかしないかで分かれているのは、コソボの問題よりも、むしろそれぞれの国の事情がある。
多くの場合、国内に似たような問題を抱えているため、下手にコソボを承認すると同じような独立運動を起こされかねない。コソボはいいのにそれ以外はダメなのか、と言うことになる。反対している国のほとんどが、国内問題を抱えている新興国や途上国なのはそのためだ。
西欧諸国の大半が独立支持なのに、スペインが承認していないのは、国内に分離独立運動が多数あるためだ。スペインはサッカーW杯で優勝したが、その際に、国内の各地域で「スペイン国旗」を掲げて祝ったこと自体がニュースになるほど、各地域で独立の気運が強い国である。
同じような国内に独立問題を抱えているイギリスやトルコはコソボを承認しているが、これは国内の独立問題よりも、コソボを承認する方が国際的立場で重要と考えたからだろう。そのため、直接利害を受けるコソボ周辺の国でも承認するところもでている。
国際司法裁判所の判断を受けて、承認する国はさらに増えるのではないか。
6月に総選挙が行われたベルギーでは、北部の分離独立を主張する政党が躍進して大きな問題となった。ベルギーではオランダ語圏の北部と、フランス語圏の南部で真っ二つに分かれる(南部はドイツ語圏もほんのちょっとある)。これまでは、連邦制を組んで、対立解消に努めていた。一方で言語や文化を統一するようなことはしていない。
総選挙の結果を受けてすぐに独立するというわけではないが、根深いものがあるのをあらためて感じさせる結果となった。
日本から見ると、多くの国は一国一民族のように感じられるが、ほとんどの国は複雑な民族構造になっており、文化や宗教も多様で、いろんな問題を抱えている。
半島で分裂している朝鮮民族も、それゆえにそれぞれの国の内部では統一されているように見えるが、韓国ですら地域的には大きく分かれていて(古代の高句麗、新羅、百済にまでさかのぼれる地域区分)、政権の出自によって地域差別政策を行ってきた。
日本でも、非常に少数ではあるが、民主党の某議員のように、沖縄独立を主張している人もいる。歴史的には琉球が独立していたことと、独自の文化があること、戦後の歴史の中で沖縄の負担が非常に重いためだ。一方で、言語と民族的には日本と琉球はほとんど同じと考えられている。
立場によって、主張は変わるので、完全に客観的な判断というのはない。
ある程度の妥協と線引きが国境を定めているのが現在の地球世界と言うことになる。コソボやベルギーの問題はその象徴的出来事だ。

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