ウクライナのクリミア自治共和国で行われた住民投票で独立とロシア編入が決定され、ロシアが同地を編入する意向を示した問題。ロシアの議会と憲法改正を経て正式に承認しロシアの自治国となるわけだが、当然、領土であり要衝でもあるクリミア半島を奪われるウクライナは猛反発している。もともとタタール人らの住んでいたところにロシア帝国時代からソ連時代にかけてロシア人が移住して元の住民を追い出し、ソ連時代に形式的にソ連邦内ウクライナ共和国へ割譲された経過が事態をややこしくしている。住民の多くはロシア人。その上に駐留ロシア軍による威圧もあって編入になったわけだが、世界中がその対応に揺れている。
反発が多い一方で、反発する欧米との対立や、距離を起きたい国々、欧米に対抗したいそれらの国々がロシアの立場によって賛意を示すかというと、一概にそれもやりにくい事情がある。
それは、今回ウクライナで起こった問題は、どの国でも起こりうることだからだ。国内の民族問題を抱えている国のほうが多い。連邦制をとっている大国はもちろん、太平洋の小さな島国ですら、内部で民族問題を抱えているところもある。ヨーロッパの国々もそうだ。イギリスはゲルマン系とケルト系という文化も宗教も異なる民族を抱えているし、スペインは少数民族の混在地、ベルギーも南北で民族が異なる。東ヨーロッパの国々は民族が混ざり合っているところが多い。ナポレオンの「国民国家」成立以前の領主時代の名残でもあるし、国境線は大戦後のイデオロギーの関係で定まったようなところがあるから、民族の居住領域は関係ない。飛び地同士で同じ民族という例もある。また多くの国が移民問題を抱えている。
今回の独立は軍事的圧力もあって、その意味での正当性を疑問視する意見も多いが、多くの国でロシアに対し反発が起こっているのは、同じことが自分の国でも起こりかねないからだ。簡単にいえば「民族問題を刺激するような余計なことをしないでくれ」というところだろう。
あと、アメリカの軍事行動には批判的な知識人が多いが、こういうことになるとだんまりを決め込むのは日本も外国も同じらしい。知識人というのもだいたいそんな程度だ。

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