帝国主義の理論的な位置づけは、学者によって様々だろうが。一般的認識としては、軍事力で領土を拡張していくやりかたを帝国主義と呼んでいる。
日本は、かつて植民地ブロック体制が進む世界で、アジアに進出し、戦争に負け、本土以外の領土をことごとく失った。
その是非はともかくとして、そのことで、中韓からはいまだに帝国主義的だと非難される。
しかしいま、帝国主義なのは、その中韓で、武力で領土を拡張しつつある。
日本政府は、経済関係の効果などから、表立ったことは何一つ言わないし、日本の知識階級も一切言及しないし、左翼すら何も言わないが、中韓の帝国主義的な政策は非難して当然ではないのか。
尖閣諸島に昨日、6隻の中国の公船が領海侵犯をして、悠々と海域を横断した。公船は国際海洋法上強制的に止めることが難しい、という事情もあるためだが、日本が尖閣諸島のことで中国の顔色を気にして、何もして来なかった、という部分も甘く見られている。日本が実効支配している、というが、実際には中国がこれまで何もして来なかった、というだけの話だ。
次は、黄海や西沙諸島、南沙諸島で中国が韓国やベトナム、フィリピンなどに対して行なっているように、漁船を大量に投入してやってくるだろう。それを止められるのか。
止められなかったら、そのあとは、軍艦を寄越して上陸させ、基地を作るだろう。
中国は思い切ったことはしない。
というのが識者らの意見だが、中国は日本政府の対応を気にすることよりも、自国人民が反乱を起こす方を恐れる。人民解放軍の将官の中には、尖閣だけでなく、沖縄全体が中国の領土だと公然と主張するものもいる。「沖縄人民の75%は日本からの独立を望んでいる」などというデタラメも、中国国内では普通にマスメディアで報道されている。
中国政府内部で穏便に済ませたい、と思うものがいたとしても、日本が圧力に屈するとわかれば、それらを天秤にかけて、尖閣諸島での地域紛争くらいは十分してくる。
一正面作戦に集中すれば、兵力でまさる中国海空軍相手でも、自衛隊にも十分、勝ち目はあるが、問題はそれをやれるだけの責任をとれる政治家がいるのか。政府が全面的に補給や配備の政治的調整をしなければ、勝てる戦も負ける。案外、「余計なことはしてはいけない」などと自衛隊に命令し、指をくわえて人民解放軍が上陸するのを見ているだけ、などということをしかねないのが、今の民主党政権だ。
それを中国は観察しているだろう。政治力が弱いと判断すれば、本格的に実効支配に乗り出してくる。
反戦平和などと口では綺麗事を並べても、平和は当事国すべてが同意して成り立つもの。他国から一方的に武力攻撃を受けた場合を想定しないことは、論外だ。
韓国軍も、仮想敵国の想定には日本を含んでいるし、竹島の韓国軍は日本を相手にしている。韓国の強襲揚陸艦に「独島艦」という名前をつけたのでも、相手をどこにしているかわかる。
日本だけが、いくら平和を唱えても、相手次第ではそんなことはもろく崩れてしまうことは認識しておいたほうが良い。現代文明は、戦争は安易にしない、という変な理屈が通っているが、アメリカは中近東各地で武力行動をしているし、ロシアはグルジアに侵攻した。EU諸国もイラクやユーゴ、アフガンで武力作戦を実施し、その中には、ナチスと手を切ったドイツ軍も含まれている。
一方で、多くの国は、武力紛争後に、外交で解決する方法と経験を得ている。その力量やノウハウを持つ政治家や官僚がいる。それが日本にいるだろうか。逆に、そういうノウハウがないばっかりに、武力攻撃を受けたあと、日本のほうが抑えられ無くなってしまう危険性だってある。
憲法9条の平和思想は理想的ではあっても、それで武力に関することを全てタブー視して見て見ぬふりしたところで、憲法は中国には通用しない。
憲法が足かせになって平和が失われる、などという皮肉な結果にもなる。
いざという時を想定し、またきちんと領土は確保し、最悪の場合でも交渉できる余地を残すのが、国の対外政策。それができる政党でなければ、国家は任せられない。こんな事態になっても、まだ中国詣でをしてゴキゲンを取ろうとする民主党の議員たちや、中国の顔色を気にする石原<サティアン>伸晃なんかがいる。全議員がそうだとは言わないものの、民主党や自民党にどれだけのことができるのやら。それ以外の野党は言うまでもない。

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