猪瀬知事の不祥事による辞任で始まった都知事選挙。
首都東京のトップであり、中規模国家以上の予算を動かし、世界有数の経済都市を管轄する、重要なポスト。
地方自治体の首長は議員内閣制より、大統領制に近いため、国会議員一人一人より権限が集中するので、主張する政策を反映させやすい。
予算と権限。
そのために都知事選挙では、終戦後の帝都行政官から選挙制度に変更された当初から、自己主張の強い候補者同士の争いの場になった。
歴代の都知事で大きく見ると、国家発展の大本としての東京発展を掲げるタイプと、左派の反国家権力であり都民向けの福祉など特定の政策だけを唱えるタイプ、そして現状の都政を批判するだけで具体的なビジョンのないタイプが居る。鈴木俊一や石原慎太郎が1番目のタイプ、美濃部亮吉が2番めのタイプ、青島幸男は3番目のタイプだろう。いずれも大都市ならではの違いで一長一短はある。鈴木俊一や石原慎太郎は、都市と経済の発展を進めたが、住民の生活環境向上とか、文化財の保護などではマイナスとなった。美濃部亮吉は福祉や公害対策など都民レベルの政策を実施したが、結果的に財政を逼迫させ偏った経済政策で停滞を招いたといえる。青島幸男は官僚機構の無駄遣いを指摘はしたがなんの結果も残さなかった。
当選しなかった候補者も含めると、4つめのイロモノタイプがいる。何かを主張して政策を実行したいというより、選挙に出るのが目的のような人たちだ。政治家になりたいという人は多かれ少なかれ、目立ちたがり屋ではあろうが、信念や政策ビジョンを作ることへの情熱よりも、目立つことの方が大きい(ように見えるw)。
今回の都知事選挙は、支持の大きかった石原−猪瀬系統が自壊したこともあってか、当初から、誰が出てもイマイチ感の漂う状況だったため、各党も気乗りじゃなかった。
だから自民党はやや消極的ながらも、かつてたもとを分かったが、政策的には近く、知名度のある舛添要一を推した。
ところがここに来て、元首相の陶芸家(?)細川護煕を推す動きが出てきた。それに脱原発で最近気勢を上げ始めたやはり元首相の小泉純一郎がくっついて、細川が候補者に名乗りを上げた。自民党はネガティブキャンペーン的にこれを攻撃している。細川はともかく、バックの小泉純一郎は首相時代の人気が未だに尾を引いているところがあると、いろいろマスコミとかが高評価しているため、知名度はあるがいまいちぱっとしない舛添要一に不安を抱いたのだろう。小泉と激しく対立した野党連中も便乗的に乗っかろうとしている。
この他に債務問題やオウム事件など社会問題に取り組んだ弁護士として知名度の高い宇都宮健児、元航空幕僚長で歯に衣着せぬ発言で賛否両論の多い田母神俊雄、自称発明家のドクター中松こと中松義郎などなど。
このため、細川護煕優位でと舛添要一の一騎打ちというふうに報道されてきた。
が、ここに来て、田母神俊雄も有力視されてきている。
これは昨今の外交問題や、原発・オリンピック批判ばかりが目立つ中で、彼の言動が比較的まともに見られやすいからだろう。
細川護煕には、脱原発という点で、支持する人も多いが、そもそも彼の過去の言動での原発問題はぶれている上に、東京オリンピック開催に批判的で、せっかく盛り上がっているところに水をさされたような格好になっていること(それを意識してか開催中止とは言わないが)、自身が首相をやめたのが佐川急便からの1億円の借り入れとその目的が曖昧だったことから5000万円で辞職した猪瀬知事のあとでは目立つことがある。また首相をやめてから陶芸家になって政界から離れていたのに、突然脱原発という「大義名分になりやすい」ネタで登場したことに違和感を持つ人も多いようだ。これはバックに付いた小泉純一郎にも言える。今更感が強い。野党がほいほい便乗しているところにも不快に思っている人は多いのではないか。
原発問題は重要だが、言ったらすぐにどうにかなる話ではないため、エネルギー源の確保と廃炉の具体的なビジョンがないと、受けそうなネタを口にして人気を得ようとしている程度にしか見ない人が大勢出てきかねない。
都市部の住民は情報があふれている上に、地方の抱える地域経済や雇用問題といった特定の問題が見えにくい分、ひとつの主張になりにくく、流されやすいところはあるから、支持候補者が次々と変わり、また特定の候補者が人気を得ると、今度は別の候補者を選ぶような傾向もあるので、先が読みにくいところがある。
どのタイミングで主張を都民に浸透させるかが鍵ではなかろうか。

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