経済産業省は、日本海側でのメタンハイドレート埋蔵量に関する本格的調査を開始した。
6週間をかけて新潟県沖合と能登半島周辺で行う予定。
ここ数年で、エネルギー問題は大きく変貌した。
アメリカのシェールガス開発の成功で、世界最大の輸入大国がひとつ、まるで手品のように、唐突に綺麗サッパリ市場から消滅したのだ。そのために、失われたエネルギー市場の代わりとなる市場を求めて、資源国は方針を大きくシフトすることになり、そのドミノ連鎖で、世界の天然ガスの値段は下がる傾向にある。
ジャパン・プレミアで、もともと割高なガス輸入を続けている日本は、原発事故以後の負担増で6兆円もの重荷を背負っている。価格低下に大いに期待をかけているわけだ。
ロシアも輸出先のヨーロッパ市場を(アメリカ市場を失った)中東諸国に奪われたため、日本との関係強化を進めていて、オホーツク海北部の海底油田の共同開発契約も結んだし、極東からの天然ガス輸送だけでなく、北極海航路での日本への輸送もすでに試験を始めている。北方領土問題で強気姿勢を転換させたのも、背景にエネルギー市場があるからだろう。
日本としては資源国に対して強気に出られる状況にある。
しかし、アメリカのシェールガスも、ロシアのガス輸出も、日本が期待するほど、安くするわけではない。両国の企業も、高くで売れるなら、それに越したことはないのであって、産出コストが下がったからといって、安く売りますよとはならない。
また、安全保障の面でも、輸入に依存するようでは危うい。逆に輸入するから安全保障や外交で発言権も持てるという側面もあるが、やはり膨大な輸入コストは避けられない。国産でエネルギーを確保できるのなら、そのほうがはるかに都合がいい。輸出するほどでなくても、エネルギーコストは大幅に下げられる。
日本は天然ガスの産出地帯の上にあり、これまでの調査で周辺海域には膨大なメタンハイドレートがあるのはほぼ間違いないと推定できるが、陸地部分でも天然ガスはかなり埋蔵されているという見方もある。
レアアースも、わずか小笠原のごく一海域だけで、世界トップクラスの埋蔵量があることが、すでに調査で判明している。沖縄周辺の海域、熱水鉱床などでもレアアースなど各種鉱物が発見されている。昔から、日本は資源小国などとよく言うが、そんなことはない。単に調べて来なかっただけの話。
中国が尖閣諸島を始め、周辺海域に出没するのも、日本周辺に膨大な資源が眠っていることを狙っているからだ。日本がのんびりしているうちに、東シナ海のガス田は取られてしまった。
問題は、採掘までのコストが高いこと。
そのために、日本はこれまで、自主開発は小規模で、海外からの輸入や、原子力にシフトする政策を採ってきた。
しかし、あえて無責任に結論から言えば、そのツケが今、毎年数兆円ものレベルで一気にのしかかってきているとも言える。
そういう意味だけで見れば、過去の自民党政権も、近年の民主党政権も、見通しがまったくダメだったということになる。海洋開発が難しかった戦後の経済復興の時には、輸入という選択肢のほうが良かったのだろうが、バブルからの近年はその方式にしがみついていた分だけ、日本の可能性は先送りになってきたといえる。特に民主党政権で、日本は大幅に後退してしまった。
本来なら、もっと早めに研究を進めるべきだったろうが、今からでも遅くはないから、将来のために調査・研究・開発を進めなければならない。目先の利益にこだわって、狭い視野で無駄の削減だの事業仕分けだのと言っていたら、せっかくの資源も、中国に全部取られて、十年後、三十年後には取り返しの付かないジリ貧になっているだけ。
政権交代でようやく政府のやる気が出てきているところ。
今後、東北や北海道の周辺海域でも調査をするそうだが、どんどん進めてほしい。必要な機器や船舶も、開発あるいは調達すべきだろう。採掘技術の研究にも、予算をどんどんつぎ込むべし。今の技術レベルでは確かに採掘自体も高コストだが、研究を進めていった将来も同等とは限らない。コストを大幅に下げたシェールガスの例もある。コストを下げ、環境に配慮した、日本ならではの、世界の模範となる資源大国を目指すのは、良い社会的目標なのでは?

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