オサマ・ビンラディンは、案外あっけなく、殺された。
パキスタンの首都郊外の都市に家族らと潜伏していたが、米軍の特殊部隊がヘリ2機で急襲し、米国によると、抵抗したので、殺害したと発表している。またこの際に、ビンラディンの妻らしき女性も殺害された。この女性はビンラディンの盾になったそうだが、本人の意志か、強制されたのかは不明。
ビンラディンの遺体はDNA採取の後、空母カールビンソンから、海へ水葬にされたという。日本のメディアは遺体を投棄したという風に報じているが、米国は、イスラム教の慣習で24時間以内に埋葬しなければならないが、埋葬を受け入れる国がなかったから、としている。
潜伏場所がアフガニスタンとの国境山岳地帯の自治化している少数部族のエリアではなく、都市部だったことを驚きのように指摘している専門家もいるが、木を隠すには森の中、という理屈で、人口が多く、利便性が良く、支援者と接触が容易な都市部に隠れたのだろう。
ただ、広大な敷地を塀で囲うなど明らかに不審で、去年の8月ころに、アルカイダの連絡員を追跡していたCIAの情報網にひっかったとも言う。
情報戦による勝ちというところか。
大多数のイスラム教徒にとっては、やれやれ、というところではないか。
米国・イスラエル・ヨーロッパ諸国に反感を持っていても、正直、イスラム教徒を自爆させるという暴力で自己主張を通そうというテログループは、イスラム教徒にとっても迷惑な話だ。
また、チュニジア、エジプトと、民衆による革命で政権が転覆していることから、アルカイダの暴力の価値が意味をなさなくなったのも事実だ。
今回のやり方を批判する意見は出ても、大衆の反応はそのくらいではないか。
といって、アルカイダが壊滅したわけじゃないし、少数の集団や個人のテロリストが反米テロを行う可能性は高い。むしろ把握しにくくなってくる。一方で、そういう少数グループでは、9・11のような大規模テロを繰り返すほどの経済力はないので、メンバーによるパキスタンやアフガニスタンでの自爆テロを行うくらいか。自爆用の兵士を手に入れるために、戦災地域や貧困地区で若者を洗脳したり、子供を誘拐して仕立てるようなこともあるだろう。
米軍は一応の目的を達したことになるので、アフガニスタン、パキスタンから順次撤兵すると思われるが、めちゃくちゃになった現地の治安悪化は免れない。この点、アメリカの責任は重い。民主化と文民政権の樹立のために国際社会の支援が必要になる。なにより、紛争やテロは貧困を背景にしているのだから、同地域の経済活性化を考えるのが、一番の方法だ。
具体的には、市場のある農産物の生産、導入コストが低く欧米市場向けにできる衣服といった軽工業生産工場の普及といったところだろうか。そのために、地雷の除去、道路や発送電施設の復旧、学校教育の資金援助などが重要だと思う。

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