野田首相は、国連での演説で、原子力について、安全性を向上させながら今後も推進していくことを表明した。海外への輸出も継続するという。
これは廃止の方へ向かうとした菅前首相とは180度方針変更となる。
経済的な理由が大きいのではないか。原子力産業は日本の有力な輸出産業であり(だから事故は大きな問題なのだが)、日本の電力事情は日本経済を支える重要な要素なので、電力確保は避けて通れない。反原発は、脱原発派は騒ぐばかりで、このあたりの具体性がない。すぐに廃止するのも技術上困難だ。
首相の表明は、概ね各国の評価を得ている。
各国にとっても電力確保は重要で、地球温暖化のことからも、原子力は注目されている。
原子力に根本的な変えようのない欠陥があるのならばともかく、今回の事故は運用する人間のミスであるため、変えようがあると考えられているところも、多くの国は導入の方針を変える予定がない。金があり、原子力国から電力を購入しているドイツなどのような「脱原発国」
のやり方は、世界のほとんどの国では通用しない。
また、失敗から学ぶ姿勢、というのは、日本ではあまり評価されないが、外国では評価するのが普通。野田首相の表明は、これらの点で評価されたのだろう。
問題は、言うだけなら簡単ということ。
長年ごまかし体質でやってきた原子力の安全性の向上は、学者、技術者、電力会社、官僚らの抵抗にあうことも予想される。
原子力関連の情報を開示し、ごまかしがないかのチェック機構をネットで情報化するべきだ。
また、今回のように、何かあった時、電力供給全体へ大きな影響があるから、原子力以外の太陽光、風力、地熱、天然ガス火力なども推進し、電力規制を緩和する必要がある。核融合など原子力でも方法がまるっきり異なる技術の開発も進めるべきだろう。
今回の事故は、むしろエネルギーについて考える機会をもたらした。
ギャーギャー騒いで気持ちよくなっている一部の人と、多くの真剣に考えている人にわかれたと思うが、対策を具体的に進められる指導者も必要となっている。
与党も野党も、そこまで考えている人がいるのか、そこが重要かもしれない。

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