G8首脳会議では、各国が原子力の推進を口にした。
原発廃止へ方針を変更したドイツのメルケル首相も、原子力を全面的に否定はせず、安全性の確認に言及した。
そうせざるをえないのは、電力の原子力への依存度が高いこと。
原子力以外に大規模な発電を可能にする方法がないこと。
産業を衰退させるわけにはいかないことなどがある。
そもそも、反原発を主張している国も、実は、外国から電力を買っており、多くは原発で発電した電力である。自分の国だけ、原発反対を主張して、他国の原発に依存しているわけだから、反原発国が全面的に正しいとは言い切れない。ヨーロッパの反原発国もそういう国だ。日本でも大都市で電気を使いながら原発反対を主張する市民は多いが、彼らの電力の多くは、周辺県にある原発で作られている。
それだけ原発の発電量が大きいのである。
自然エネルギーもかき集めれば、原発分のエネルギーを生み出せるわけで、それは自然エネルギー推進派が主張するところだが、ここにはコスト面を無視した部分がある。コストを度外視しても、というのは理想論で、実際にはコストも重視しなければ、普及も、継続維持するのも難しい。
自然エネルギーの割合を20%にする、1000万戸の住宅に太陽光発電パネルを設置する、と菅首相は表明したが、表明するのは簡単。
極端な話、予算を組んで国が発電所をどんどん建設し、太陽光パネルを国がどんどん各家庭に設置すれば、生産期間分だけの時間で達成できる。簡単な話だ。経済や雇用にも良い効果があるだろう。しかしその予算をどう確保するのか、という点に国が全く言及しない。それでは単に綺麗事を言っただけになってしまう。
地デジすら各家庭でやってくれ、でも、期限が来たらアナログはやめるから、という方針でいる国に、自然エネルギーの普及をどこまで出来るのやら。
いますべきなのは、
今回の事故は人間のミスが100%なのだから、ちゃんとした原子力の人材を確保すること。官僚主義や、政治におもねる学者を排除し、本当の専門家を加えること。
責任を持てる人間や制度を確立すること。嘘や誤魔化しをせず、責任のなすり合いをしたり、危険な作業を下請けや臨時雇用の労働者に押し付けるようなことをせず、また作業員の安全を確立すること。
原子力のどこに問題があるのかをきちんと明らかにすること。ただ騒ぐだけではなく、核分裂の仕組みや施設の構造、放射線のなにが身体に影響するのか、廃棄物の処理方法にはどういうものがあるのか、これらについてきちんと理解すること。
自然エネルギーの低コスト高効率な仕組みを開発し、そのために政府が支援すること。
自然エネルギーでも引き起こされる環境破壊をどう少なくするか研究すること。自然エネルギーを盲目的に評価せず、問題点もきちんと明らかにすること。
原子力以外の発電について具体的な計画をたてること。どういう種類の発電方法で、どれくらいの発電量のある施設を、いつまでに、どれくらい、どこに建設し、予算はどれくらいかかり、その財源をどうするかまで言及すること。曖昧な構想ではなく、具体的な数値で出すこと。
これらをした上で、その条件のもとに、原子力を推進するか廃止するかを決めるのが筋というものだ。今の段階で、根拠もない話をするものではない。

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