土用の丑の日。
五行思想の木火土金水のうち、木火金水の気は、春夏秋冬に当てはめられるが、土は、四季の変わり目に土の気が盛んになるとして、立日(立春、立夏、立秋、立冬)の前の十数日を土用と称した。
この四季の土用のうち、夏の土用の間で十二支の丑の日に当たるのが、土用の丑の日。
江戸時代に平賀源内が、鰻屋さんのお店の宣伝文句として考えた、「本日丑の日」のコピーが、土用の丑の日はうなぎを食べる日として広まったというのが一般的な説。といっても、平賀源内の完全オリジナルではなく、当時、夏の暑い時期にうなぎを食べる習慣がすでにあったらしい。今のような甘辛の蒲焼ではなく、脂っこい白焼きが一般的な食用法で、特に労働者などが食べるものだったという説もある。
江戸時代後半には土用の丑の日のうなぎ食はかなり普及していたようだ。
今年はうなぎが異常に高騰している。
ここ数年、うなぎの稚魚がほとんど捕れないからだ。
うなぎは川まで遡上してくる天然モノを除けば、稚魚を捕まえて人工的に餌付けしていき、太らせた養殖ウナギが一般的に売られているものだ。
そのため、稚魚が捕れなければ、養殖ウナギは生産できない。
最盛期の数%も捕れていないと言うほどの大不漁。
どこも大幅な値上げは当たり前で、廃業した店も多い。
研究者の間では、東アジアで取れるうなぎは、すでに絶滅寸前の状態にあるらしい。
しかし、世間的には、いまだ不漁、という程度の認識でしか無い。
うなぎは、世界中いたるところで食べられるが、日本は特にその量がハンパではない。
そのため、日本向けにと中国などで乱獲が進み、見るも無残な状況になった。
日本の業者は、それでも懲りずに(?)、ヨーロッパのうなぎに手を伸ばし、それらも激減したため、規制がかけられた状態にある。そこで、東南アジアや、アフリカに住むうなぎの仲間にすら触手を伸ばしている。
こうした動きに対して、ワシントン条約で取引を規制すべきだ、という意見がアメリカで持ち上がるほど。
業者も生き残りをかけているのだから無理もないが、うなぎが絶滅したら、二度と食べられない。
日本政府は、台湾、中国とともに、乱獲しないよう規制していく方向で、調整中だが、果たしてどこまでいけるか。
天然のうなぎは、遠くない将来、絶滅しているかもしれない。
唯一の可能性は、完全天然養殖うなぎ。
数百匹のレベルでは、すでに卵から生育させることに成功している。
しかし、稚魚の餌になるのが、一部の希少種のサメの身しかないため、餌の量も限られているのだ。大量生産が出来ない。
ヘタすると、本当に絶滅するしか無い。土用の丑の日が、うなぎ絶滅によって、うなぎを偲ぶ日になるとも限らない
なんとか、この卵からの完全養殖による大量生産方法が成功して、需要を補い、かつそれによって自然の回復を待つしか無い。
それまでは我慢も大事かと思う。

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