沖縄の普天間基地に配備が予定されているオスプレイ。
オスプレイとは鷹の一種ミサゴのこと。
軍用輸送機としては実用配備された最初のティルトローター機だ。
ティルトローター機とは、翼についているエンジンの角度を変えることで、短距離離着陸が可能な飛行機のことだ。エンジンを上向きにしてヘリのように上昇したり着陸し、空中でエンジンの角度を前に向けて、前進する。
ヘリのようなホバリングや地形に沿った飛行が出来つつ輸送力も大幅に上がる。
利便性が非常に良いため、第二次世界大戦前後のヘリとほぼ同時に研究が進められた歴史の古い機種だが、実用化はヘリに比べて大幅に遅れた。
最大の難点は、エンジンの角度を変えながら垂直移動から水平移動に変わる時の操縦の難しさにあると言われる。
今年に入って相次いで2機墜落したが、少なくとも1機は遷移する段階での操縦上のミスのようだ。必ずトラブる技術的な致命的欠陥ではないようだが、相応に経験と訓練が必要になるのだろう。
短距離離着陸機は他にも幾つか実用化されているが、比較的大型な機体はオスプレイが初めてで、アメリカ軍は配備を進めている。
日本では沖縄の海兵隊普天間基地に配備を計画している。
敵地や戦地への先行進出を主目的とする海兵隊にとって、短距離離着陸輸送機はまさにうってつけ。それだけを見れば、配備は当然の成り行きとなる。
問題は、普天間基地が、本来日米間で返還を予定し、地元も返還を求めていた基地であることだ。
すでに返還計画が進捗中の基地に配備するというのは、アメリカ側が圧力をかけてきているとも言える。鳩山政権下で、状況を理解しない単純安直な首相の態度から日米間に摩擦が生じ、返還は遅れ、日本の民主党政権に対する信用も失われてしまった。
鳩山が失脚して以降、アメリカ側も戦略を変えて、いくらか譲歩の姿勢を見せてはいるが、オスプレイの配備は、代替基地の建設が出来ないなら、普天間に配備するまでですけど、と言わんばかりだ。
沖縄ではオスプレイの配備に猛反対が起きている。
ただこれも、途中から微妙に主張がすり替わってしまった。
当初は、新型機の配備で普天間基地の返還が遅れたり無くなったりすることを懸念しての反対だったはずなのに、いつのまにか、墜落事故が続いて「危険性が高い」ということが理由の主眼になってしまっている。
おそらく、配備反対運動の中で、知識のない反対派の中で、より正統性を高めようと、これまでとは全くタイプの異なるオスプレイを「危険」だという理由付けを誰かが行ったのだろうが、事故の情報が入ったこともあって、そればっかりが主眼になってしまったわけだ。
これでは、安全であれば構わない、という反論が可能なレベルになってしまうわけで、現にアメリカ政府は、オスプレイを一旦岩国基地に持ってきた上でテスト飛行を行い、安全性を示してから普天間へ配備する、という方針を示している。
普天間基地そのものの問題はどこかへ行ってしまっている。
そもそも、兵士のリスクを極力避けるのが重要な軍で実用化配備されている以上、危険度は他の飛行機やヘリとほぼ同レベルにまで下がっているわけで、オスプレイが際立って危険な乗り物だというわけではない。通常の輸送機やヘリの事故は他でもしばしば起こっているので、市街地のど真ん中にある普天間基地の危険性を言うなら、現在配備されているヘリや、頻繁に来る輸送機でも同じ事だ。
反対派は、安全保障と、基地の弊害というバランスの上で、普天間基地そのものの返還を求めるべきであってオスプレイが「危険」だから「配備に反対」、という各論にするべきじゃない。
反対運動としては、いささかお粗末だ。
なんでもそうだが、反対派こそが感情に左右されず、知識と代案を示さなければ、運動は大衆化せず、適当な落とし所で終わってしまう。

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