毎日新聞が、各大学の火山研究者に原発への危険性について行ったアンケートで、もっともリスクが大きい原発は、鹿児島県の川内原発、という意見がもっとも多かった。
カルデラ噴火の可能性と距離で川内原発は、リスクが大きいという。中岳のある阿蘇カルデラや桜島のある姶良カルデラは、活発に活動している。これらのカルデラが大規模噴火を起こせば、火砕流に飲み込まれる範囲にあるということ。
しかもそれより近いところで、加久藤カルデラという、今は埋まって見えない巨大カルデラもある。宮崎県西部のえびのや小林のあたりにあり、その南縁にあるのが、現在も時折噴火する霧島火山群。
カルデラ噴火は、通常の火山の噴火とは桁違いの大きさで、雲仙岳の噴火では火砕流が麓までの数kmをかけおりたが、カルデラ噴火では火砕流の到達範囲は50kmから150kmにもなるという。阿蘇カルデラの4回目の噴火では、海を越えて本州や四国にも到達し、大量の噴出物はその後分厚い地層になって、それが侵食されて高千穂峡などの景観を作った。姶良カルデラの噴火で発生した火砕流は、鹿児島県を中心に宮崎・熊本両県の南半に達するシラス台地を形成しているが、その厚さは場所によっては150mにもなる。
高温の火砕流に飲み込まれれば、原発の建屋は持たないし、持ったとしても、冷却機能やその他の安全システムが失われれば、火砕流到達地域となった原発に救援に行くことが出来ず機能を回復する手段はない。
これまでの直下の断層などだけを問題にしていたが、東日本大震災での、いわゆる「想定外」の災害が注目されてきたことで、原発に危機をもたらす災害も検討せざるを得なくなった。
そういう意味では、現在ある原発は、リスクの差こそあれ、いずれも危険ということになる。
もっとも、この規模の災害ともなると、一般の被害も尋常じゃない。
原発の危険性は、一つには周辺地域に住めなくなることであり、もう一つは遠方にまで汚染が広がり様々な影響を及ぼす、ということになるが、カルデラ噴火が起きれば、周辺地域は全滅、噴火後長期にわたって居住は不可能になり、大量の噴出物で相当の範囲で居住困難、農作不能、産業停止となる。その状態では、原発の「被害」を受けるはずの住民がすでに絶滅している可能性も高く、生き残っても、社会がすでに崩壊している恐れが強いため、原発の有無に関係なく終わってしまう。
姶良カルデラで言えば、鹿児島県内のうち本土部分が全滅、奄美などを除く離島も壊滅し、宮崎県と熊本県の南半もほぼ壊滅する。この地域は、火砕流による大量の噴出物で、焼失を免れても、ほぼすべての建造物が埋没する。都市も農地も跡形もなく消えてしまう。降灰は東北・北海道に達し、西日本全域で生活困難な状態になる。原発の放射性物質で人間の生命に危険を及ぼすエリアの何倍も広い範囲がダメージを受ける。
だから原発の対策をしなくていいか、という訳にはいかないが、地球規模、惑星地質学規模で見ると、人間がかつて経験したことのないレベルの災害はいくらでもある。
直径10kmの小惑星が衝突すれば、数百kmの範囲で高温の爆風に飲み込まれ、高さ300mもの大津波が襲う。どうしようもない。
それはもはや個々の問題を論じる段階ではない。
原発と災害の関係は、もっと身近なレベルの災害で考えるべきかもしれない。

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