朝日新聞の社長が謝罪会見を開いた。
東京電力福島第一原発事故に関連した当時の所長だった吉田氏の調書についての報道が誤っていた件で。
朝日新聞は、5月20日付の朝刊で、吉田調書を入手したとして、スクープ報道をしたが、その中で事故当時、所長の命令に逆らって職員650人が福島第二原発へ逃げた、と責任放棄のような記事を掲載した。
しかし実際には一時退避して次の指示を待つという話で逃げたわけではないし(職員はむしろ残ろうとしたのだが)、退避先も当初の予定と違って職員らに伝わったが結果的に吉田所長も納得の判断だったことが調書には記されている。
会見では、吉田調書が簡単には閲覧できず、社内で検証できなかったので閲覧した記者の判断を信じた、と言った記者への責任転嫁とも言える話もあったが、誰もその答えには納得しないだろう。
むしろ、原発事故を強調するため、東電の職員を悪者に仕立てるように、意図して内容をねじ曲げた、という方がしっくり来る。朝日新聞が大いに支持していた民主党政権の、東電批判の急先鋒だった菅直人元首相への援護射撃の意図もあったのかもしれない。
だが結果的にこれが、世界中に配信されて、日本は激しく批判を受けた。実際には現場の職員たちの尽力で犠牲者を出さず、最悪半径160km以上の避難設定も想定されていたという事態も避けられた。
事故の責任はあるし、今も多くの人が避難生活を送っている。その補償も中途半端な状況。他の原発ではできていた津波への対策もしていなかったことなども問題だが、批判すべき対象であっても、事実をねじ曲げてまで報道するのはおかしい。
従軍慰安婦報道もそうだが、朝日新聞は、この種のねじ曲げが多い。
その要因はいろいろ言われているが、結局のところ、朝日の社員が「動物」だということに尽きる。比喩的な意味ではなく、生物学的な意味での動物。
彼らがしているのは、単純に他者よりも自分を良く見せようとする本能。人間は社会性動物だから、その集団の中での位置が(生存や生殖上)重要になり、他者を蹴落とそうとする。ただ人間は知能が高い分、相手の立場を慮ったり、協力しあったり、無償の人助けをするように、より高度で多様な手法で自分の見せ方を工夫することができる。
それをしないで、例えば暴力を振るうといった至極単純な方法で他者の上にたとうとする行為を、人間はレベルの低い行為だと感じる。朝日新聞の記者がやってるのもこれに近い。社会倫理上の悪者を仕立てあげ、それを悪しざまに批判することで、自分は正義だとアピールする。腕力や兵器は使わないが、文章で他人を殺傷するような行為。だが、している本人は気持ちよくなっている。
よく朝日新聞は売国奴だといわれるが、彼らは金で国の情報を他国に売るような行為はしていない。売るよりもっとたちの悪い、貶めることで、自分は客観的で公正だと主張しているようなもの。
また、自虐史観と言ったりもするが、正確には自虐ではない。自分のことを貶めてはいないからだ。むしろ逆に、自分を称揚しているとも言える。あえて言うなら、自慰史観という感じか。自分だけ気持ちよくなっているような歴史観。自慰した結果を紙面の文章としてぶちまけていると言ったら下品だけど、心理的にはそういう種類のものではないか。
朝日の人間がある意味もっとも嫌ってるかもしれない「歴史学的背景の全くない」タイプの国粋主義と方向性が真逆なだけで人間の行為としてはそっくり。
また社長の会見でも出てきたが、朝日新聞を始め識者の多くは、近隣アジア諸国との友好を掲げる。しかし彼らの視点で見る「アジア」というのは、哀れな弱者であり、帝国主義の日本に苦しめられた気の毒な民族であって、朝日新聞の記者にとっては、そのアジア民族を上から目線で弱者として見下げた上で擁護し、「弱いものを守る正義の味方的オレ」を示しているようなもの。だが現状で判るように、中国も韓国も弱者ではない。経済力が付いて軍事力に投資できるなら、いくらでも帝国主義、覇権主義、軍事的冒険をすることのできる「よくある国」だ。
朝日の記者や識者らにしてみれば、韓国や中国を理解し擁護してあげたつもりが、その結果、日本人を苦しめ、日本を戦争に巻き込みかねない国家になってしまった。
だから今必死に自分の主張してきた正義に対する言い訳や、混乱する思想の出口を模索している最中じゃないかと思う。その表れが、池上コラムの掲載拒否に対する記者たちの「怒りの個人的見解」じゃないか。
左翼は右翼に転向しやすいともいうが、手のひらを返して逆の主張をするものも出るかもしれない。だが、左右ではなく、可能な限り自分の思想や感情を抑え、公平公正なスタンスを持てるジャーナリストに変わることを願う。
今回の誤報事件は海外のメディアも報じている。これがきっかけで、従軍慰安婦問題も、一方的な話ではなく、より客観的に再検証されるようになり、正義の名のもとに日本の話に耳を傾けようとしなかった各国も公正な目で見直すようになることを期待したい。

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