平成26年度予算概算要求で尖閣諸島防衛に関する予算が増えた。
監視航空部隊の創設や情報収集など南西諸島の増強が盛り込まれている。
もともと南西諸島への自衛隊の展開は本土に比べて弱かった。航空自衛隊那覇基地の南西航空混成団も通常の方面隊より規模が小さいし、陸上自衛隊の西部方面普通科連隊は、九州沖縄の離島防衛を任務としているものの、主に長崎県の離島に展開している。海上防衛は警備行動ができる海上保安庁が主力になっている。海上自衛隊は大臣の命令がないと海上警備行動に動けない。今回の概算要求では海上保安庁も強化されているが、自衛隊の南西諸島展開も本気にならざるを得なくなった、ということ。
もともと、米軍によって防衛されている面が強かったことと、「核抜き本土並み」が実現しなかった沖縄復帰以降、住民の本土に対する反発が復帰以前より強くなったために、自衛隊の配備に慎重にならざるを得なかった。また冷戦時代の仮想敵国はソ連だったため、領空侵犯や米軍基地への核攻撃などの可能性はあっても、南西諸島への直接の侵略はほぼありえなかったから、手薄だったのはやや無理も無いところ。
しかしいまや、中国が、第一列島線を基軸にした防衛をハワイ以西の太平洋全域への進出に転換して(アメリカに太平洋二分論を提案して呆れられたが)、資源確保も合わせて南西諸島に本格的に進出を開始している。韓国までが沖縄への自国権利拡張を言い出す始末で、未だに識者や左派の連中の頭にこびりついている「戦争被害者の弱い国」とは一転、中国も韓国も覇権主義国家になった。安倍政権の右傾化を問題にするなら、中国や韓国のナショナリズムなんて、右傾化どころじゃない。中国はもともと一党独裁だが、本来民主国家の韓国までが民主制度や三権分立を覆しかねないほどナショナリズムが強くなって、ほとんど言いがかりのようなことを世界中に主張している。歴史の捏造も極端で、日本に対してだけでなく、中国に対しても、新羅や百済は中国の広い範囲を支配していた、などというようなおかしな主張まで出てくる始末。
かつての戦争の歴史を学べ、というなら、今学ぶ必要があるのは、中韓の方だろう。第二次大戦の過程はもっと複雑だが、あえて単純化して大日本帝国のたどった道を問題にするなら、それと同じ道を歩んでいるのは、今の日本ではなく、中韓の方だから。彼らのほうが、今は加害者になりかねない。
米国も予算が厳しい中、極東防衛は日本の比重を高めようと考えている。こちらも識者を中心に反米で長いこと来たせいか、米国依存などという人がいるが、米国はもうかつての日本を抑えこんで動かすような時代の国ではなくなっている。日米同盟も、安保時代や新安保時代の米国偏重の形式的なものと違い、両国並存の本格的な軍事同盟化しつつある。アメリカの都合には違いないが、その分、日本の発言力も強くなっている。
そんな中、自衛隊も南西諸島へ出ざるを得なくなってきた。
沖縄でも、意見は二分しているようだ。先島諸島のほうが、脅威を目の当たりにしているので、自衛隊進出に肯定的な人が多いという。漁業への影響も大きいからだろう。復帰以前と以後の世代の違いもある。
戦争はそう簡単には起こらない、中国もバカなことはしない、という意見もあるが、日本のような安定的な民主国家を基準にはしないほうがいいと思う。なにより不満を抱えた数億の民衆を統御できないでいる中国共産党が、対外戦争で国家を維持しようという方針に転換しないとは言い切れない。アメリカですらシリア空爆を検討しているのだから、中国の方はもっと脅威だ。すでにフィリピン、ベトナム、ブータンは近年になって中国に領土の一部を奪われている。
本来なら国家に負担をかけ、国民を危険に晒しかねない軍備増強は、対外問題がなければ政治家であってもしたがらないものだが、残念ながら、せざるを得ない状況になってきている。
野党とか識者とか、右傾化とか軍拡とかいうことを振りかざして反対するのなら、まず中国や韓国へ行って、日本を刺激するようなことはやめてください、と説得するくらいの気概でやってほしい。安全で言論の自由な日本で言うだけでは、国際情勢は変わらない。
今回の概算要求には宣伝に関するものも含まれている。
中国や韓国が、日本を貶めるような宣伝を特にアメリカで展開している。日本はそれに対して何も言ってこなかったため、アメリカでは、中韓の主張が幅を利かせている。
なぜ反論してこなかったのか。一つには上述のような「戦争被害国」に対する遠慮みたいなものが政治家の中にあるのだろう。余計なことを言って刺激するより、実質的な経済関係でよくした方がいい、というのもある。但しそれは、相手方もそれを受け入れる場合に限る。中韓の賃金が安く、経済力が低かった時代にはそれでよかったが、今はもうそういう関係はない。
また日本人の争いたがらない、ナアナアですまそうという、お人好しな性格もあると思う。国内ではそれでいいとしても、欧米では言ったほうが勝ち。ロビー活動はきちんとしないと。それで戦争になるわけではないのだから。逆に言えば、きちんと証拠を示して、説得力のある活動をすれば、逆転できる素地もおおいにある。中韓の経済活動が世界各地で反感を買っているのも利用できる。尖閣諸島や竹島の領有権に関しても、日本には古くからの史料が沢山ある。従軍慰安婦の問題にしても、韓国が言っている一方的な話と、現実がかなり異なっているのは、最近も見つかっている当時の関係者の史料でも明らか。
そういうところは大いに示して、日本の主張も明らかにすべきだし、そのための、本当に国際的に活動できる人材を育成する必要がある。

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