TPP論議が盛り上がってきた。国内は真っ二つ。交渉参加に賛成か反対か。
果たして、野田政権はどういう判断をくだすのか。
基本的にTPPに加盟することによるメリットとデメリットがある。
メリットとしては、
・関税が撤廃されることで、競争力が高まる。
・高度な技術がある、あるいは高い品質のものが作れる企業にとっては、有利になる。
・海外へ農産品も売ることができる。
・海外の安い製品が入るので消費者は得する。
・TPPの貿易の大部分はアメリカであるため、アメリカでの市場進出に強みがある。
・欧州の企業に対抗しやすい。
・二国間FTAをアメリカと結んだ韓国と同じ土壌に立てる。
デメリットとしては、
・海外の安い農産物が入ってくるため、小規模生産農家の多い国内の農業が大きなダメージを受ける。
・工業、農業以外にも、サービス業や医療で海外の攻勢が強まる。
・競争に敗れた分野の失業率が高まり、国内経済が冷え込む。
・TPPの貿易の大部分はアメリカであるため、対米進出が進んでいる分野でのメリットはそれほど大きくはならない。
・関税よりも為替の影響が大きすぎるため、メリットを吸収してしまう。
・海外生産のシフトが進んでいるため、それほどメリットがない。
・TPP加盟予定国はすでに話し合いを終えており、日本の条件交渉が困難。
・TPPは農業国が大きいシェアを占めるため、日本はカモにされる。
・日本の技術力が低下している中で、関税の自由化でも韓国や中国の企業に勝てるかわからない。
・TPPに参加していない韓国や中国との競争に意味があるかわからない。あるいは両国の出方が問題になる。
・日本が技術力で圧倒的ではなくなったため、農業だけでなく、工業も海外の製品が国内へ流れ込み、企業の経営環境は悪化する。
・原発事故で放射性物質汚染が懸念されているため、日本農産品が海外で売れるか不明。
・食糧自給率が低下する(ただし自給率は個々の食品によって大きく異なる)。
・TPP加盟後の貿易の変化後に、貿易体制が戦争や大規模自然災害によって中断した場合の悪影響が更に大きくなる。
第三の可能性としては、
・企業の海外市場への売り込みが思ったほどうまく行かず、逆に海外農産品の日本での販路拡大も失敗し、結局、期待や不安ほどには大きな変化はない。
現時点では、デメリットのほうが大きいかもしれない。
少なくとも、農業への補償策や、経営改善方策を行なってからだろうし、また現在の日本企業の人的資源を無視したり、目先の利益に走ったり、技術を捨てたりする、劣化していく経営発想や状況から見ても、甘い期待を持ちすぎているような所が感じられる。
本来なら、韓国がやっているような二国間協議で条件交渉をすすめるのが、今のところではもっともやりやすかったと思うが、農業保護のこともあって、FTAすら協議しようとしなかったツケを払う羽目になったといえる。いまさらTPPに入っても、条件交渉では不利だろう。前原大臣が言うように、途中で辞める、というのは不可能だ。それこそ、外交的信頼を失う。
また、二国間協議方式でEUやアメリカとFTAを結んだ韓国ですら、農業の停滞や物価の高騰を招いて反対する国民の動きもある。
TPPで利益を上げることを期待するなら、まず、技術力拡大や人材の確保を進めてからの話だ。今の中国や韓国企業と戦うなら、関税をなくすことだけでは無理。
また、法人税の引き下げや、為替の対応もすぐにやるべきだと思う。
また、グローバル化が進んだ現在、逆にローカル化やブロック化への動きも出始めている。
将来、世界経済や貿易体制がどういうふうに変化するかは、誰にもわからない。
空洞化が加速し、急速に経済が崩壊しつつある日本で、参加不参加のどちらにせよ、安易な期待を抱いた選択は更に悪い結果を生むだけだろう。やるべきことをやる必要がある。

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